虐待について介護家族が知っておきたいこと

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虐待について介護家族が知っておきたいこと

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

虐待はあってはならないことです。もし、自分の感情をコントロールできそうもないなら、ひとりで悩まず相談しましょう。高齢者への虐待が増加していることが社会問題になっています。
厚生労働省が公表した令和4年度の資料によれば、養護者※(高齢者の世話をしている家族、親族、同居人等)の虐待判断件数は16,669件(前年比243件増加)、相談・通報件数は38,291件(前年比1,913件増加)にのぼります。

虐待の発生要因の5~6割が「被虐待者の認知症の症状」「虐待者の介護疲れ・介護ストレス」です。誰にとっても他人事ではありません。

虐待はあってはならないことです。
ですが一方的に「悪いこと」として片付けては、虐待してしまう側が取り残されてしまいます。
虐待する側にもさまざまな事情や思いがあるものです。

高齢者への虐待を防ぐためには、高齢者だけではなく養護者を救わなくてはならない。
そのような考えのもとに施行されたのが、「高齢者虐待防止法」です。

高齢者虐待防止法の内容とともに、介護家族がどうすれば「虐待しかねないつらい状況」から救われるのか整理します。

● 高齢者虐待防止法ってどんな法律?
高齢者虐待防止法は、2006年に施行された法律。
正確には「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」です。
この法律には、重要なポイントがふたつあります。

ひとつは、虐待を発見した人には市町村に通報する義務があること。
虐待がはっきりと認められなくても、「虐待かもしれない」と感じた段階で通報することが求められています。
法律上、通報義務は守秘義務より優先されます。通報者が報復や責任追及を恐れる必要がないように配慮されており、高齢者虐待の早期発見や防止に配慮されています。

もうひとつは、養護者に対してのサポート。
養護者が抱える過度な負担を軽減するための相談や指導、助言、必要な措置(ショートステイなどを利用したレスパイト)なども明記されています。

高齢者虐待防止法は、高齢者の尊厳や権利利益の擁護を目的とする法律であり、同時に在宅で介護にあたる養護者の負担軽減に焦点を当てた法律であることを覚えておいてください。
介護する側、される側、両者を守ることで虐待を未然に防ぐことを目指す法律なのです。


● 介護ストレスと無意識にやってしまいがちな虐待
「虐待」というと、DVのような身体的暴力が思い浮かびますが、それだけではありません。
心理的虐待、性的虐待、ネグレクト(放任)、経済的搾取も含まれます。

【身体的虐待】
平手打ちをする、つねる、殴る、蹴る、無理やり食べ物を口に入れる、ベッドに縛りつけるなど

【介護・世話の放棄・放任(ネグレクト)】
水分や食事を十分に与えない、劣悪な住環境で生活をさせる、必要な介護・医療サービスを受けさせないなど

【心理的虐待】
怒鳴る、ののしる、悪口を言う、失敗を嘲笑する、子ども扱いする、わざと無視をするなど

【性的虐待】
排泄(はいせつ)を失敗した際に下半身を裸にして放置する、性器への接触、性的行為への強要など

【経済的虐待】
日常生活に必要な金銭を渡さない・使わせない、年金や預貯金を勝手に使う、勝手に家を売るなど

在宅介護をしていれば、日々ストレスや疲れ、不安にさらされるものです。
つい厳しい言葉や態度を取ってしまうことがあるかもしれません。
イライラしてつい無視してしまったり、感情的に怒鳴ってしまったりする。
法律的には「心理的虐待」にあたります。
精神状態や心の内に潜む感情が、無視や怒鳴るといった行為にあらわれるのだと思います。
自分の精神状態や心の内に気づいてあげることが大切です。


● 自分の「気持ち」と向きあうことが虐待を防ぐ一歩に
在宅介護において、虐待は誰にとっても遠い話ではありません。
「これぐらいのことは虐待とは言えないだろう」と思っている行為が、実は虐待の一歩手前であることもあります。
虐待行為を当たり前にしないために、これ以上エスカレートさせないために、介護者自身が自分の抱えているストレスの原因や心の疲れに気づかなくてはなりません。

忙しい日々のなかでは自分の気持ちを置き去りにしがちですが、ときどき自分と向きあう時間を持つことがとても大事です。
それがあなた自身を救うことにつながります。

「私はなんであんなに怒ってしまったんだろう」
「お母さんに対してこんなにイライラするのは、なぜなんだろう」

自分の気持ちを掘り下げみましょう。
介護との向きあい方や相手に対する心の持ちようが変わることもあります。

誰かに助けを求めることも必要です。
自分の感情をコントロールできないほどつらいときは、ひとりで抱え込んではいけません。
近くの誰かに相談しましょう。

高齢者虐待防止の取り組みは、市区町村が主体となっていますが、地域包括ケアや福祉機関などが連携して介護者を支える仕組みも整えられています。

身近な人に声をあげることが第一歩。
ケアマネジャーやヘルパー、訪問看護師など、話しやすい人なら相手は誰でも構いません。
こんな私的なこととか、自分の心のうちをさらすのは恥ずかしいとか、抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれませが、ぜひ勇気を出してみてください。
必ずあなたの味方になってくれる人がいるはずです。

市区町村の福祉課や地域包括支援センター、介護相談窓口なども活用できます。
虐待してしまいかねないほどつらい状況から介護者と介護する人をどう救済すべきか、関係各所が一丸となって対応を検討してくれます。

* * * * * * * * *

高齢者への虐待では、介護者が精神的・身体的に追い詰められてしまい、感情や行動をコントロールできなくなってしまったケースが少なくありません。
高齢者への虐待を防ぐためには、まず介護する人が心身ともに健康でいなくてはならないということが大切です。

つらいときは「つらい」
休みたいときは「休みたい」

積極的に周囲に伝えてください。相手は誰でも良いのです。
話しやすい相手を見つけて話してください。

「在宅介護はひとりでがんばらなくて良い!」
このことをどうか覚えておいてください。

※養護者とは
「高齢者を現に養護する者であって養介護施設従事者等以外のもの」とされており、金銭の管理、食事や介護などの世話、自宅の鍵の管理など、何らかの世話をしている者が該当すると考えられます。また、同居していなくても、現に身辺の世話をしている親族・知人等が養護者に該当する場合があります。 <引用:厚生労働省「高齢者虐待防止の基本」>


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