[集中連載「認知症2」]こんな時どうすれば?「同じ質問」「同じ買い物」を繰り返す方への対応方法

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[集中連載「認知症2」]こんな時どうすれば?「同じ質問」「同じ買い物」を繰り返す方への対応方法

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

「同じものを買ってくる」ことで困るのは誰でしょうか?視点を変えると介護が少しラクになるはずです。認知症の方を介護する際の「困った」を解消するための[シリーズ認知症]。
2回目の今回は、「同じことばかり」がテーマです。

たとえば、
「5分と置かず、同じことを何度も聞いてくるので、イライラしてしまう」
「買い物に行くたび同じものばかり買ってきて!もう冷蔵庫がいっぱい」
こんなお困りごとはありませんか?

認知機能の低下が原因だとわかっていても、介護する側としては「いい加減にして!」と言いたくなってしまうこともありますよね。

こうした「同じことを繰り返す」という状態をどのように受け止め、どのように対応すればうまくいくのか、具体的にまとめます。
ぜひ今日からの介護にお役立てください。

● 「何度も同じ質問を繰り返す」認知症の方の不安の減らし方
認知症で「同じことを何度も聞いてくる」のは、記憶障害や見当識障害によるものです。
ほんの数分前の話さえ、完全に記憶から消えた状態。
もの忘れとは違って、少しも覚えていないのです。

部分的に前後の記憶が分断された状態になるために、ひと繋がりの流れのなかで自分が置かれた状況を把握することができなくなります。
「何か大事なことを忘れているのではないか」という不安に常にさらされているのが、認知症の方の心の内です。

ご自分に置き換えて、少し想像してみてください。
何かとても心配なことがあって、いてもたってもいられない...そんな心境です。
ざわざわと胸に広がる不安。
どうしていいかわからず、誰かに確認せずにはいられないのではないでしょうか。

ですから、不安をあおらないよう、安心させてあげるような声かけをすることが大切ですが、それを何度も繰り返すのは負担だと考える方も少なくないでしょう。

認知症の方に何度も同じことを聞かれる機会を減らすには、できるだけその「心配なこと」を減らしてあげることが肝心です。

たとえば、「病院に行く日の予定を何度も聞かれる」というケースで考えてみましょう。
着ていく服のこと、支度から出発までの段取りや病院までの道のりなど、心配なことがたくさん。
予定を忘れても、そわそわした心配な気持ちだけは残っていて、何度も聞かずにはいられません。
きちんとしていたい思いが強い方ほど、何度も何度も病院の行く日の予定を尋ねてくるでしょう。

このような予定や約束ごとは、直前に伝えたほうがうまくいくこともあります。
その日の朝に「今日、これから病院に行かない?」と伝えてみる方法もあります。

認知症の方は「自分は予定を覚えていられない」という自覚があることが多いので、抱えている時間が長いほど不安が募ります。
あえてギリギリまでご本人に伝えずにおくのも、ひとつの対応方法です。

何度も同じ質問を繰り返すのは、不安だけではなく、「自分で何とかしなくては」「ちゃんとしなくては」という気持ちが強調されて表出したもの。
責任感の表れだとも言えるのです。

その重荷を、少しでも軽くしてあげるような接し方、予定の進め方を意識してみてください。
何度も同じことを聞かれる苦痛を回避できますし、ご本人の精神的な負担も減らしてあげられると思います。


● 「同じものばかり買ってくる」と困るのはいったい誰?
認知症の方がいるお宅の冷蔵庫では、「同じ食品でいっぱい」ということが、よくあります。
「思わず買ってしまう」ものは、牛乳だったり、ジャムだったりと、人それぞれ。
結果、消費できないままストックばかりが増えて、腐らせてしまうこともあり、介護する方をやきもきさせます。

認知症の方のこうした行為を完全にやめていただくのは、残念ながら難しいでしょう。
判断力や記憶力の低下など、認知症の症状そのものが関わっているので、根本的な解決方法がないというのが、正直なところです。

買い物メモをつくって不要なものも書いておく、会計前に不要なものをさりげなく戻す、などの対応方法が考えられますがそれにも限界があるでしょう。

だとすれば、介護する方が発想を変えるしかありません。

「また同じものを!」と目くじらをたてるのではなく、同じものを買ってくることによって「誰が困るのか?」を冷静に考えてみてください。
「もったいない」「処理するのが大変」と考えているのは、あなた自身の気持ちではないでしょうか。

ご本人からすれば、買い続けることによって充足されている部分があるのです。
ご本人が買ってきたものをとがめたり、買い物そのものをやめさせたりするほうが、不安をあおり、自信を喪失させ、症状を進行させるなど、悪影響が考えられます。

「同じものばかり買う」行為で困っているのは、ご本人ではなく、自分自身であることに気づくと気持ちがラクになりますよ。

● 発想の転換が介護する方の救いになる
認知症の方の介護でストレスがたまるのは、往々にして介護する方の価値観で「その行為は間違っている」「やめてほしい」と考えるからだと、私は思います。
問題があると考えるから、止めなくてはいけないと躍起になってしまうのです。
きちんとしてもらいたい思いがあるから、そうではない現状がつらくなってしまうのです。

しかし、認知症の方の行動パターンを変えることは困難ですし、かならずそこには理由があります。そこで闘うべきではありません。
認知症の方が「止めてもやってしまうこと」は、「残された能力」とイコールです。

たとえば「同じものばかり買う」という困った行為も、視点を変えれば「まだ自分が欲しいと思うものを買い物ができる」ということでもあります。
買わずにいられないのは、家族のために献立を考えていたころの名残なのかもしれません。
残された能力や思いをなるべく奪わないよう、続けられる方法を見つけることが大切です。

問題だと思う行為を制御するのではなく、自分自身の気持ちから切り離して考えてみましょう。
ときには「まあいいか」と割り切って、それ以上は深く考えないようにしてみてください。
おおざっぱな部分をあえてつくらないと、認知症の方の介護は続きません。

同じものを買いすぎてしまうなら、たくさん消費する方法や別の用途を考えるなり、人にあげるなりすれば、ムダにはなりません。


食品や生活雑貨など少額の出費で片付くことであれば、「買い物もリハビリ代」、「不安を取り除くお薬代」と割り切る。
このような発想の転換が、介護する方の救いになります。

常識と違っていても、思いきって割り切ることが、認知症の方の介護では必要です。
自分の価値観で測るのをやめると、認知症の方の介護が少し違って見えてきます。
ご自身がラクになるためにも、普段からちょっと違う視点から見たり、考えたりすることを意識してみてくださいね。

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