要介護者だけじゃない!?尿失禁の不安を改善する方法

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要介護者だけじゃない!?尿失禁の不安を改善する方法

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

セコム在宅総合ケアセンター久我山 セコム訪問看護ステーションくがやま 朝子ひろ子所長にコンチネンスケアについて話を聞きました。尿失禁は、要介護状態にある高齢者の方特有の問題ではなく、若いころから起こりうるもの。
くしゃみをしたときなどの「ちょいもれ」は、介護する側の方でも経験したことがある方が多いのではないでしょうか。

尿失禁に早めに向き合うことで、年齢を重ねてからの失禁の心配を減らすことができます。
もちろん、高齢の要介護者の方でも、改善することは可能です。

その方法が、前回からお届けしている「コンチネンスケア」。
コンチネンスケアの考え方では、尿失禁を起こしている原因をきちんと見極めて、正しく対処することが重要視されます。

今回は、尿失禁をもたらす排せつ障害の種類や、対処方法についてまとめました。
コンチネンスケアの専門家である、セコム在宅総合ケアセンター久我山 セコム訪問看護ステーションくがやまの朝子ひろ子所長に学びます。


● 尿失禁の改善は症状の見極めから。4つの原因とそれぞれの対処方法
「尿失禁にもいろいろなタイプがあります」と朝子所長。
タイプは4つ。それぞれ対象方法を聞きます。

尿失禁のタイプは主に4つ。それぞれ対策が異なります。タイプ1)腹圧性(ふくあつせい)尿失禁
「腹圧性(ふくあつせい)尿失禁とは、くしゃみをしたときや重いものを持ったとき、ジャンプしたり小走りをしたりしたときなど、お腹にぐっと力がかかると尿がもれるものです。妊婦さんや出産経験がある方がなりやすいと言えます。
原因は、骨盤底筋という筋肉がゆるんでいること。
女性に多いですが、男性でも前立腺肥大症の手術のあとなどになることがあります。
骨盤底筋は加齢や出産でどうしてもゆるんでしまうものです。
骨盤底筋を鍛える体操があるので、ご高齢の方でも、骨盤底筋体操をすれば改善効果は得られます。尿がもれない状態を保つことができるようになるのです。
若いうちから意識して鍛えておくと、予防になりますよ」

タイプ2)切迫性(せっぱくせい)尿失禁
「切迫性(せっぱくせい)尿失禁は、膀胱(ぼうこう)に尿がそれほどたまっていなくても、急に強い尿意を感じる症状。
尿意を感じた瞬間に、もう我慢できないくらい差し迫っています。
原因は、膀胱(ぼうこう)の急激な収縮によるもの。これば病気の症状の一種ですので、悩んでいる方は、病院に行くのが一番良い方法だと思います。
服薬や、医師による生活指導や膀胱(ぼうこう)訓練などで改善可能です」

タイプ3)溢流性(いつりゅうせい)尿失禁
「溢流性(いつりゅうせい)尿失禁は、何かしらの原因で尿道の出口がふさがれてしまい、膀胱(ぼうこう)に尿がたまっていても、自分の意志では出すことができず、少しずつあふれ出てしまうような症状です。
男性の場合、前立腺肥大症がきっかけになることが多く、女性なら子宮がんや直腸がんなどの術後になることがあります。
放っておくと、尿が腎臓に逆流して命にかかわりますので、出にくいと感じるときは、一刻も早く泌尿器科にかかって適切な治療を受けることが必要です」

タイプ4)機能性尿失禁
「もうひとつは、機能性尿失禁と呼ばれるものです。
歩行が困難でトイレに行けない、認知機能の低下によってトイレで排せつできないなどの状態を指します。身体の機能の問題なので、対処方法は人それぞれ。
トイレの近くにベッドを移動するとか、夜間だけポータブルトイレを使うとか、手すりを設置するとか、できるだけトイレにスムーズに行ける住環境を整えることで改善できます。
認知症の方の場合も、適切なトイレ誘導とおむつの併用などで、トイレの失敗を減らすことは可能です」

尿失禁の原因が違えば対策もそれぞれ異なるということ。
トレーニングで軽減できるもの、病院での治療が必要なもの、あるいは福祉用具や介護用品で改善できるものがあるのです。

「トイレの失敗が多い」からとおむつに頼るのが、必ずしも適切な排せつケアとは言えません。
まずは、どんなときに尿失禁をするのかをよく観察して、ご本人からも話をよく聞いてみましょう。
尿失禁の原因を見極めれば、適切な対策ができ、問題解決につなげることができるのです。


● 失禁予防には「骨盤底筋体操」を
腹圧性尿失禁の改善方法として、朝子所長が紹介してくれたのが「骨盤底筋体操」。
骨盤底筋は、足と足の間にあって内臓の重みを支えている筋肉ですが、尿道や肛門の開閉にも関わっています。
骨盤底筋を鍛えることは、腹圧性尿失禁だけではなく、失禁予防全般に役立つそうです。
骨盤底筋体操の方法をご紹介しましょう。

<骨盤底筋体操>
(1) 腹式呼吸や軽い準備体操で全身をリラックスさせる。
(2) 肛門、尿道、膣をギュッと力をいれて締めて、次に緩める。これを10回繰り返す。
(3) (2)と同じようにギュッと締めて、力を入れたまま3~5秒間キープし、3~5秒間かけてゆっくりと力を抜き緩める。これを10回繰り返す。

「ポイントは、毎日続けること。
上記を1セットとし、1日4~5セット朝、昼、夕、寝る前などのように分けて行いましょう。
骨盤底筋は疲労する筋肉なので、一度にがんばりすぎても成果がでません。
1日4~5回、毎日行うことが肝心です」と朝子所長。
骨盤底筋体操を日課にするためには、介護生活のスケジュールに組み入れておくのがおすすめです。ケアマネジャーにも相談して、ヘルパーなど外部のスタッフが訪れているときも、時間に合わせてトレーニングできるようにしておくと良いですね。

継続するのは根気がいりますが、骨盤底筋体操の良いところは、やる場所を選ばず、訓練している様子が誰から見てもわからないこと。
台所に立ちながらでも、座ってテレビを見ながらでも、トレーニングできます。
立っていることが難しい要介護の方なら、ベッドに寝た状態でも、車いすに座った状態でも大丈夫。
いつでも、どこでも、手軽にできるトレーニングなので、介護されている方はもちろん、介護している方も一緒にやると、お互いに励みになるかもしれませんね。



● 力の入れ方がポイント!「骨盤底筋体操」のコツ
骨盤底筋体操は誰でもできる簡単で手軽なトレーニングですが、慣れていないと、肛門や尿道に力を入れる感覚がつかみにくいのが難点。
朝子所長にコツを聞いてみました。

「おしっこを途中で止めたり、おならを我慢したりする感覚。
最初は余計なところに力が入ってしまいがちですが、感覚をつかめば日に日に力が入りやすくなるのが実感できると思います。
また、息を止めないために、『1、2、3...』と声に出してカウントすると良いですよ。
上手になると、会話をしながらでも、骨盤底筋を引き締められるようになります」

朝子所長によれば、うまく引き締めることができれば、2週間くらいで効果があらわれるとのこと。
骨盤底筋体操を3カ月くらい実施すると、腹圧性尿失禁なら3人に2人は改善するそうです。
効果が感じられない場合、力の入れどころが間違っているのかもしれないので、理学療法士や作業療法士など、リハビリの専門家に聞いてみましょう。姿勢や、力の入れ方などを教えてもらえるはずです。

最後は、朝子所長のメッセージで閉めたいと思います。

「どんな状態でもあきらめないで!とひとりでも多くの方にお伝えしたいです。
本来ならば、私のような看護師や、介護士、ケアマネジャーなど、介護に関わるすべての人たちが、排せつの正しい知識を持ち、コンチネンスケアが広がるのが理想です。
実際はまだまだそうではなく、悩んだり、あきらめたりしている方が多いと思います。
日本コンチネンス協会では、排せつに関する困りごとの相談窓口を設けています。
ぜひ気軽に相談してくださいね」

日本コンチネンス協会
排泄の困りごと110番 相談窓口
TEL:050-3786-1145
http://www.jcas.or.jp/faq.html#denwa

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【コンチネンスケアについて】
在宅介護の排せつの悩みを軽減!コンチネンスケアにヒントあり

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