介護家族が知っておきたい、転倒事故が起きたときの対処

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介護家族が知っておきたい、転倒事故が起きたときの対処

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

転落後、すぐに起こすのではなく、まずは冷静になって状況を把握し、どこに連絡するか判断しましょう。転倒事故防止のため、介護家族の方向けに、高齢者や要介護者の方の転倒事故の予防方法や、ご本人の動きたい気持ちを尊重することの大切さについてまとめてきました。

「転ばないようにする」ことはとても大切ですが、転倒事故はどれほど注意していても起きてしまうことがあります。
また、転倒を恐れるあまり、ご本人の意思や自立を抑制するのは結果として、あまりよくないこともお話しました。

いざ転倒事故が起きたとき、いちばん大切なのはそのあとの対処です。
転んだ本人も動揺していますし、介護者もどうして良いかわからずに適切な対応ができないことが少なくありません。

今回は、転倒事故が発生しても、慌てないために知っておきたいポイントをご紹介します。

● 転んでしまったときに、まず介護者がすべきことは
高齢者の転倒は、大きなケガにつながります。
すり傷や打撲といった程度では済まないことが多いため、慌てて起こそうとするのは間違った対応です。

ご本人は転んだことにショックを受けていると思いますので、周りの方が落ち着いて接するようにしてください。

<転倒事故が発生したら>
・声をかけて意識があるかを確認する
・気持ちを落ち着かせるように声かけをして、転倒したままの姿勢でいてもらう
・どこが痛むか、吐き気などはないか、身体の状態を聞く

転倒したときは、しばらくその場に寝かせたままにして、動かさないようにしてください。
直後は痛みを感じないこともあります。
その場に付き添って「大丈夫だよ」「ここにいるよ」などと声をかけ、ご本人が落ち着くまで待ちましょう。

落ち着いたら、痛みを感じるところや、転んだときの状況をできるだけ細かく聞き出します。
矢継ぎ早にあれこれ聞くのではなく、ゆっくりとひとつずつ確認しながら聞いてください。
何をしようとして転んでしまったのか、どんな体勢から転んだのかを確認することが肝心です。

ケガの部位や状態を予測するための重要な情報になります。
ご家族の方は、まず状況把握を正確に行うこと。

判断が難しい場合は、訪問看護師やかかりつけ医などに連絡を取って、いますぐ病院に行くべきか、救急車を呼ぶべきかなど、その後の対応を指示してもらいましょう。

地域によっては、「#7119」に電話をかけると救急車を呼ぶべきかなどの相談に応じてくれますので、訪問看護師やかかりつけ医に連絡がつかないなどの場合は、相談すると良いと思います。


● 動けない場合の対処は?
自分で動けるなら、起きて別の場所に移動しても構いませんが、痛くて動けない場合や、意識がもうろうとしているような場合は、その場で楽な姿勢でいてもらい、移動はさせないでください。

転んだ人を起き上がらせることは、介護のプロでも簡単ではありません。
無理に起こしたり、移動させたりすると、ケガを悪化させてしまうことも考えられますし、ご自身がケガをしたり、腰をいためてしまう可能性もあります。

痛みが強くて起き上がれない場合は、骨折かもしれません。
ひどくはれている、変形している、動かすとさらに痛みが増すといった状態のときは、骨折の可能性もあります。
救急車を呼ぶなどして、すぐに医療機関にかかる必要があります。


● 頭を打っている場合の対処は?
高齢者の転倒で心配なのは、頭部の打撲です。
若い時と違い、とっさに手が出ず、顔や頭を直接打ち付けてしまうことがよくあります。

脳への衝撃は命に関わることが多いので、頭をぶつけていたら、なんともないように見えてもなるべく早く病院に行って、詳しく検査してもらいましょう。

硬膜下血腫(こうまくかけっしゅ)と言って、頭の中の血管が切れてじわじわと血が溜まり、脳を圧迫する場合があります。
その場は大丈夫に見えても、何日かたって突然意識を失うなどの症状がでることもあるそうです。

検査で異常がない場合も、普段と違うところはないか、数日間はよく観察するようにしてください。

頭痛や吐き気、めまいなどはないか、話し方におかしいところがないか(舌がもつれるなど)、歩き方は以前と変わりないかなど、気にかけておいたほうが良いでしょう。


● いざというときのために、ひとりでも連絡できる手段を
近年はひとり暮らしの高齢者の方も多く、転倒したあと、自分ひとりでどうすることもできず、動けなくなっているケースも多く見られます。離れて暮らしているご家族の方も、心配でしょう。

ひとりでいるときに転んでしまったら、外部との連絡手段が命綱になります。
転倒のリスクが高いトイレなど家の中の数カ所に電話の子機を置いておく方法があります。
転んだときに手が届くよう、床に近いところに置くことがポイントです。
いつでも助けが呼べる緊急連絡サービスに加入するのも方法です。現在では一人暮らしの高齢者向けに自治体がサービスを整えている場合も多いようです。
また、連絡をうけたあとの入室方法を話し合っておくのも重要です。家の中で転んでいるのがわかっていても、鍵が開かず入室できないということもしばしばあります。
ご自分たちのシチュエーションにあった外部との連絡方法をぜひ考えてみてください。

【関連コラム】
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● 転んでしまっても、大けがにならない工夫
実は転んでしまうこと自体は、さほど大きな問題ではありません。転んだ結果、怪我をしたり、痛い思いをすることが問題なのです。だとすると、転んでしまっても大けがをしない、痛い思いをしないための工夫というのも大切ではないでしょうか。
前回お話した大腿骨を保護するパットつきのズボンをはいたり、頭部を保護するのに帽子をかぶるのもよいでしょう。床や壁をソフトクッションする方法もあります。最近では転倒に対して衝撃を吸収する床材というのも開発されているようです。
非常に珍しいケースかもしれませんが、転倒を繰り返す利用者さんに怪我をしない転び方と起き上がり方を練習してくれた理学療法士さんもいます。
転倒を予防するのではなく、転倒による怪我を予防すればよいのです。

日中は訪問介護サービスなどで人が来るものの、夜間はひとりになってしまう要介護者の方は、大きな不安を抱えています。一人暮らし、老々介護ならなおさらです。
夜中に、玄関の鍵がしまっているか気になって確かめようとして、転んでしまった方もいらっしゃいました。

ご家族の方は、不安な気持ちを理解してあげることが必要だと思います。
安心して過ごせる環境をつくることで防げる転倒事故もあるのではないでしょうか。

そして是非、転倒予防と合わせて、転んでしまった時どうするか、転んでしまったとして、どう心と体の安全を守っていったいいのかということも考えて頂けたらと思います。本当の安心につがるのではないかと思います。

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