[PTに聞く関節ケア(5)]介護者の身体を守る日常ケア

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[PTに聞く関節ケア(5)]介護者の身体を守る日常ケア

関節可動域を保てばご本人のQOLはもちろん、介護者のQOLも向上するものです。こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

理学療法士でセコムケアステーション鎌倉の所長でもある清莉絵子さんに聞く「関節ケア」シリーズ。
最終回のテーマは、「介護者の関節ケア」です。


「関節ケア」シリーズでは、これまで被介護者の関節可動域をキープする大切さや具体的なケアについてまとめました。
「関節」が大切なのは介護する側も同じです。

介護する方が腰を痛めるケースは少なくありませんが、腰はもっとも重要な関節のひとつと言えます。
今回は、在宅介護で自分の腰を守るために介護者ができることを聞きました。

【あわせて読みたい!シリーズ「PTに聞く関節ケア」】
(1)「拘縮(こうしゅく)が起きるとどうなるの?」拘縮予防ケア
(2)在宅介護でも簡単!関節トレーニングの方法
(3)拘縮(こうしゅく)予防のポイントは関節可動域のキープにあり!
(4)関節の柔らかさを保つと介護生活が変わる

●自分のことを後回しにしがちな介護者
「腰が痛いけれど、介護は休めない」とがんばっている人が多いのではないでしょうか。

理学療法士である清さんが言います。
関節の柔らかさはQOLに直結しています。「介助ではよく前かがみの姿勢になります。
痛みは感じていなくても、腰を曲げた姿勢で物を持ち上げたり、作業したりすれば、腰には負担がかかっているんですよ。
在宅介護をする人は、いろいろな介助を日に何度もおこないます。
腰への負担は蓄積する一方です。
とはいえ目の前に自分のことを必要としている人がいるから、つい無理をしてしまう。
自分の痛みやつらさを後回しにしてがんばった結果、ひどい腰痛になってしまう方も多いです」


介護する人が動けなくなったら、在宅介護は成り立たちません。
何よりもまず、自分の身体のことを考えてくださいね。



●介護ベッドの高さは自分の作業にあわせて調整
腰を痛めるのは移乗など、力のいる介助のときとは限りません。
意外に盲点なのが、介護ベッド上で日常的におこなう動作や作業だと清さんは言います。

「ベッド上で過ごす時間が長い方の介護では、前かがみになる場面がたくさんあります。
顔をのぞき込む、顔を拭く、水を飲ませる、枕元の物を取る。
これらのちょっとした動作で前かがみになるので、腰には負担がかかるものです。
前かがみのまま顔を横に向ける、遠くの物を取るために手を伸ばすなど、ひねりが加わるとさらに腰への負担が増します」


日に何度も繰り返す動作は、腰への負担が蓄積しやすいとのこと。

「前かがみの状態を避けるために足を開く、膝を曲げる、腰を落とす、膝立ちになる。
自分の腰に負担がかからないよう、姿勢に気を配ることが大切。


シーツ交換や食事介助も、ベッドが低い位置だと腰痛の原因になります。
前かがみにならないよう、ベッドの高さを調節するのがおすすめです。
少し面倒でも、介助や作業に適した高さに調節しましょう。腰への負担がかなり変わるはずです」
と清さん。

慢性的な腰痛の原因の多くは、「日々の小さな蓄積」。
無理な姿勢を繰り返しているうちに、腰痛持ちになってしまうことは珍しくありません。
介護のシーンだけではなく、日常生活でも気を付けたいですね。



●立ち仕事に取り入れたい「片足上げ」
理学療法士である清さんが、日ごろから腰痛予防のために取り入れていることも教えてもらいました。

「足元にステップなどを置いて片足を乗せると良いものです。
支持基底面(体重を支える部分の広さ、両足を広げた幅のこと)は広いほうが、腰への負担は軽減できます。片足をステップに乗せることで、支持基底面が広くなるだけでなく、膝と股関節が曲がることで、腰痛予防になります。
介護ベッド脇で何かするときはもちろん、キッチンで洗い物をしたり、料理をしたりするときなどにも応用できますよ」


キッチンの流しは自分にちょうど良い高さに調整できないので、意外と腰に負担がかかっています。
背が高い人は特に腰を痛めやすいので、ぜひ「片足をステップに」を取り入れたいですね。
ほかにも、清さんがよくやっているというストレッチを教えてもらいました。

「座っているときは、腰痛予防のストレッチをよくしています。
片足をあぐらのように膝の上にのせて、そのまままっすぐ上半身を前に倒します。
腰やお尻の筋肉がほどよくよく伸びて、とても気持ちがいいですよ。
固くなりやすい股関節にも効くストレッチですので、ひと休みしているときや、デスクワークの途中などにも取り入れてみてはいかがでしょうか」


介護者の腰を守るコツは「面倒がらないこと」。
在宅介護生活を元気に続けていくためにも、そして、何より自分の身体を守るために、些細な動作ひとつでも腰に負担をかけないよう工夫してみてください。



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