在宅介護で要介護者の歩行中の転倒を防ぐには?原因と対策を考える

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在宅介護で要介護者の歩行中の転倒を防ぐには?原因と対策を考える

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

点灯の原因は、複数あります。身体の状態や、住環境、そのときの状況などを総合的に見極めましょう。介護が必要な方にとって、歩くことはとても重要なことです。
体中の筋肉を満遍なく動かすので全身運動になりますし、脳にも良い刺激を与えます。

たとえ介助や歩行器などの福祉用具が必要な状態でも、なるべく自分の足を使って歩くことを続けることが大切です。

これまで「歩行」について何度かまとめてきました。
歩行介助のコツと大事なポイント
在宅介護で考えておきたい「歩く」意義

「歩行」で気がかりなのは「転倒」。
ご高齢の方が転ぶと大けがになることが多く、けがをきっかけに歩行困難になることが珍しくありません。

要介護の方はどのようなきっかけで転倒に至るのでしょうか。
転倒の原因がわかれば、対策をとることもできます。

今回は、要介護者の方が転ぶ原因に注目して、どうすれば転倒を防げるのか考えてみたいと思います。

● 要介護の方が転倒しやすい理由
要介護の方が転倒する原因のひとつは、筋力の低下です。
立ったり歩いたりしているときに身体を支えきれず、力が抜けてしまうことがあります。
足の筋力が衰えている方ですと、ガクッと膝折れしてしまうことが多いようです。

転倒の原因は、下半身の筋力低下だけではありません。
手すりを持つ握力、それを支える上半身の筋肉なども衰えてくるので、何かにつかまっているときでさえ転倒のリスクとは無縁ではないということです。

また、加齢にともなって、バランスや体幹の力も低下してきます。
健全な状態なら、ちょっとつまずいても全身のバランスで体勢を戻すことができますよね。
障害物があれば身をかわすこともできますし、たとえ転んでもとっさに手や膝が出るので、大事に至ることはあまりないでしょう。

高齢の要介護の方の場合、よろめいたときに手も足も出ず、そのまま地面に打ち付けられてしまい、顔や後頭部、肩や大腿(だいたい)骨などに大けがを負うことがよくあります。
顔面や肩に内出血や擦り傷等があるときは、転倒したのかもしれません。家族には心配を掛けたくないばかりに内緒にされている方もいらっしゃいます。「あれ・・」と思ったら声を掛けてあげてください。

大きな転倒事故を防ぐためには、まずご本人の状態や歩き方、動き方をよく観察すること。
理学療法士など、リハビリの専門家に相談すると、歩行時に必要なサポートのしかたを教えてもらえるはずです。


● 家のなかに潜む転倒の原因を見極める
住み慣れた家のなかにも転倒の原因は潜んでいます。
たとえば床が滑りやすいとか、小さな段差があるとか、ちょっとしたことが転倒の原因になります。
足が上がらなくなっているので、カーペットのほんの少しの段差につまずくことも。
いつも手をつくテーブルが濡れていた、通り道にものが落ちていた...など普段と異なる状況が転倒につながることがあります。

転倒の原因はひとつではありません。
身体の状態、住環境、そのときの状況など、複数の原因がかけあわさっています。
何がご本人にとって転倒の原因になりうるか総合的に見極めることが肝心です。


● こんなときが危ない!要介護者の方が転びやすい場面
ご高齢の要介護者の方が転びやすい日常シーンをまとめました。

・しばらく動かずにいたとき
じっとしている時間が長いほど、筋肉が硬直しています。
食事のあと、椅子から立ち上がろうとした瞬間に転ぶ、ということもよくあります。
朝、ベッドから起きてトイレに行くときや着替えをするとき、しばらく居間でテレビを見て自室に戻るとき、デイサービスの送迎車から降りるときなどは、特に注意が必要なタイミング。
また、体調不良でしばらくベッドで過ごす時間が多かったときなどは、かなり転倒の危険度が増していると言えます。

いきなり動きはじめるのではなく、座ったまま足踏みをしたり、腕を上げ下げしたりして、少し慣らしをしましょう。身体と脳に動く心構えさせるためにも、「今から立つよ」「歩くよ」と声に出して、一拍おいてから動作に移すようにすると良いでしょう。

・靴を脱いだり、着替えたりするとき
要介護者の方がバランスを崩しやすいのは、片足になる動作です。
「玄関で靴を脱ぐ・履く」「ズボンを脱ぐ・履く」は片足になる代表的な動作。時間は短いですが、片足で身体を支える瞬間があるのです。

おかしな言い方かもしれませんが、「転倒を予防するには座ること」。
健脚であっても立ったまま着替えるのは控えたほうが良いでしょう。
身体支えてくれる接面が多いほど、人の身体は安定します。

玄関に椅子を置く工夫をしているご家庭をよく見かけますが、そこに座れば、立ち上がりも負担が少なくて済みます。上がりかまちを上がるときも片足になるので、手すりを設置するとより安心です。

・高いところや、離れたところのものを取るとき
上半身がのけぞるなど、バランスが傾くと、転倒しやすくなります。
食器棚の上段のほうのお皿を取ろうとしたときや、少し離れたところに置いてあるリモコンを取ろうとしたときなど、ちょっとした日常動作が転倒の原因になるのです。

日常動作なので、考えることもなく身体が動いてしまうものですが、転倒防止には慎重になることが大切。
日常生活でよく使うものは、なるべく手が届きやすい場所に置くなど、生活のなかから無駄な動きや無駄な移動を少なくすることも転倒予防になります。

・トイレを利用するとき
トイレのドアを開ける動作や、洋式トイレのふたを開け閉めする動作は、上半身をそらす、前かがみになるなど、バランス移動がいくつか含まれています。
トイレを利用するときに転倒するケースは多いです。
付き添いなしでトイレに行くことがあるなら、トイレのドアや洋式トイレのふたは開けておくほうが安全でしょう。

・歩きながら違う動作をしようとしたとき
歩行中、とっさに違う動作をしようとしたときに転倒のリスクが高まります。
たとえば、忘れ物に気づいて取りに戻ろうと方向転換しようとしたとき、歩きながら横にあるものを取ろうとしたときとか、歩行に違う動作が加わるときに転倒事故が起きやすいのです。

名前を呼ばれて振り返ろうとした瞬間に転んでしまった方や、車の近づいてくる音が気になって振り向いたときに転んでしまった方などもいました。

要介護者の転倒というと、つまずいて転ぶイメージが強いですが、歩きながらちょっとした違う動作をしようとした瞬間が危ないようです。
後ろから急に声をかけるのは、歩行中以外でも避けてくださいね。

こうした転倒を防ぐためには、なるべく慌てさせないこと。
止まってから次の動作に移るなど、ゆとりを持つと良いでしょう。


どんなに注意していても、転倒を100%防ぐことは難しいものです。
しかし、「こうしておけば転ばずに済んだのに...」と後悔することは、できるだけ避けたいですよね。
予測しうる転倒は、防ぐことができるものです。
ご本人の身体の状態や歩き方をよく見て、住環境や介助のしかたを見直してみてはいかがでしょうか。

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