介護家族のちょうど良い「距離感」とは?
こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。
年があらたまり、寒さもいよいよ本格的になってきました。
ご家族でよきお正月を過ごされましたでしょうか。
「お正月くらいのんびり過ごしたい」と思っていても、在宅介護では日々のことに追われるうえ、年末年始の気ぜわしさも加わって、余計に疲れてしまった方もいらっしゃると思います。
「私が支えにならなくては」という、その気持ち、素晴らしいです。
でも、あなた自身の生活や、体調管理がおろそかになっていませんか?
在宅介護を続けていくうえでは、お互いにちょうど良い「距離感」が欠かせません。
忙しくてがむしゃらな日々のなかでは、ちょうど良い距離感を測るのは難しいもの。
少しだけ立ち止まって、あなたと介護の関わり方を見つめなおしてみましょう。
● 「要介護者の幸せ」は家族がそばにいること?
親御さんに介護が必要な状態になると、自分の生活を変えて介護にあたる方が少なくありません。仕事をやめ、介護に専念する方もいます。
「不自由をしている親を放っておけない」「子が親を介護するのは当然」「そばにいて支えるのが当然」という思い込みから、介護を義務と受け取る方も少なくありません。
家族の形態が多様化している現代においては、要介護になっても、いろいろな暮らし方の選択肢があります。
介護保険制度を利用すれば、子の手がなくても親のひとり暮らしを継続することは可能です。
介護する家族がそばにいなくても、自分らしく心豊かに暮らしている方も大勢います。
在宅介護は十人十色。
介護との関わり方は、人それぞれ違って当然です。
いつもそばにいる介護が正しい介護の在り方というわけではありません。
● 「自分でできること」を奪わないこともケアのひとつ
子にとって、テキパキと動けなくなった親の姿を見ることは、心が痛むことだと思います。
時間がかかったり、危なっかしく見えたりすれば、自分が代わりにやってあげたいと思うこともあるでしょう。
しかし、ひとりでなんとかやれていたことを、代わりにしてあげることは介護とは言えません。
時間がかかっても自分でできることを奪ってしまうと、心も身体も衰えてしまう一方です。
お年寄りによっては役割をとられてしまったように感じ、がっかりしてしまう方も少なくありません。
介護保険制度においての介護には、自立支援の意味があります。
誰かに依存して生活するのではなく、人からの助けを最小限にして暮らす方法を見つけるということです。
残された機能を使って、自分の力でできるようにするためのサポートこそが介護。不自由に見えても手を出さず、見守ることもケアのひとつなのです。
要介護状態になることは、誰かに守られなくては生活できない弱者になることではありません。
親として、人としての尊厳をもって、最期まで生きたいと誰もが願っています。
保護すべき存在ではなく、尊重されたひとりの個人であることを忘れなければ、「大変そう」「あぶない」と感じても過剰に介入せず、適切な距離感を保って関わることができるのではないでしょうか。
加齢にともなって、あるいは病気やケガによって身体が衰え、できないことが増えていくこともあります。家族が代わってしてあげるのではなく、ケアマネジャーと相談して、どんなサポートが必要か、どうすれば自分でできるようになるのかを検討することが大切です。
介護という名目で、なんでも助けてしまいがち...という方は、介護保険制度の観点から、自分がどのように関われば良いか整理してみることをおすすめします。
【関連コラム】
充実した介護生活のために知っておくべき「介護保険制度」のポイント
● 介護には終わりがない。自分を"緩める方法"を持ちましょう
一緒に住んでいたり、そばに住んでいて日常的に顔を出したりしていると、介護が生活の一部になってしまい、冷静に関わることが難しくなってしまうこともあると思います。
介護は家事と一緒で、やりはじめたらきりがありません。
ひととおりの家事が終わったあとに、鍋の焦げをとったり、鏡の曇りが気になったりすることはありませんか?
それと同じで、懸命に親の介護に関わろうと思えば、やることはいくらでもあり、時間はいくらあっても足りないと感じている方がほとんどだと思います。
だからこそ、自分なりの折り合いをつけることが必要です。
自分ができることをする。
これをやったら続かないということはしない。
息切れせず、介護を続けていくためには、客観的に「できること」を見極める冷静さが必要です。
介護からちょっと離れて、心を緩める方法を持っておきましょう。
たとえば1日の終わりに、スーパー銭湯に行って広いお風呂でのんびり。
思い切って、ショートステイを利用して介護をお休みし、温泉に行ってみるのも良いですね。
あなた自身を大切にいたわる時間を持たないと、介護で心がすり減っていってしまいます。
ときどき介護を休憩することも、介護とのちょうど良い距離感を保つために欠かせないことです。
親と過ごす時間も良いですが、ご自分を休めることも忘れないでください。
親からもらったプレゼントだと思って、思い切って介護を休む。
そんな時があっても良いのではないでしょうか。
身体がどんな状態になっても、親として子を守りたい気持ちは、残り続けるものです。
その心を受け取ることもまた、親を親として尊重することつながるのではないでしょうか。