介護はどう変わる?「困りごと」を改善する先端技術
こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。
人の手が限られている在宅介護では、生活のあらゆる場面で介護する家族にさまざまな負担がかかります。体力的にも大変な介護生活にご苦労している方も多いのではないでしょうか。
介護生活を支える福祉用具やシステムはどんどん進歩していて、便利なものが次々と登場しています。
また、介護保険の範囲に、これまでは適用外とされていたような新しい機能が加わった福祉用品が追加される動きも広がりを見せています。
2025年には団塊の世代が65歳を迎えます。国も民間も「超高齢社会」をむかえるために真剣にエネルギーを注いでいるのがわかります。
新しい用具を上手に取り入れることで、介護者の負担も減りますし、介護される人もラクになるかもしれません。
在宅介護を長く続けていくためにも、新しい知識や情報を得ておきたいですね。
今回は、3月に東京ビックサイトで開催された介護用品の展示会「CareTEX2017(ケアテックス)」の模様をご紹介します。
会場には約400社ものブースが並びました。そのなかから、介護を革新する技術や用具をピックアップしてみたいと思います。
私自身、「こんなに便利なものができたなんて...」と驚くことの連続でした。
● ロボット技術が在宅介護に活用される時代へ
「CareTEX2017(ケアテックス)」での展示は、車いす、介護用ベッドなどの介護用品や入浴装置、ベッドや車いすなどの間の移動をスムーズにするための移乗リフト、リハビリ機器などのほか、高齢者向けの食事サービスや食べ物を飲み下すことが難しくなった方のための嚥下(えんげ)食、高齢者の心身機能向上のためのレクリエーション素材など、実に多彩です。
なかでも、さまざまな種類の介護ロボットが出展されていて、会場では特に目を引きました。
「在宅介護にロボットが使われるなんて、ずっと未来のこと」と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。
けれども実は、それほど遠い話ではないかもしれません。
高齢化で要介護者の増加が見込まれる日本では、介護の担い手の不足や、家族の負担の増加が課題になっています。
厚生労働省と経済産業省はロボット技術の介護利用を推進しており、企業に対して開発支援を行っているのです。
福祉用具メーカーだけではなく、家電メーカーや自動車メーカーなど、さまざまな企業が介護ロボットの開発に乗り出しています。
介護ロボットといっても、ヒト型のロボットが家の中で立ち働くイメージを持たれるかもしれませんが、実際はベッドや車いすなどの間の移動を助ける移乗用リフトや歩行器など、昔から使われているものが、ロボット技術によって進歩しているのが実情です。
全体的に、より安全でコンパクトに、そして使いやすくなっているのが特徴と言えます。
2018年には、いよいよ介護ロボットにも保険適用されることが見込まれています。
在宅介護でもさまざまな場面で介護ロボットが利用されるようになるのではないでしょうか。
● 移乗や移動がもっと安全にラクになる
政府がロボット技術の介護利用の重点分野に定めているのは、移乗介助、移動支援、排せつ支援、見守り支援、入浴支援などです。
「CareTEX2017(ケアテックス)」でも、さまざまな福祉用具が登場していました。
たとえば、移乗介助機器。
介助者の力をサポートするパワーアシスト機能を持った装着型の機器や、立ち上がりや移動をサポートする介助ロボットなども見かけました。
介護生活の中でもっとも大変なことのひとつに「移乗」があげられます。ベッドから車いすに、車いすからトイレに、抱えて移動させる「移乗」が簡単にできるようになれば、介護する方の負担は大幅に減りますね。
また、移動支援機器である、手押しの歩行器やシルバーカーも、いまやロボット技術の応用で電動アシストつきのものが登場しています。
上り坂がラクなだけではなく、下り坂では自動的にブレーキがかかってゆっくり歩ける、また、傾いた道でもハンドルを取られることなく安定して前進できるなどの工夫をロボット技術が実現していました。
上手に道具を使い、安全にそして容易に移動や移乗ができるということは、要介護者の自立度を大きく左右します。さまざまな場面でロボットの助けを活用できるようになれば、高齢でも障害があっても生活の幅が広がりそうです。
● リハビリや見守りもロボット技術
要介護者の方とそのご家族の困りごとに寄り添うロボット技術は、ほかにもたくさんありました。
私が足を止めたのは、かわいらしい姿の言語リハビリロボット。
電機メーカーと脳梗塞リハビリセンターが共同開発したそうで、脳血管疾患の後遺症による言語障害や、嚥下(えんげ)障害の改善のための発語トレーニングをサポートしてくれます。
こうした障害がある高齢者が増える一方で、言語聴覚士は不足しているのが現状です。
今後は、人手の足りない分野でのロボット開発がさらに進んでいくのかもしれません。
何より、ひとりではなかなかやる気が起きないという方も、かわいいロボットに励まされながらのリハビリなら、毎日の訓練を継続できるのではないかしら?と感じました。
また、在宅介護や認知症ケアのニーズが高まっていることから、「見守り」を支援するロボット技術もめざましく進歩しています。
家の中に設置できるセンサーや、ポットのお湯を使用したかどうかでご家族の安否を確認することができる商品など、高齢者や要介護者の暮らしをよく研究しているなあと感心するばかりでした。
要介護者や介護するご家族の困りごとを解消し、より安全に快適にしてくれる介護ロボット。
これからの超高齢社会になくてはならない存在です。
新しい福祉用具や技術に注目して、介護生活を支える道具として上手に活用できるといいですね。