在宅介護の主人公は誰?"自分らしい"介護生活のつくり方

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在宅介護の主人公は誰?"自分らしい"介護生活のつくり方

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

価値観や信念は、介護が必要になっても尊重されるべきだと思います。前回は「訪問介護サービスにどんなサポートを頼めるのか」をテーマに「自立支援」の考え方についてお話ししました。

介護保険には、できることとできないことがあります。
自分らしい生活を実現するうえで足りない部分を支援するのが介護保険の役割です。
必要なサービスを賢く取捨選択していくことがポイントと言えます。

突然のケガや病気がきっかけで在宅介護をはじめなければならないようなケースでは、事前の準備が整っていないうえ、慌ただしく介護生活を迎えたために、サービス提供側にリードしてもらうことが多いようです。

「わからないから任せるしかない」
「ケアマネさんの言う通りにすれば間違いないはず」

そのようなケースが多々あることと思います。
しかし、決してそんなことはありません。

ご本人の思いや、ご家庭の事情は、それぞれ全く違います。
在宅介護は十人十色。
定型的なサービスや経験が役に立たないこともたくさんあります。

今回は、最適なサービスを受けるためには、どうすれば良いのか、私が訪問看護師として働いていたころのエピソードを交えてまとめます。

● 素敵なご夫婦に教えてもらった「それぞれの人生」
病院勤務の看護師から、訪問看護師に転身したばかりのころのエピソードです。
ご主人ががんを患った70代のご夫婦とのエピソードが私にとって忘れられない教訓になっています。

訪問看護師になったばかりの私は、病棟勤務のときと同じような感覚で在宅療養生活のアドバイスをしていました。しかし、病院と在宅では、生活パターンや生活リズムが違うため必要なアドバイスは異なってしかるべきです。当時の私にはこの観点が不足していました。

病院は病気やケガを治す、主に治療の目的で滞在する場所です。
入院中は病院が決めた治療を受け入れ、食事や入浴なども病院のペースに合わせなくてはなりません。一方、在宅介護は、それぞれの暮らし方と生活リズム、ご本人や御家族の想いが尊重されます。
病院と在宅で優先すべき事項が異なるのは当然です。

病院で過ごしているかのようなアドバイスをしていた私に、ご主人はこうおっしゃいました。
「僕たちは70年以上生きてきて、50年以上夫婦として連れ添ってきました。良いことも悪いことも、ふたりで受け止めて、決めて、助け合いながらここまで歩いてきたんです。助言してくれるのはありがたいけれど、決めるのは僕たちだから」と。

必死すぎて在宅療養生活で優先されるべき大切なことを見失っていた私に、ご夫婦は「気にかけてくれてありがとう」と許してくださいましたが、今思い出しても恥ずかしく、申し訳ない気持ちがよみがえってきます。

ご夫婦が長年かけて築いてきた価値観や絆は、私の知識や経験よりもずっと重く、在宅療養生活において何よりも尊重されるべきものでした。

在宅介護の主役は、ご本人であり、その方を支えるご家族です。
介護サービスでさまざまな第三者が家に入ってくることになっても、大切にしてきた価値観が損なわれたり、せっかくご自宅にいるのに、望まない生活に変わったりしてしまうことは、あってはなりません。

このことをどうぞ忘れないでください。


● 「何を優先するか」は自分たちで決める
在宅療養生活の良さは、施設や病院と違って、自分たちのペースで生活ができることです。
要介護になっても、集団の規則やルールに縛られることなく、自分らしく暮らせます。

けれども、ケアマネジャーや訪問看護師、訪問介護員など、介護の専門職から「こうしたほうが良い」と言われると、「そうなのかな?」と思って受け入れてしまうこともあるのではないでしょうか。

身体の機能面や健康管理を優先して考えるなら、専門家の意見に従うことも大切です。
けれども、それよりも優先したいことや価値観の違いがあるなら、それを曲げてまで受け入れる必要はありません。
不要だと思ったサービスは、断ることもできます。

以前、「在宅介護の目標は「自立」だけではない?それぞれの幸せの見つけ方」でも取り上げましたが、自立度を向上することが、必ずしもご本人にとっての幸せにつながるとは限らないのです。

残された人生を家族と穏やかに笑って過ごしたいと願っているなら、つらいリハビリで体力を消耗したり、トイレの失敗を責められたりしなくて済むような暮らし方を考えたほうが良いと思います。
けれども、「なるべく人の世話になりたくない」「もう一度○○ができるようになりたい」という目標があるなら、そのためのリハビリや生活スタイルの改善を優先しましょう。

「いちばん大切にしたいこと」や「実現したい生活」について、明確にすることが肝心です。

ケアマネジャーをはじめ、サービス提供側の意見やアドバイスをそのまま受け入れていた方は、原点に戻って「本人はどうしたいのか」「家族にとっての幸せは?」といったことを話し合ってみてください。
在宅療養生活のなかで何を優先するべきか、どんなサービスが必要なのかがはっきりするはずですよ。


● 迷ったときは専門家に聞いてみる
大切にしたいこと、優先すべきことがあっても、ときにはご家族が判断に迷う場面もあります。
たとえば、今の介護方針で良いのか迷うようなときです。
必要とされる医療処置やリハビリでも、つらそうに見えると「これで本当に良いのだろうか」と感じることもあると思います。
ご本人の考えと、ご家族の気持ちが一致せず、ご家庭内で意見がまとまらないことも珍しくありません。

自分たちだけでは決められないこと、判断に迷うことは、遠慮なく相談してください。
ケアマネジャーでも良いですし、訪問看護師でも訪問介護員でも、話しやすい人で良いので、とにかく伝えることが大切です。
聞いた人が問題を解決できない場合でも、最適な専門職につなげることはできます。
身内だけで抱え込まないこと、話しやすい相手を見つけておくことを、意識してみましょう。

介護サービスは、在宅介護生活のサポーターです。
非常識に思えることでも、他人には言いにくいデリケートな問題でも、話していただければ、同じ世界を共有しながらサービスを組み立てていくことができます。
介護サービスを上手に味方につけて、ご自分たちのペースで介護生活をつくっていってくださいね。

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