要介護の親と同居する前に考えておくべきこと

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要介護の親と同居する前に考えておくべきこと

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

良好な関係を維持できるのか、冷静かつ慎重に検討を重ねましょう。前回は、「同居介護のリアルな話」というテーマで、同居介護で必要なことや、大変なことなど、同居介護当事者の実話を交えながらご紹介しました。

今回はさらに掘り下げて、要介護の親御さんと同居をはじめる前に考えておきたいことをまとめます。

本当に同居を選んで良いのか、それとも別の方法を考えたほうが良いのか......。
そんな迷いのなかにある方もいらっしゃると思います。

もちろん正解があるわけではありません。
でも、少し視点が変われば、次の一歩を踏み出すきっかけになることもあるのではないでしょうか?

前回に引き続き、セコムシニア倶楽部 鎌倉の管理者、下城睦さんに「同居介護の実際」を聞きながら、同居介護を考えるうえで役立つポイントをまとめます。

【シリーズ「同居介護のリアルを聞く」】
実際どうなの?同居介護のリアルな話

● 「同居介護」はできればしないほうが良い!?
同居介護に役立つポイントをセコムシニア倶楽部 鎌倉の管理者 下城睦に聞きました。同居介護について、下城さんは「課題がいろいろあっても、やってみればなんとかなるもの」と話してくれました。

しかし、ご利用者の家族に相談されたときは、「よく考えてみたほうが良いですよ」とアドバイスすることが多いそう。
親を思う一心で前のめりに同居を決めてしまうのは、リスクが高いという考えです。

「仕事柄、同居介護のご家庭とたくさんご縁がありますが、家族との折り合いが良くないという話もかなり聞きます。
同居をはじめてみたものの、かえって親子の関係性がこじれてしまって、苦労されているご家族も多いですね」

独立して結婚し、自分が家庭を持つようになれば、生活習慣や考え方が変わるのは当然のこと。
就寝時間や食事のメニュー、掃除の仕方やお風呂に入るタイミングなど、細かな違いも毎日積み重ねれば、ストレスになります。
親御さんとの生活をはじめたものの、お互いの違いを受け入れられずぶつかり合ったり、我慢してイライラを募らせたりする方も少なくないそうです。

「実は、同居することを積極的にはおすすめしていないんです。
親御さんの方では年を重ねれば重ねるほど、新しい環境になじむのに苦労するもの。
息子や娘の家で新しい生活をはじめるとなれば、身近に知り合いもおらず頼れるのは息子や娘だけとなると、双方に相当なストレスがかかりますし気疲れもします。
環境が変わったことで、認知症が進行したり、気力が衰えたりすることもあります。

このような負担やリスクを考えれば、同居をスタートする前に、まずは親御さんの環境を変えずにできることを探してみたほうが良いのではないでしょうか」と下城さん。

同居ではなく別居を選んで、良好な親子関係を保つために必要な「距離感」を保つことも、ひとつの選択です。要介護の親御さんをサポートする方法はいろいろあります。

ぜひこちらの記事も参考にしてみてください。

【関連記事】
独居、老老介護の親が心配...離れて暮らす家族にできること
離れていても安心!「介護サービス」をうまく利用するコツ


● それでも同居をあきらめられないときは?
もちろん、同居介護だって間違った選択というわけではありません。
うまく同居介護を続けているご家庭もたくさんあります。

良い親子関係を保ちながら同居ができるのか、「確かめたほうが良い」と下城さん。

「まずはお試し同居ということで、一時的に一緒に暮らしてみてはいかがでしょうか。
親御さんの家はそのままにして、1カ月だけ同居してみるなど、お試し期間をつくってみるのです。

ご高齢の方が住まいを変えるということは、長年築いたご近所との関係性や生活環境などもリセットするということ。
家族との関係性だけではなく、新たなコミュニティーでうまくやっていけるのかどうかも、見極めなくてはなりません。

本格的な同居を考えるのは、そのあとでも遅くはありませんし、寒さが厳しい時期など生活が不自由になりそうなときだけ同居するなど、『別居ときどき同居』という方法もあります」

同居を決めてすぐに家を処分するのは「おすすめしない」と下城さん。
元の家がなくなってしまうと、もし同居がうまくいかなかったときに親御さんの行き場がなくなってしまいます。

同居をはじめるには勢いも必要ですが、冷静かつ慎重に考えることや、「もしものときの逃げ道」を残しておくことも大事だということですね。


● 迷わないために「優先順位」をはっきりさせておく
やはり同居しようと考えたとき、「はっきりさせておくべきことがある」と下城さん。
20年間にわたって同居介護を続けてきた下城さんが、いつも心に置いていることだそうです。

「一緒に暮らしたいというのは誰の希望なのか?ということです。
同居をはじめてみて『こんなはずではなかった』と思うことは、たくさんあります。
そんなときに『なんで同居をはじめたんだっけ?』がはっきりしていると、気持ちをそこに戻してどうすれば良いかを考えることができるのです」

下城さんの同居介護のケースでは、下城さん自身が「一緒に暮らしたい」と考えて同居をはじめました。だから何があっても自分の責任だし、自分がなんかしようと考えているそうです。

「最初に腹を据えておかないと、うまくいかなかったときや嫌なことがあったとき、誰かのせいにしたり、不満が大きくなったりすると思います。
同居を希望したのが親御さんのほうなら、『ここは尊重しよう』とか、『どうしても折り合いがつかないから、こちらの事情も踏まえてこれははっきり伝えよう』など、その場に応じて対応を決めることができるでしょう」

そして、もうひとつ心に決めておくべきは、「優先順位」だと下城さん。

「私は母の同居介護をはじめる前に、『いちばん大事なのは自分の家族』ということを肝に銘じました。
自分の家族をおろそかにして母を優先することは、母も望んでいないと思います。
母は倒れてから自分の意志を言葉で伝えることができませんが、私がきちんと家庭を持って、その家庭を大事にしていることが、母の望みでもあると信じています。

幸い不都合なくここまでやってこられましたが、もし同居して自分の家族に支障をきたすことがあれば、母はどこかに預けようと同居前から心に決めていました。

自分の希望で同居をはじめたのだから、続けるのも終わらせるのも自分の責任。
実際に同居してみてうまくいかなかったとしても、優先順位を整理しておけば、施設に入ってもらうなど、次の決断で悩みすぎずに済むと思います」

自分のなかで大事なものは何か、それを守るためにはどうすれば良いか?
このシンプルな考え方さえ持っておけば、「迷ったときに答えがすぐに見つかる」と下城さん。

介護が必要な親御さんとの同居に限らず、もともと他人同士だった夫婦だって、一緒に暮らすことを維持するにはお互いの努力が必要です。
そんなときは、初心を思い出すこと。
同居介護に限らず、人生においても大切なことかもしれませんね。

最後に下城さんから、同居を迷っている方へのアドバイスを。

「一度独立して親御さんから離れた以上は、今の自分の生活を大事にして、そこを軸にして介護を考えるべきだと思います。

介護が必要な親と人生を共にする、自分の人生を捧げるのは、簡単なことではありません。
介護にはいつか必ず終わりが来ます。
終わったあと、残された側がどう生きるのかも考えておかなくてはいけません。
ご自身のことを第一に考えてくださいね」

同居を選んでも、別居を選んでも、どちらも正解。
悩んだり迷ったりしたときは、いつでもこの「あんしん介護ブログ」に立ち寄ってくださいね。

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