認知症の方の食事介助のコツ

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認知症の方の食事介助のコツ

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

ちょっとしたきっかけで「食べるスイッチ」が入ることもあります。何かと難しい認知症の方の介護。
なかでも「食事」で悩んでいるご家族が少なくありません。

失行や失認がある方の場合、お箸やスプーンの使い方がわからない、ごはんの時間だとわからない、目の前にあるものが食べ物だとわからないなどといったことがあります。

介護していて食事のたびにどう対処して良いか戸惑い、ときにはイライラしてしまうこともあるのではないでしょうか。

食事をうまく摂れない認知症の方の介助のコツや、認知症という病気とつきあっていくための心構えなどをまとめます。

● 失行・失認がある方の「食べるスイッチ」を探す
失行や失認は、どちらも認知症の中核症状です。
これまでできていた動作ができなくなる症状が「失行」。
「箸を使っておかずやごはんを取り、口に運ぶ」「歯ブラシに歯磨き粉をつけ、歯を磨いてうがいをする」など、ある一連の動作をおこなう能力が失われている状態です。

目の前にある物体を認識できなくなる症状が「失認」。
「目の前にあるものが食べ物だとわからない」「箸が何をする道具かわからない」といったことが起こります。
そのような時、「食べましょう」「ひとくちどうぞ」などと言葉で伝えても、なかなか通じないものです。

できない動作・わからないことは人それぞれ異なります。
食事で失行や失認が生じている場合、ちょっとしたきっかけで「食べるスイッチ」が入ることも少なくありませんから、どうかあきらめないでくださいね。

・お箸をうまく握らせてあげると、使い方をふと思い出す方
・一緒に食事をするとその姿をみて、まねて食べはじめる方
・口元まで食べ物を持ってきて、トントンと腕をたたくと食べる方
・うしろからこっそり食べ物を口に運ぶと食べる方

人によって「食べるスイッチ」は違うので、見つかるまではひと苦労。
でも、どなたにでもきっと「こうすれば食べてくれる」ポイントがあるはずです。
焦らず、いろいろな方法を試してみていただきたいと思います。


●五感に訴えかけて「食べる」を促す
目で見て食べ物だとわからなくても、嗅覚や触覚など人間の根源的な感覚に訴えることで認識が促されることもあります。

たとえば、おにぎりやサンドイッチ、野菜スティック。
手づかみで食べられるものを用意すると、食べられるケースは多くあります。

手のひらや指先の感覚は非常に敏感です。
「触る感覚」が加わることによって、呼び覚まされるものがあるのでしょう。
箸などの道具の使い方に戸惑う必要がなく「できない・わからない」という不安を抱えている認知症の方のストレスを和らげることにもつながります。
私たちが何気なく使っているお箸も、失行のある方にとっては使い方の難しい道具になります。 
お箸ぐらい使えるままでいてほしいという気持ちもわかりますが、残存機能の維持より、ストレスなく、おいしく食事がとれることの方がずっと大事です。

「香り」も食欲を呼び覚ます大事な要素。
嗅覚が刺激されると、目の前のものを食べ物だと認識できることがあります。
顔の近くまでお皿を持ち上げてみたり、少し温めて香りを立たせたりしても良いでしょう。
かつおだしや旬の果物など、香りの良いものは食欲を刺激してくれるようです。
「これはお味噌汁だよ」「おいしい桃だよ」などと声をかけるとより良いかもしれませんね。

また、認知症の方は視野が狭く、ごく至近にあるものしか認識できません。
食卓いっぱいにたくさんのお皿が並んでいても、目に入っていないことも考えられます。
品数は多くせず、コンパクトに配膳したり、ワンプレートに食事を盛りつけたりするのもおすすめです。


● 認知症の方の「スイッチ探し」は謎解きゲーム
今日の方法がうまくいっても、次の日はまた食べてくれない。
認知症の方の食事介助ではこのようなことが日常茶飯事です。

「こうやれば必ずうまくいく」というパターンがないからこそ、認知症の方の介護は大変なのだと言えます。

懸命に介護する家族からすれば、うんざりしてしまうことばかりでしょう。
何をやってもうまくいかず、ネガティブな感情にとらわれてしまうこともあるはずです。

大切なのは、深刻になりすぎないこと。
認知症の方の介護は、失敗を笑い話に変えるくらいの楽天さが必要だと思います。

イライラしても決してうまくいきません。
ほんの少し自分の感情から距離を置いて、「なぜこんなことをするんだろう」「どんな気持ちなんだろう」と想像してみてください。
理由を想像することが、対処方法のヒントになることは多々あります。

認知症の方とのかかわりは「謎解きゲーム」のようなものです。

「次はあれをやってみよう!」「こうやってみたらどうか?」など、試行錯誤を繰り返すのは、大変であると同時に、本人にピタリ合う対処方法が見つかれば楽しい時間でもあります。
思惑どおりにうまくいくと、それまでの苦労など忘れてしまうほど。
ひとつでも成功パターンが見つかると、本人も介護者も安堵し達成感が得られます。

介護生活でつまずくことがあったら、謎解きゲームに挑む気持ちを思い出してみてください。
そうすればきっと、認知症の方の介護が苦痛一色で染まってしまうことはないはずです。

もうひとつ大切なのは、ひとりで抱え込まないこと。
いくら考えても解けない謎も、一緒に考えてくれる人がいればヒントが見つかるかもしれません。
同じ苦労を知る理解者がいれば、「昨日こんなことがあって...」と笑い話にできるかもしれません。

特に訪問系のスタッフは「認知症の謎解き」の経験も豊富ですから、力強い味方になってくれるでしょう。
失敗も成功も共有しながらひとつでも多くの「スイッチ」を見つけることが、認知症介護の理想です。

認知症の介護は、ままならないことの連続。
ほとんど自分の思い通りにならないことばかりです。イライラしたり、落ち込んだり、うんざりするのは当然のこと。
一緒に悩んで考えてくれる人、同じような境遇でグチを言いあえる人、ひとりでも多くあなたの気持ちを救ってくれる仲間をつくってください。
自分の「救い」をつくることは、認知症の方を介護するうえでは勿論、認知症の方ではないが介護をしている方にとっても大事なセルフマネジメントです。


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