在宅介護のミカタ!薬剤師さんとの付き合い方
こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。
ご高齢で在宅介護を受けている方の多くは、複数の慢性疾患によって、何種類もの薬を服用していることが多いです。
たくさんの薬を毎日正しく飲み続けるのは、簡単なことではありません。
「薬が飲み込みにくい」「量が多くて飲むのが大変」「うっかり飲み忘れてしまう」...など、薬に関するお悩みが何かしらあるのではないでしょうか。
薬のことは、薬の専門家に聞くのが一番だと思います。
今回から3回にわたって、セコムグループにおいて医療サービスを展開している、セコム医療システム(株)の岡田和晃(かずあき)薬剤師に、在宅介護と薬の問題についてお話を聞きます。
岡田薬剤師は、調剤薬局に立つ一方で、在宅療養中の患者さんに薬の正しい使用をサポートする訪問薬剤師サービスにも従事していて、介護現場における知識も豊富です。
初回となる今回は、薬や薬剤師さんとの付き合い方について聞きました。
薬剤師は在宅介護の心強いサポーターです。
専門家ならではのお話を分かりやすくご紹介していきますので、ぜひ最後までお読みください。
● 「薬」を毎日決まった時間に飲むことは簡単ではない
在宅介護を続けていくためには、正しく薬と付き合っていくことがとても大切です。
ご本人の自覚や努力はもちろん、介護する方の手助けが必要な場合もありますが、薬に関するお困りごとには解決できないことも多く、在宅介護における課題のひとつにもなっています。
手に麻痺(まひ)があって、薬のパッケージをうまく開けられない方。
飲み込みに問題があるため、薬が口に残ったりむせたりして、飲むのに苦労している方。
薬を飲んだかどうか、わからなくなってしまう方。
自己判断で薬を中止してしまう方や、「飲みたくない」と薬を拒絶する方、など。
きちんと決められた方法で薬を飲み続けるのは、とても難しいことだと思います。
岡田薬剤師も、在宅療養中の要介護者の方の実情をこう語ります。
「高齢者の方はお薬の量が多いこともあって、実際はきちんと飲めていない方がいらっしゃいます。けれども、薬は正しく服用しないと、期待する効果が得られないばかりか、副作用が出てしまうこともあります。
健康維持や身体の状態に直結するものですから、在宅療養の方ほど、薬剤師のサポートが必要だと思います。
薬を飲めない理由は人それぞれですが、患者さんの生活に寄り添って改善方法を考えるのも、私たち薬剤師の大事な仕事だと考えています。
病院や薬局等でお薬を受け取るとき、薬剤師から『きちんと飲めていますか?』と聞かれたことはないでしょうか。それも患者さんの服薬(ふくやく:薬を飲むこと)状況に問題がないか、確認しているのです。
在宅介護での服薬管理の難しさは、薬剤師もよく理解しています。
『飲んでいない』と言えずに隠してしまいがちですが、医療者は皆さんの体調を薬で管理しています。誤った情報は、その後の治療に影響を及ぼす可能性もありますから、なぜ飲めないのか、忘れてしまうのかなども含め、どうぞ遠慮なく相談してくださいね」
薬剤師の役割は、薬の説明や飲み方を教えるだけではありません。
患者さんの健康に関わり、「どうしたらいいか?」を患者さんの立場で考えてくれる存在なのですね。
● 薬剤師はいちばん身近な医療者
さらに薬剤師は、患者さんと医師の仲介役でもあると岡田薬剤師は言います。
「患者さんの状況にあわせ、薬剤師からかかりつけ医、主治医に相談して、薬の種類の変更や、薬を減らせないか提案します。
高齢者の方の場合、複数の医療機関を受診していたり、服薬が長期にわたっているため、時にはなぜその薬を飲んでいるのか不明瞭なケースもあります。
『薬の量が多くて大変』という場合は、ひとまず薬剤師に相談してください。
また、たとえば『この薬を飲んでから、調子が悪い』とか『薬が効いていないような気がする』といったことは、医師には言い出しにくいといった経験はありませんか。
本当に薬が原因なのか確信が持てないし、医師に聞いたら失礼だと思ってしまう方も多いようです。
そういうときも、まず薬剤師に相談してください。
薬剤師は、患者さんにかわって薬学的な観点から医師に伝えられますから」
言いにくいことは、まず薬剤師へ。
在宅介護生活のなかで、ご本人やご家族がうまく伝えられないようなことも代弁してくれる医療の専門家がいるのは、とても心強いですよね。
● かかりつけの薬剤師を見つけるには?
在宅介護で薬剤師にサポートしてもらうための方法はいくつかあります。
たとえば、薬剤師が自宅を訪問するサービスを利用すること。
自分で通院ができない、服薬管理が困難などの理由があり、医師が必要と判断した場合には、介護保険も適用されます。
薬剤師訪問サービスを利用しなくても、普段お薬をもらっている薬局を利用する方法もあります。
岡田薬剤師はこう話します。
「あちこちの薬局に行くのではなく、かりつけ薬局を持つことをおすすめします。
体質や症状を説明しなくてもわかってくれ、適切なアドバイスをもらうことができると思います。
薬局では薬剤師を指名することもできますから、まずは気軽に薬剤師に話しかけてみてください。たとえば、
・薬のことをきちんと説明できる
・その薬について自分の見解も教えてくれる
・話をじっくり聞いてくれる
このような薬剤師なら、何でも相談しやすく、介護生活のなかでも頼りにできると思います。
適切なサポートを得るためには、これまでの副作用や服用歴、日ごろの健康状態・生活パターンなど、包み隠さずに伝えることがポイントです。
薬に関することだけではなく、体調面で気になることや健康管理のことなど、気軽に何でも聞いてください。
在宅介護のパートナーとして、薬剤師をどんどん活用してほしいですね。
心を許せる、何でも話せる薬剤師をぜひ見つけてください」
岡田薬剤師へのインタビュー第1弾、いかがでしたでしょうか。
次回は、在宅介護生活の服薬管理について、具体的な対策やアドバイスを聞きます。