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転倒事故から考える「安全」と「自立」のバランス

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

自由に働きたいという気持ちを尊重して、安全と自立のバランスを取りましょう。高齢者の転倒事故が、大腿骨(だいたいこつ:太ももの骨)の骨折など大きなケガの原因になることが多いことを前回「転倒事故を防ぐために介護家族ができること」でもご紹介しました。

新聞やテレビなどでも「高齢者の転倒」はよく取り上げられるテーマですので、「転んだら寝たきりになってしまう」と心配している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

歳を重ねても自分らしく暮らしていくためには、自分の意思で行動できることがとても大きな意味を持っています。
要介護状態になっても、なるべく人の手を借りずに行きたい場所に行けたり、したいことができたりするのは良いことですよね。

転倒のリスクを減らしながら、移動の自立を確保する方法はあるのでしょうか。
今回は、介護生活における「安全」と「自立」のバランスの取り方を考えてみたいと思います。

● 転ばないことより大事なこととは?
転倒のリスクは誰にでも、どこにでもあります。
屋外を歩いているときだけではありません。
家の中でちょっと物を取ろうとしたり、トイレのドアを開けようとしたりしたときでも、転倒事故はおきます。

転ばないために一番良い方法として、極論を言えば、「動かないこと」です。
しかし、「生活の質」を考えるとば、「動かないこと」は決してプラスにはなりません。

動かなければ身体機能はどんどん低下しますし、自由に動きたい気持ちを抑制することは、ご本人の意欲や喜びを奪うことでもあります。ご本人らしさを損なうことでもあるのです。認知症の方では周辺症状を悪化させることにもなりかねません。

つまり、安全を優先して、自立を妨げたり、ご本人が自分でしたいと思うことを押しとどめたりすることは、決して良いことではありません。転倒のリスクがあるとしても、実現したい自由や自立、そして「本人の想い」が誰にでもあるのではないかと私は考えています。

● 転倒予防は「自立」と「安全」のメリハリが大事
ご本人の動きたい気持ちを妨げず、転倒を防ぐことは、本当に難しいことです。
最近では自由な動きを抑制することを「虐待」と解釈する考え方も一般化しています。
「抑制」せずに「安全」を守るためにどうすればいいのか、介護の現場につきまとうジレンマです。

要介護者の方を支えるご家族ができることとしては、なるべく転ばないように環境を整えておくことがあげられます。
ご本人の行動パターンや歩き方のクセなどを考えて、足元やつかまるところの安全を確保しておきましょう。
たとえばいつもつかまるテーブルに水がこぼれていたら、手が滑って転んでしまうことも考えられます。
また、物の位置が転倒の原因になることも。
テレビのリモコンがいつもあるべき場所になく、ちょっと余計に手を伸ばしたら、転んでしまった...ということもあります。

ポイントは1日を通した行動を想像することです。どんな時に、どう行動をとるのか、住居環境に目を配って、危ないことがないか、転倒につながる要因はないかをよく見ておくようにしてください。
ご本人の動きや何をしたいかに合わせてより安全な方法を見つけてください。

また、身体の状態によっては、人の目があるときはご本人の意思や自主性を尊重し、ひとりになる夜などの時間帯は安全を優先するといったことも方法の一つです。

メリハリを付けて「自立」と「安全」のバランスを取っていくのが良いと思います。

● 「転ばぬ先の杖」を考えて
「自分の足で歩きたい」
「自分の意思で移動したい」
身体の衰えを感じる年頃になると、この想いはどんどん強くなるものだと思います。

先日、ある病院で出会ったご婦人は、両手に杖を持って、とてもゆっくりですが、しっかりと歩いていらっしゃいました。
骨折して入院し、リハビリをがんばってようやく歩けるようになったそうです。
なんとか自分の足で歩きたい。
そのためにどうしたらいいのかを懸命に考えて、2本の杖を持つことを思いついたのでしょう。

「転ばぬ先の杖」は、要介護者の方にとっては非常に意義があることなのです。
少し過剰に思えても、転ばないための安全対策はできるだけ手厚く整えた方が良いと思います。
歩行の補助用具や、歩き方のクセに適した介護用シューズなども活用してみてください。
また、最近では転倒による骨折を防ぐため、転んだときに大腿骨への衝撃を吸収できるようにズボンのお尻脇から太ももにかけてパッドを入れて布地を厚くした高齢者用のズボンなども、福祉用具店で取り扱いをしているようです。

● 要介護者も転ばないための身体づくりを
転倒予防のためにぜひおすすめしたいのは、足首から先のストレッチです。
よく「足腰を鍛える」と言いますが、それだけではしっかりとした足元をつくることはできません。

歩くときには、足首の柔らかさや、足の指がしっかり地面をとらえることが非常に重要です。
足首を回したり、足の指をマッサージしたり、ひらいて伸ばすのも効果があります。

足首は90度にまがって足裏が地面にしっかりつくことが大事なので、端座位(たんざい:ベッドや椅子の端に腰掛けること)のときは足首の角度をしっかり意識してみてください。

ご高齢になって活動量が減ると、尖足(せんそく:足首の関節や甲が伸びて、つま先が下を向いた状態)気味になって足裏全体で地面をとらえにくくなります。
足首を正しい角度に保って体重をしっかりかけることで、足首の柔軟性を鍛えられます。

要介護や要支援になると、今まで当たり前にできていたことが、おぼつかなくなってくることもあるものです。
歩くこともそのひとつで、ちょっとした油断が転倒につながります。

まずはご本人がそのことを自覚することが大事。
一つ一つの動作を確かめながら、ゆっくり行動するだけでも、転倒のリスクは減らせます。

今の身体の状態にあった動き方や歩き方ができるよう、「ゆっくりで良いよ」と声をかけてあげてくださいね。

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