訪問介護員に何が頼める?「自立支援」の意味を考える

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訪問介護員に何が頼める?「自立支援」の意味を考える

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

自分らしい暮らしをするために必要な助けが自立支援です。前回は訪問介護サービスに納得できないときの対処方法をお話ししました。
日々の暮らしで大切にしている価値観や、譲れないことがあれば、遠慮なく伝えること。
「本当は嫌なんだけど...」と思いながら提供されるサービスをそのまま受け入れていると、どんどん"自分らしい暮らし"から遠ざかってしまいます。

訪問介護サービスは、既成品ではなく、オーダーメイドでつくるもの。
食事介助ひとつとっても、お一人おひとりやり方が異なるのは当然です。

ただ、お願いすれば何でもやってくれるのかと言えば、ちょっと違います。
訪問介護サービスは、「身辺のお世話」ではなく、「自立した生活の支援」を行うためのものだからです。
要望に応えられない場合もあるので注意しましょう。

今回は、訪問介護サービスを介護生活で最大限に活かすコツとして、「自立支援」の考え方、どんなサポートをお願いすべきかをお話ししたいと思います。

● 介護保険制度における「自立支援」の考え方
介護が必要な方が、自分らしく、自立した生活ができるよう、適切なサポートを行うのが、介護保険制度です。
できることは自分でする、できないことは訪問介護員が手助けすることで、残された身体の機能を活かしながら、自分らしい生活を送ることが可能になります。

身近なところで生活をサポートしてくれる訪問介護員ですが、いわゆる家政婦さんではありません。
「身辺のお世話を何でもしてくれる人」ではなく、自立した生活を阻む「課題」を解決するのが仕事なのです。

訪問介護は、介護生活の「課題」に関係ないと判断した場合、お願いされた用事をお断りすることもあります。
ちょっとした頼みごとなら、「これくらいやってくれても良いじゃない」と思われるかもしれませんね。
けれども、介護保険サービスに要したお金は自己負担の残りを社会全体で負担していることを思い出してください。

適正な制度運用のためにも、自立支援につながらないことは引き受けられないということを、ご理解いただきたいと思います。

大切なのは、正しい認識をもって介護保険サービスを利用すること。
課題解決につながるサポートを適切に受ければ、たとえ寝たきり状態でも、自分らしく、自立した生活を送ることは可能です。

日常のちょっとした用事や困りごとを引き受けてもらいたい場合は、民間のコンシェルジュサービス、シルバー人材派遣などを探してみましょう。


● 「どんな生活を送りたいか」を明確にする
では、訪問介護員にはどんなことを頼めるのでしょうか。
排せつ介助や入浴介助などの専門的な介護もあれば、掃除や食事の支度といった家事全般に対応することもあります。

ポイントは、自分らしい生活を送るために足りない部分は何か?ということ。
たとえば、がんばれば自分で着替えをすることができるけれど、それで体力を使い果たして、外出先で活動する元気が残っていない...というのでは、元も子もありません。
訪問介護員に着替えを手伝ってもらうことで、外出の支度が整い、外出先でいきいきと過ごすことができるなら、着替えの介助は「必要」だと言えます。

自分がどんな生活を送りたいのか、どんな課題をクリアすれば、自分らしくあることができるのかを、明確にしておくことが大切です。

要介護状態になっても、「やりたいこと」「実現したい生活」はきっとあると思います。
小さなことでも言葉にして相手に伝えることが肝心です。

ただお世話をされるのが介護ではありません。
生き方、暮らし方を自分で決めて、受け取る介護サービスを自分で取捨選択する。
こうした意識を持つと、在宅介護生活がもっと充実したものになるはずです。


● 在宅介護サービスでQOLはもっと向上する
医療や介護の分野では、よくQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の話が出てきます。
直訳すると「生活の質」ですが、生活全体の豊かさや自己実現性のことを指しています。
物理的な充足だけではなく、精神的な充実感や、自分らしい生活を送ることが、ますます重要視されるようになってきました。

介護保険制度の「自立支援」は、まさにQOLを向上することを目指しています。
訪問介護だけではなく、医療、看護、リハビリなど他の分野の専門家がそれぞれの知識やノウハウを活かせば、QOLはより向上するはずです。

たとえば訪問看護師は、現在の身体の状態を見極めて、今後のリスクを示唆したり、解決策を提示したりする専門家です。
ですから、体調面の心配や現在の治療の不安、今後どうしたら良いかといったことを相談するには、最適な相手と言えます。

また、ご自宅での看取りや死生観の考え方などについてもたくさん知識を持っています。
どのような最期を迎えたいか、そのためにどのような準備が必要かといったことを相談してみるのも良いと思います。

以前「最期はどこで?延命治療は?「そのとき」困らないために今できること」という記事でご紹介しましたが、自分らしく生きることは、充実した最期を迎えるための準備期間でもあるのです。
ご家族にとってははじめてのことでも、多くの経験からさまざまな選択肢を提示したり、心の支えになったりしてくれる存在がいるのは、心強いですよね。

理学療法士や作業療法士、言語聴覚士といったリハビリの専門職も、「リハビリする」だけの付き合いではありません。
何ができれば、自分らしく日々を過ごすことができるのか。
「やりたいこと」「実現したい生活」のために不足している部分を補う手段を提示することも、介護保険制度におけるリハビリ職の仕事なのです。

介護保険の本質が理解できると、利用方法や、その価値がよくわかると思います。

「やってもらう」という考え方から脱して、「どんなサポートが必要か」という視点で今の介護生活を見つめ直してみてはいかがでしょうか。

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