「在宅介護を支えるロボット」雑談がもたらす効果
こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。
独居の高齢者は年々増加傾向にあります。
高齢のひとり暮らしは、刺激や変化が乏しくなりがち。
外出がおっくうになり、社会とのかかわりが薄れてしまう方も少なくありません。
コミュニケーションの機会が少ない生活を続けているうちに、自覚がないまま認知症が進行してしまうこともあります。
ひとり暮らしの高齢者のこうしたリスクを軽減するために、近年は対話型のロボットや見守り機能を備えたIoT機器を使用したいろいろなサービスが登場しています。
セコムが提供する高齢者向け対話サービス「あのね」もそのひとつ。
利用者はロボット「BOCCO emo(ボッコエモ)」を通じて人と対話できるのが特徴です。
高齢者の孤独感をやわらげ、見守る介護家族の安心を手助けしてくれます。
ロボットを通じた人とのコミュニケーションは、ひとり暮らしの高齢者にどのような効果をもたらすのか。対話サービス「あのね」の販売窓口「セコム暮らしのパートナー久我山」の浅沼世所長に、詳しく話を聞きました。
● ロボットなのに人が会話?家族とするような雑談を
在宅介護においては、高齢者の話し相手になってくれるコミュニケーションロボットにも期待が寄せられています。
昨今はAIを活用したロボットが多いですが、あえて人間のコミュニケーターにこだわったのがセコムの対話サービス「あのね」です。
「BOCCO emo(ボッコエモ)」は、登録しておいた予定を音声で知らせる機能のほか、ご利用者がコミュニケーターと対話することも可能です。
ご利用者がBOCCO emoのボタンを押して話しかけるとコミュニケーターが受け取ります。
コミュニケーターがメッセージを作成してBOCCO emoの音声として返答する仕組みです。
浅沼所長に、高齢者が必要としているコミュニケーションについて聞きます。
「BOCCO emoはロボットですが、答えるコミュニケーターは人間です。
BOCCO emoに話しかけてくれたご利用者に、元気になっていただきたい。
そういう思いを込めて、人間のコミュニケーターが24時間365日対応しています。
私たちがシニア向けのコミュニケーションロボットに求めているのは雑談です。
『今日は天気が良いね』とか『お昼ごはんは何を食べた?』といった日常会話。
ひとり暮らしで家にこもりがちの高齢者にはなかなか得がたいものです。
家族や友人などとの気軽な会話や交流をBOCCO emoを通じて実現したいと思っていました。
『あのね、今日はね......』と話しかけたとき、自然であたたかい言葉を返してくれる。
サービス名の『あのね』はそこに由来しています。
あのねの開発段階で、AIも試しましたが、雑談力は人間のほうが優れています」
BOCCO emoを介して送られた音声メッセージをコミュニケーターが聞いて、メッセージを作成するため、BOCCO emoが音声で返答するまで少しタイムラグがあります。
若い世代からするとテンポよく会話が成り立たず、もどかしい気がしますが、実はこののんびりとした具合が高齢者にはちょうど良いようです。
私たちも介護現場では、「ゆっくり、はっきり話す」「言葉を重ねず相手の返事を待つ」「一度にたくさんのことを伝えない」といったことを心がけています。
特に認知機能が低下している高齢者の場合、言葉を発するまで時間がかかることもありますし、矢継ぎ早に話しかけても理解が追い付かず不安になってしまうことがあるものです。
BOCCO emoとののんびりした会話が利用者の安心につながっています。
● スケジュールのリマインドも同じ言葉は使わない
人間のコミュニケーターを使ったサービスならではの良さはほかにもあります。
それは会話のバリエーションが多様にあること。
同じ内容を伝えるときも、言い方を変えるなどして変化をつけているそうです。
「BOCCO emoにはスケジュールを登録することができます。
起床時間や就寝時間、薬の時間や食事の時間、デイサービスに行く時間など、登録したスケジュールに合わせてBOCCO emoが音声であいさつや予定を告げてくれるのです。
これだけならスマートスピーカーでもできますが、機械的な声かけで終わらないのが良いところ。
お薬のリマインドひとつとっても『●●さん、お薬の時間ですね。飲んでくれたらうれしいな』とか『お薬を飲み終わったら、僕に教えてね』など、バリエーションをいろいろ持たせるよう工夫しています。
食事の時間を知らせるときに旬の食材についての豆知識を伝えたり、クイズを出したりすることもあるんですよ。
利用者との会話の蓄積で、喜んでいただけそうな話題を提供することもできますし、ご利用者を気遣うひと言を添えて、行動のモチベーションを引き出すことも考えています」
浅沼所長によれば、「家族がいくら言ってもダメだったのに、BOCCO emoが声かけしたら薬の飲み忘れがなくなった」「時間や曜日の感覚が生まれて規則正しく生活できるようになった」という声も多いそうです。
大切なのは、一方通行で終わらないコミュニケーション。
気持ちが変わって、ひとりではおっくうだったことを『やってみようかな』と行動を起こすきっかけになれば、その人の生活も変わります。
「人と人」ならではのコミュニケーションが良い相乗効果を生み出しているようです。
● 高齢者が怖がらずに会話できる不思議なロボット
高齢期は誰でも記憶力や思考力が衰えるので、物忘れが増えたり、ハイテンポな会話についていけなくなったりすることがあります。
普段あまり人と対話していない独居の高齢者ならなおのこと。
うまく会話のキャッチボールができない自分に自信を失い、人との交流を避けるようになることもあります。
その点、ロボットはコミュニケーションの失敗を恐れる必要はありません。
「サービス開始前は、高齢者がロボットと会話してくれるだろうかという懸念がありました。
実際は意外なほど積極的に話しかけてくださる方が多いのです。
一緒に暮らしているうちに愛着がわくのか、ショートステイにも持っていく方がいるほど。
ご利用者からすると、お孫さんと話しているような気持ちかもしれませんね」
ハイテク機器とは思えない曲線的でかわいらしいデザイン。
音声も愛くるしく、小さな子どもが懸命に話しているようでほっこりしてしまいます。
「杓子定規な対応しかできないのであれば、人間の対話サービスである必要はありません。
特別な事情やご要望があれば、できる限り対応しています。
たとえば認知症の方は最近のことは忘れてしまっても、昔のことは覚えていることがあります。
『母が子ども時代の話題を会話に取り入れてほしい』などご家族からお伝えいただければ、コミュニケーターがそのように対応することを心がけます。
懐かしい話を思い出したり、言葉にしたりすることも、良い刺激になります」
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「ご利用者に寄り添う、絶対的な味方でありたい」と浅沼所長は言います。
BOCCO emoならどんな話にも共感してくれ、あたたかい言葉を返してくれる。
そんな安心感が、フレイル予防や認知機能の改善などにも効果をもたらしてくれるかもしれません。
次回は、離れて暮らすご家族の視点から「親とのコミュニケーション」や「見守り」について話を聞きます。
※BOCCO emoはユカイ工学(株)の製品です
【「あのね」サービス紹介】
■紹介動画:https://www.youtube.com/watch?v=6JTt-6v4Ugs
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