[集中連載「認知症3」]こんな時どうすれば?「暴力や暴言」への対処方法

介護情報なら安心介護のススメ

こんな時どうすれば?

介護のノウハウや、
よくあるお困りごとについて、
解決法とともにご案内します。

  • ツイート
  • facebookでシェア
  • LINEで送る
  • ツイート
  • facebookでシェア
  • LINEで送る

[集中連載「認知症3」]こんな時どうすれば?「暴力や暴言」への対処方法

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

「なぜ?」を考え、コミュニケーションの方法を工夫することから始めましょう。認知症の方を介護する際の「困った」を解消するための[シリーズ認知症]。
3回目の今回は、「暴力や暴言」がテーマです。

暴れたり物を壊したりする、怒ってひどい言葉をぶつけてくるなど、介護する家族を心身ともに傷つける「暴力や暴言」。

認知症のBPSD(周辺症状)のなかでも特に深刻といえる症状です。
スタッフが対応しきれないために、デイサービスや訪問介護サービスなどの利用を拒否されてしまうこともあり、介護家族をさらに追い詰めます。

認知症の方の暴力や暴言により、「もう限界」「これ以上、どうにもできない」という介護する方も少なくないでしょう。

今回は、暴力や暴言を繰り返す認知症の方との暮らしについてまとめます。
暴力や暴言にどのように対応すれば良いのか、現実的な解決方法を考えてみましょう。

● 認知症の方の「怒り」の受け止め方
介護する側からしたら理不尽に思える暴力や暴言も、ご本人には理由があってのこと。
「いまはそれをしたくない」という拒絶反応であったり、「いつもと違う」という不信感や不安の表れだったり、自尊心を守るためのストレス反応だったりと、怒りが爆発する原因はさまざまです。

体調不良や、服用している薬の影響が、怒りやイライラになって表れることもあります。

認知症の特徴のひとつとして、感情のコントロールが難しくなることがあげられますが、暴力や暴言はその最たるものでしょう。

介護する方に理解していただきたいのは、暴力や暴言は、認知症の方からのメッセージだということ。
「わかってほしい」「気づいてくれ」という訴えであり、それらの言葉に代わる表現手段なのです。
ですから、暴力や暴言は、抑制することではなく、「なぜ?」を考えることに比重を置くことが大切。
そうすると、意外とその原因は介護する方になかったりします。思い通りにいかない自分自身に対しての怒りや不安、多様な喪失感、口では表せない不快な身体症状等・・何が原因なのかがわかれば、コミュニケーションの取り方を工夫でき、共感的な態度で怒りを受けとめることも可能です。

言葉で説得しようとしたり、無理に押しとどめようとしたりすれば、ご本人はわかってもらえない苦しみが増すばかり。

被害妄想への対応方法でもご紹介しましたが、こちらに気合が入るほど、相手もそれと同じエネルギーで立ち向かってくるので、収拾がつかなくなりがちです。

介護する人と介護される人は「鏡」のような関係で、強く反応すれば、強い反応が返ってくると覚えておきましょう。

暴力や暴言に対しても、介護する方がヒートアップしないこと、冷静さを保つことが大事です。
認知症の方と同じ土俵で暴力や暴言を受け止めようとすれば介護する方が消耗し、深く傷つくことになりかねません。
介護者にとってなにより苦しいのは、認知症の方の攻撃的、否定的な感情に自分を脅かされることです。人は脅かされると自分を守るために反撃にでたり、コミュニケーションをとざしたりしがちで、負の連鎖が始まります。
しかし、先ほども述べましたが、怒りは介護するあなたに向けられているようで、そうではないことが多いのです。そのことに気づき、少しでもクールダウンができるといいですね。

大切な家族が、憎むべき存在になってしまう...こんなに悲しいことはないと思います。
ご自身を守るためにも、「どうしてこんなに怒っているのか」を考えることに気持ちを向けてください。


● 認知症の方が自宅で暮らすには、何を優先すべきか
あるケースをご紹介します。
ご主人が認知症で、自宅で奥様が介護をしているご家庭です。

ご主人の認知症が進んで暴言がひどくなり、ご近所の人にも怒鳴り散らすようになってしまいました。
奥様は、ご近所の人に認知症について説明し、なんとか理解を得ようとがんばりましたが、それにも限界があります。
家族でも耐えがたい怒りを、相手かまわずぶつけていれば、大きなトラブルに発展してもおかしくありません。

いろいろ考えた結果、主治医に相談して怒りの感情を抑える薬を処方してもらうことに。
激しい症状が緩和されて穏やかになり、ご近所との軋轢(アツレキ)も解消されたそうです。

認知症による暴力や暴言に対する薬物療法には、いろいろな考え方があります。
ADL(日常生活動作)が低下するなど身体機能への影響や、副作用もあり、何でも薬で抑え込めば良いというような、安易なことではありません。

ただ在宅介護には、ご近所との良好な関係は必要不可欠です。
また、介護するご家族に危害が及んでは、介護そのものが続けられなくなってしまいます。
何を優先すべきかを考えて、認知症の症状と折り合いをつけていくことが必要です。


● 認知症の方の「暴力や暴言」問題を解決する方法
「暴力や暴言」という困りごとをどのように解消するのか。
まずは、「なぜ?」を考えて症状を和らげるアプローチを工夫することが大事ですが、それでもどうにもならない場合、根本的な解決方法を考えていかなくてはなりません。

在宅介護の大きな目的は、「住み慣れた自宅・地域で、暮らし続けること」です。
そのためには、ご紹介したケースのように、薬物療法を選択する考え方もあります。
現状を顧みて、「自宅で暮らすこと」よりも、「穏やかな気持ちで過ごすこと」が大事だと考えるなら、施設に入居するという選択肢も検討できるでしょう。

認知症の方の暴力や暴言は、ご家族だけで抱えきれる問題ではありません。
暴力や暴言は、介護する人も認知症のご本人も傷つけ、家族としての愛情を壊します。
積み重なるほど傷が深まりますので、早めにSOSを出すことが肝心です。
ケアマネジャーや主治医に相談する、公的な相談サービスを利用するなど、第三者に助けを求めてください。

暴力や暴言に耐えるのではなく、より良い方法を見つけることに、力を尽くしましょう。

セコムの介護応援ブログTOPへ