「なぜこれくらいやってくれないの?」ホームヘルパーに「できること」「できないこと」

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「なぜこれくらいやってくれないの?」ホームヘルパーに「できること」「できないこと」

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

セコムケアステーションみなとの清水なおみさんと、セコムケアステーション鎌倉の前田亮さんに聞きました。在宅介護で多くの方が利用している「訪問介護サービス」。
要介護者の日常生活をサポートしてくれるのがホームヘルパー(訪問介護員)です。

ホームヘルパーは要介護の方が自立した日常生活を送るために必要な介助を行います。
家のなかのさまざまなことに対応してくれる頼りになる存在ですね。しかし、なかには「ホームヘルパーに用事を頼んだら断られた」「サービスの融通が利かない」と不満を抱くケースが散見されます。

実は、ホームヘルパーには「できること」が決められています。
ホームヘルパーに対応できることは、介護保険制度によって制約されているのです。
ホームヘルパーに「お願いしてできること」「お願いしてもできないこと」を知っておけば、介護保険制度による制約のなかでも多様性のある対応をしてもらうことができるようになります。

今回は、セコムケアステーションみなとの管理者・サービス提供責任者である清水なおみさんと、セコムケアステーション鎌倉の管理者・サービス提供責任者である前田亮さんに話を聞きました。
ホームヘルパーが「できること」「できないこと」の違いや、断られた場合の代替方法について聞きます。

● ホームヘルパーにできるのは「自立した生活に必要なこと」のみ
介護保険制度のなかで定められている、訪問介護サービスは、大きく「身体介護」と「生活支援」に分けられます。

身体介護とは、身体に直接触れる介護のこと。
食事、入浴、排せつなどの介助がこれに該当します。

生活支援とは、日常生活に関わる家事全般のこと。
食事の調理、買い物、掃除などがこれに該当します。

大事なポイントは、「本人にまつわる」「日常生活に関する」ことしか対応できないということ。

清水さんがホームヘルパーにできないことを、具体例を挙げながら教えてくれました。
ホームヘルパーは、日常生活の範囲であれば対応可能です。「訪問介護は、自宅で暮らす要介護の方の日常生活を支えることを目的としたサービスです。それ以外のことには対応できません。
たとえばペットのお世話、植木の手入れ、ご家族分の料理などは、ホームヘルパーがお手伝いすることはできないのです。
"日常生活"の範疇を超えることにも対応できません。
ご本人の生活スペースのお掃除は対応できます。
でも、ふだん使っていない部屋の掃除は対応できません。
ときどき『お酒やたばこを買ってきてほしい』と頼まれることがあります。
嗜好品は日常生活を支障なく送るための必需品ではないため、ホームヘルパーがご本人に代わって嗜好品を買うことはできません」

前田さんも、介護保険制度の制約について続けます。
「ご利用者の方からしたら、ついでにやってくれても...と思われるかもしれませんが、介護保険制度のなかで、『できること』と『できないこと』が決められています。
訪問介護は、在宅介護の人にしか提供できないサービスです。
誰もが受けられるサービスではありません。自立のためのケアであることをご理解いただきたいと思います」

ホームヘルパーはお手伝いさんや家政婦ではなく、介護の専門知識を有したプロ。
訪問介護にかかるお金は、介護保険制度のなかで多くを賄われていて、ご利用者は一部負担でサービスを享受しているということも、心に留めておきたいですね。


● ホームヘルパーにできることは「ケアプラン」で決められている
介護保険制度のなかで定められた「身体介護」と「生活支援」に該当することであっても、訪問介護サービス利用者なら、すべて対応してもらえるわけではありません。
ホームヘルパーが何をするかは、ケアマネジャーが考えたケアプランで決められています。
ケアプランにないことは、頼まれてもやってはいけないことになっているのです。

しかし、ホームヘルパーとして頻繁に通っていると、ケアプランにない支援の必要性に気づくこともあるそうです。利用者様の日常生活を近くで見ているホームヘルパーだからこその視点だと思います。
利用者様の日常生活に気がかりなことがあったときは、どうしているのでしょうか。

「ケアプランにない要望や困りごとが出てきたときは、利用者様の身体状態が変化しているということです。
ホームヘルパーは現状を観察してケアマネジャーに伝え、ケアプランそのものを再検討してもらういます。ケアプランが変更されれば、ホームヘルパーは『できる』ようになります」と清水さん。

前田さんも、ケアプランは必要に応じて変化していくものだと強調します。
「在宅介護では、ホームヘルパーがお宅に伺う訪問介護だけではなく、通所介護、ショートステイ、訪問看護、福祉用具などのサービスを組み合わせて利用している方が多いと思います。
もし、ご本人の身体の状態に変化があれば、訪問介護だけではなく、他のサービスの専門職からも意見を聞かなくては、適切なケアプランはできません。
定期的に担当者会議を開いて、短期目標、長期目標を設定し、ケアプランを変えていく。ケアマネジャーは情報をまとめ、総合的に判断して、ケアプランを見直していくのです」

どのような助けがあれば、要介護者が自立した生活を送ることが可能になるのか。
それが、ケアプランの肝となる部分です。
多様なサービスを組み合わせて、ご本人のできなくなったことを、再びできるように改善させること目指します。

在宅介護を最適化していくためにも、その場しのぎの安易な対応はしない。
きちんとしたプロセスをふまえて、自立支援につながるケアに反映してくれるのが、良いホームヘルパーではないでしょうか。


● 良いホームヘルパーは「とことん寄り添う」
訪問介護が提供できるサービス内容は、介護保険制度のなかで非常に細かく決められています。
しかし、ホームヘルパーは利用者様の日常生活に深く関わるので、「できること」「できないこと」の境目があいまいになりやすいのも事実です。
目の前で、本当に困っている様子を見たら、どのように対処しているのでしょうか。

「ホームヘルパーの対応範囲について話すと、『できないこと』が強調されがちです。でも突き放しているわけでは、まったくありません。
どうしたらご本人が目の前の困りごとを解決できるのか、"自立支援"という介護保険制度の理念に基づいて、対応するにはどうしたら良いかを考えます。
たとえば、ごみの分別がわからなくて困っていたら、『一緒にやりましょう』と声をかけてお手伝いする...といったことはありますね。
ご本人がひとりではできないことを、できるように手助けしたり、声がけをしたりするのは、自立支援につながるケアのひとつです。
その場で適切な解決方法が見つからないこともありますが、その場合は一度持ち帰って事業所内で検討する。できるだけご希望に寄り添うことを心がけています」と清水さん。

ご本人が主体的に行うことを、できるようお手伝いするのは「自立支援」。
利用者様が「ご家族のために、ご飯をつくってあげたい」という気持ちがあるなら、寄り添って実現する方法を模索するのもホームヘルパーの仕事のうちです。

「できません」と断るのではなく、「どうしたらできるか」を一緒に考えてくれるホームヘルパーは、きっと良いホームヘルパーだと思います。

どんなことをお願いされても「できない」と突き放すことはありません。できる方法を考えます。「ホームヘルパーは在宅介護の専門職で、日常生活を見るのが仕事。
それ以外のことで専門知識があるわけではありません。
ご本人が困っていることの解決方法が我々の知識や技術を超える場合は、どこに相談すれば良いのかを教えることができます。
たとえば、使っている電化製品が故障したときは、カスタマーセンターなど問い合わせ先を調べて教えてあげる。
自立支援ではなく、純粋な家事のお手伝いを望んでいるなら、100%自費負担の有料介護サービスを紹介する。
どんなお願いごとをされても、その場で『できません』と突き放すことは、ぜったいにしません。困りごとを解決する道筋は必ずつくります」と前田さん。

頼んだら何でもやってくれるホームヘルパーが、良心的だというわけではありません。
訪問介護サービスを利用するのは何のためなのか、目的を思い出してください。

なるべく人の手を借りず、自宅で、自分で、自分らしく暮らしていく。
何でもやってあげていたら、身体機能も認知機能も衰えてしまいます。
ホームヘルパーを「不親切」だと感じることがあるかもしれません。
でもそれは、ご本人を思えばこそ。在宅介護で、心から信頼できるホームヘルパーさんと巡り合えることを願っています。

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次回は、ホームヘルパーとどのように付き合えばいいのかをお聞きします。
在宅介護サービスを利用して、自分でできることを増やす方法もお聞きしましたので、お楽しみに!

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