自宅での「看取り」は本当にできる?

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自宅での「看取り」は本当にできる?

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

自宅での看取りをテーマに「セコム訪問看護ステーションくがやま」の小川幸子さん(写真右)と、「セコムケアステーション千歳烏山」の山内麻衣さん(中央)に話を聞きます。「どこで、どのように最期を迎えるのか」。
介護の先にある避けられないテーマです。

「住み慣れた自宅で最期を迎えたい」と希望する方が多い一方で、看取る側のご家族からは「できない」「かなえてあげたいが難しい」という声がよく聞かれます。

「できれば本人の希望をかなえてあげたいけれど...」と少しでも思うようなら、「自宅での看取り」に対する不安や疑問と向き合って、実現する方法を考えてみてはいかがでしょうか。

今回から3回にわたって、「セコム訪問看護ステーションくがやま」の副所長である小川幸子さんと、「セコムケアステーション千歳烏山」の管理者である山内麻衣さんにお話を聞きます。
訪問看護師と訪問ヘルパーとして、何度も「自宅での看取り」に立ち会ってきました。

初回は、介護家族の「看取り」に対するよくある疑問や誤解について聞いていきます。
自宅で最期を迎える場面でどんなことが起きるのか、そのとき看取る側はどうしたら良いのか、詳しく見ていきましょう。

● 介護家族はなぜ「自宅では看取れない」と思うのか
武石:おふたりは、在宅看護・介護の現場経験が豊富で、看取りに対するご家族の不安や葛藤もよくご存じですね。ご家族はどんなことを心配しているのでしょうか。

小川:まず、「家では病院のような処置ができない」と思っている方が多いです。
何か起きたとき家では対処できないと考えてしまうようです。
また、いつ息を引き取るかわからないから、ずっと枕元に付き添っていなくてはならないのではないか?と思い込んでいる方も結構います。
家庭や仕事があれば、それは難しいですよね。ですから、「自宅での看取りはできない」と思い込んでしまうようです。
でも、実際は、ずっと枕元に付き添っていなければならないということはありません。


武石:入院中のような24時間体制の医療と比較したら、自宅での看取りは負担が大きすぎると感じても、無理はありませんね。

小川:積極的な延命や救命を望まない限り、息を引き取る間際にできることは、病院でも自宅でも大差はありません。
必ずしも医師が死の瞬間に立ち会う必要はありませんし、亡くなってから医師に連絡しても問題ないのですが、「医師の前で亡くならないと、異常死の扱いになって警察が来てしまう」と誤解している方も少なくありません。
自宅で看取ると決めてからも、ずっとそばで見守り続けて、眠れなくなってしまうご家族も多いです。

山内:ひとり暮らしの方でも、ご本人が希望すれば自宅で最期を迎えることは可能です。
訪問看護やヘルパーが1日の間に何回か訪問をした時にケアをして、人がいない間に亡くなった場合は、見つけた方があとから医師に連絡します。
在宅医療に対応している医師と連携がとれていれば、息を引き取ったあとにスムーズに「死亡診断書」を書いてもらうことができるのです。


● 「死」という未知のものに対する怖さとどう向き合うか
武石:看取りを視野に入れた介護に対して、「大変そう」「自分にはできない」というイメージを持っている方が多いことは理解できました。
ほかにはどんなことが問題になるのでしょうか。

山内:「死」に対する漠然とした恐怖心もあると思います。そのときが近づいたとき、どんなことが起きるかわからないし、何をしてあげれば良いのかもわからない。
苦しそうな姿を見るのが怖いから、病院で見てほしいとおっしゃる方は多いですね。
「眠っているときにスーッと逝くのであれば、見られるのだけれど...」というご家族もいらっしゃいました。

武石:人が亡くなる場面に立ち会うことは、そう何回もあることではないですからね。
看取りに対して不安や恐怖を感じている方に、どのように話すのでしょうか。

小川:亡くなる前の体の変化を、具体的にご説明します。たとえば、呼吸が不規則になって苦しそうに見えますが、知識がなければ「なんとか楽にしてあげられないか」と考えてしまうと思います。
だけど、旅立つ前は誰でもそのようになるもので、見守ることこそが唯一ご家族がして差し上げられることです。それは病院でも在宅でも同じことです。
ほかにも、「こういう変化が起きますけれど、自然なことです」とお話して、理解してくださると、「それなら看取れます」というご家族もいらっしゃるんです。
看取りに対応している事業所では、旅立ち前の変化や心構えをわかりやすくまとめたパンフレットを用意していますので、一度目を通していただくと「看取り」のイメージが湧くかもしれませんね。


● 自宅での「看取り」は特別なことではない
自宅での看取りは、決して特別なことではありません。武石:「看取り」が具体的に何をすることなのか、イメージできない方も少なからずいるようですね。

山内:私たちヘルパーは在宅介護では身近な存在なので、ご家族から本音を聞くことが多いのですが、ご主人を介護していた女性から「病院と同じような治療をしてもらえると思っていたのに、なぜやってもらえないのかしら」と言われたことがあります。
看取りに対する理解が不十分なまま入院先から自宅に戻ってきてしまうケースもあるのです。

武石:寿命がつきて死を迎えることは、自然なことなのに、医療が発達した現代では、「死は抵抗しなくてはならないもの」「戦わなくてはならないもの」と刷り込まれている側面があるように思います。
だからご家族も「少しでも長く生きてもらうために、何かしなくてはならない」という使命感と責任を感じてしまうのかもしれませんね。

小川:そうですね。
「自宅での看取り」は、家で病院と同じような治療を行うことではありません。
特別なことをすることではなく、日常の営みの中で自然に死を受け入れることだと思います。
今の介護保険では、看取りのために必要な医療や看護、介護のサポートが安心して受けられるようになっていますから、仕事を持っていて忙しい方でも、自宅で看取ることは可能です。
必要なのは、「死は自然なことだから、そのときが来たら受け入れる」という覚悟。
死が逆らうものではなくなれば、誰でもご自宅で不安なく最期を迎えることができます。
看取りのためにご自身の生活を変えたり、仕事に支障をきたしたりすると大きな負担になりますが、たとえ自分が不在のときに旅立たれても、「それも自然なことだ」と受け入れられることができれば、看取りは決して大変なことではなく、穏やかに最期のときを過ごすための時間にもなりうるのです。
御本人、ご家族ともにひとりきりで旅立ちたくない、旅立たせたくない、積極的な治療や延命措置をして寿命を少しでも永らえてほしい...と考えている方には、自宅での看取りは向いていないかもしれません。
24時間体制の施設や病院を選ぶほうが安心できると思います。

武石:看取りに対する考え方は人それぞれで、ご本人の希望もありますからね。
自分たちの想いや価値観にあわせて、いろいろな選択肢の中から「どこで、どのように最期を迎えるか」を選べることが大事だと私も思います。

小川:もちろん全ての方に自宅での看取りを推奨するわけではありませんが、ご本人が希望していて、ご家族が少しでも「かなえてあげたい」と思うなら、必ず実現できる方法はあります。
どうか諦めないでいただきたいと思います。


次回は、自宅で看取りを考えている方が具体的にどんな準備をすれば良いのか、さらに深く聞いていきたいと思います。

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