介護が不要に!?自立した生活を取り戻すために利用者がすべきこと

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介護が不要に!?自立した生活を取り戻すために利用者がすべきこと

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

セコムケアステーションみなとの清水なおみさんと、セコムケアステーション鎌倉の前田亮さんに自立した生活を取り戻すための具体的な方法を聞きました。介護が必要になると、今までできていたことができなってしまう場合があります。
「やりたいのにできない」状況は、ストレスと同時に、喪失感や無気力感をもたらすものです。
だんだんできないことが増えていく親御さんやパートナーの姿を見るのは、介護する家族にとってもつらいことでしょう。

しかし、人間の力とはすごいもので、介護生活のなかで希望を見いだし、自分がしたい行動や生活スタイルを再び取り戻す要介護の方を、訪問介護の現場でたくさん見てきました。
要介護になることは、そこが終着点ではなく、出発点になることもあるのです。

では、いったいどうしたら自分らしい暮らしや生き方を取り戻すことができるのでしょうか。

今回も引き続き、セコムケアステーションみなとの管理者・サービス提供責任者である清水なおみさんと、セコムケアステーション鎌倉の管理者・サービス提供責任者である前田亮さんに話を聞きました。

前回は、訪問介護でホームヘルパーに何をしてもらえるかをまとめましたが、今回は、ホームヘルパーをはじめとする訪問介護スタッフの力を借りて、できることを増やし、自立した生活を取り戻すための具体的な方法をまとめます。

● 自分にとっての「ゴール」を持つことの大切さ
介護がはじまったばかりのときは、ご本人もご家族も混乱しているものです。
これからどうすれば良いのか、わからない。
わからないから、ケアマネジャーの言うとおりにするしかない。
現状に不安やもどかしさを感じながらも、提示されたケアプランをそのまま受け入れている方は少なくありません。

ゴールをどこにするのか自分で決めることが大切です。しかし、清水さんは「ゴールはどこなのかを、自分で決めることが必要」と言います。
「将来的にどういう生活が送れるようになれば良いのか。
それを考えるのは、介護サービス側ではありません。こんなことがやってみたいとか、元のように〇〇ができるようになりたいとか、ご本人の気持ち優先です。ケアプランの目標を立てないと、ご本人らしさとかけ離れた介護生活になってしまう可能性があります。
『先々のことはケアマネさんやヘルパーさんが考えてくれるから』と思っている方も多いのですが、私たちの本当の仕事は、利用者様の目標をお手伝いすることなのです」。

前田さんも続きます。
「たとえば、排泄(はいせつ)なら、誰の手も借りずにトイレを済ませられるようになりたいといったことです。入院生活が長く、退院してからも寝ている状態が続いておむつで排泄(はいせつ)していると、『もうトイレには行けないんだ』と思い込んでしまう。
でも、そんなことはありません。
トイレに行きたい気持ちがあるなら、実現する方法は必ずあります」。

今はできなくても、もう一度やってみたいこと、できるようになりたいこと。
そんな、ご本人にとっての目標を持ちましょう。
在宅介護生活は、そこからが本当のスタートです。


● 言えば叶う!?あきらめていたことを再びできるようにするには
「ふつうのごはんを食べたい」
「ゆっくり家のお風呂に入りたい」
「旅行に行きたい」
今は途方もないことに思えても、あきらめてしまえばそこで終わってしまいます。
実現を阻むのは、ご本人や周囲の「もうできない」という思い込みであることも多いのです。

専門家が適切にサポートすれば、できるようになります。「ホームヘルパーをはじめ、介護の専門家が適切にサポートすれば、きっとできるようになる」と話すのは前田さん。

「利用者様にとっての目標が明確なら、私たちホームヘルパーはそれを実現するための介護計画を考えます。
計画に基づいて介護を続け、利用者様がどのように変化していったかを見て、課題があれば改善策を考える。このようにして、目標到達までサポートし続けます。
目標を達成したら、また次の目標に向けて介護計画を立てて...と繰り返していきます。
介護がはじまった当初では想像もつかないくらい、自立した暮らしを取り戻した方はたくさんいます」。

他のサービスに比べて利用者と関わる機会が多いホームヘルパー。
話せる機会が多い分、やりたいことがあればどんどん言ってほしいと清水さんも強調します。

「訪問介護を続けていくなかで、身体の状態が改善したり、できることが増えていったりすると気持ちの在り方も変わっていくと思うのです。
介護サービスを使っていて心境が変わったときはその都度、言ってください。
『今、受けている介護サービスを使ってきて、こういう変化があって、今度はこうしたいと思っている』などと伝えてもらえれば、それにあわせて介護サービスも変えていくことができます。
訪問介護だけではなく、リハビリや福祉用具など、他の介護サービスも含めて最適なケアプランを立て直し、また新たな目標に向かっていくことができます」と清水さん。

理想は、自立した生活を取り戻し、介護が必要ではなくなること。
ゴールの先に次のゴールを持ち、常にその先を目指し続ければ、理想も夢ではありません。


● 不満はがまんせずホームヘルパーに伝える
訪問介護を受けている方のなかには、「やってもらっている」という遠慮から、サービスに不満があっても黙っている利用者様もいらっしゃいます。

しかし、「がまんしても、良い結果にはならない」と清水さん。
「嫌だと思うことや、困ったことがあれば、むしろ言ってもらったほうが良いです。
たとえば、ホームヘルパーが帰ったあとに閉めてもらったペットボトルのフタが固くて開けられなくて困ったとか、布団のセットの仕方が気に入らないとか、小さなことでも大丈夫。
他の人から見れば大したことではなくても、ご本人にとっては大事なこと、ゆずれないこだわりもあります。
ご自宅で自分らしく、尊厳を持って暮らしていくために必要なことならば、できるだけ寄り添うのがホームヘルパーの仕事。気に入らないことは、気に入らないとはっきりおっしゃってくれた方が、私たちもやりやすいのです」。

「違う方法をご提案することはあります。
たとえば、片麻痺があって、ベッドから移動するときはこっちの方法の方がラクですよといったこと。でも決して無理強いはしません。
意見を聞き入れる、入れないことを選ぶのも、利用者様が自分らしく生きるための権利ですから。
これまでのライフスタイルを変えるようなやり方を押し付けてくるホームヘルパーなら、断ったり、事業所を変えたりしたほうが良いかもしれません」と前田さんも言います。


● これだけは教えてほしい!最適な訪問介護サービスを受けるために必要なこと
清水さんと前田さんの話からもわかるように、ご本人が不快な思いをしないためにも、ホームヘルパーに遠慮なく話して、多くの情報を伝えておいた方が得策です。
たとえば...と清水さんがこんな話をしてくれました。

「ホームヘルパーは一緒にいる時間が長いので、ご本人が触れてほしくないことがあれば、教えておいていただけるとありがたいですね。
たとえば若いときの話はタブーだとか、息子さんの話はしないでほしいとか...。
人生のなかでいろいろな過去があるのは当然です。不用意に傷つけたり、信頼関係を損ねたりすると介護生活の妨げになりかねません」。

「ご本人のことだけではなく、ご家族の話をしてくださることも、ホームヘルパーにとっては重要な情報になります。
今、感じている不安や苦しさ、介護の大変さ、仕事のグチ...そのときの気持ちをぜひ共有してください。
話を聞いてもすべては理解できないし、苦しみの根源を取り去ることはできないかもしれません。それでも、話を聞いた分だけ、どんな支援ができるかを考えることはできます。
なんでも相談してください。そのほうが、必ず良い介護につながりますから」と前田さん。

ホームヘルパーは、介護のプロであると同時に、ご本人とご家族の一番近くで支えになってくれる存在です。
ご家族に事情があれば、ご家族の生活も含めて、最良の方法を一緒に考えてくれます。
頼りにしてもらった方が、良い関係性のもとで良いケアをすることができるのです。

ホームヘルパーに対する見方が少し変わった...という方は、ぜひいろいろな話をしてみてください。
利用者側から伝えられた「話」のひとつひとつが、「自立支援のための介護」の役に立ちます。


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