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「端坐位(たんざい)」と「つかまり立ち」で在宅介護生活はもっと広がる

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

つかまり立ちができれば車いすへの移乗も楽になります。端坐位(たんざい)とつかまり立ちが「できる」か「できない」かでは、在宅介護のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)が大きく変わってきますし、介護する方の負担も大きく異なります。

前回お伝えしたように、排泄(はいせつ)の自立においても、端坐位(たんざい)とつかまり立ちが「できる」か「できない」か、大きな分かれ目です。

今回は、端坐位(たんざい)とつかまり立ちがなぜ在宅介護生活で重要なのか、どうすればできるようになるのかなどをまとめます。

● 「端坐位(たんざい)」と「つかまり立ち」ができると可能になること
端坐位(たんざい)とつかまり立ちは、排泄(はいせつ)の自立に不可欠です。
端坐位(たんざい)を15分維持できれば、誰の手もわずらわせずにトイレでゆっくり排泄(はいせつ)できます。
つかまり立ちが30秒できれば、ズボンの上げ下ろしなどの介助負担が格段に軽減されます。

トイレだけに限りません。
端坐位(たんざい)やつかまり立ちができれば、車いすへの移乗がラクです。
車いすへ乗り移る介助はもっとも負担の高いものの一つですが、つかまり立ちができれば本人も介助者もうんとラクになります。
すこしの間でも端座位(たんざい)ができれば着替えの介助がスムーズにできます。
さらに端座位(たんざい)が安定すれば、車いすに座った姿勢を維持することもできるようになります。
トイレまで移動できますし、食卓まで行って家族とご飯を食べることも不可能ではありません。

車いすで外に出て散歩したり、行きたいところに行ったりすることもできるかもしれません。
日々の楽しみが増えたり、「旅行に行く」など目標を持てたりすることもあるでしょう。

端坐位(たんざい)やつかまり立ちのための身体機能を維持・回復することで、人生の楽しみや喜びが増える可能性があるということです。
「できることが増えた」「やりたいことができた」と感じることは、生きる意欲や笑顔にもつながります。

ほかにも端坐位(たんざい)やつかまり立ちが大きくかかわるのが「離床」です。
離床とは、ベッドから離れること、つまり寝たきりではない状態。

ずっと横たわった姿勢でいると、体力や筋力が衰えて、心肺機能や消化機能、嚥下機能などが低下します。
血流も悪くなるので、認知機能が低下したり、褥瘡(じょくそう 「床ずれ」のこと)ができたりすることもあります。

しかし、離床して座ったり、立ったりする機会が増やせば、これらのリスクも軽減。
背中がベッドについた寝た姿勢の呼吸より、背中が後ろから圧迫されない起きた状態の呼吸のほうが、肺がより大きく広がり、全身への酸素供給量が増えます。
体を動かすことで、血液の巡りも良くなります。

在宅介護生活で、「端坐位(たんざい)」と「つかまり立ち」が与えてくれる恩恵は計り知れません。
端坐位(たんざい)やつかまり立ちをできるように、あるいは今より長く維持できるように取り組みましょう。


● リハビリをがんばってもらうための「声かけ」のコツ
リハビリは誰にとってもつらいものです。
「リハビリをがんばらないと寝たきりになるよ」「リハビリしないとずっとおむつになっちゃうよ」など、おどかすような言い方は、意欲を引き出すのに効果的ではありません。

しかし、「ひとりで座れるようになったら、トイレがゆっくりできるよ」「車いすで、行きたいところに行けるかもしれないよ」などと声をかけたら、がんばってみようと思うかもしれません。

端坐位(たんざい)やつかまり立ちができると、着替えや移乗などの介助の負担も軽減されますので、「やってくれると私が助かる」「がんばってくれて、ありがとう」などと伝えるのもオススメです。

「○○ができると、○○ができるようになる」
「○○してくれると、私(家族)が助かる」

意欲やポジティブな気持ちを引き出したいときに、覚えておきたい言い回しです。


● 「端坐位(たんざい)」や「つかまり立ち」の練習のポイント
日常のなかで端坐位(たんざい)の姿勢でテレビを見たり、トイレ介助や車いす移乗のときなどにつかまり立ちの機会を増やしたりするだけでも、良い練習になります。
ただし、ひとりでは転倒の危険がありますので、必ず近くで誰かが見守ってください。

また、急に体を起こすと脳貧血を起こす可能性もあります。
介護ベッドを少しジャッキアップしてしばらく様子を見るなど、段階を経て頭の位置を高くした状態に慣らしてください。
体調が悪いときは、無理は禁物です。

麻痺がある方や安静状態が長かった方などは、体を起こすことそのものが難しい場合もあります。
かかりつけ医やリハビリの専門家、福祉用具の専門家、介護職などに相談して、どのように離床を進めていけば良いかを確認しましょう。

理学療法士や作業療法士など、体の動かし方のプロに関わってもらうと、ご本人にあった体の起こし方や、安定しやすいポジションなども教えてもらえるはずです。
まずは在宅介護での身近な存在、訪問ヘルパーやケアマネジャーに、どうしたら良いかを聞いてみましょう。

ベッドに寝ている時間が長いという方でも、端坐位(たんざい)やつかまり立ちは訓練しだいでできるようになる可能性があります。

ご本人に「もう一度やってみたいこと」や「行ってみたいところ」があるなら、リハビリや日々の練習も目標達成のためのプロセスになります。
ひとつ叶えば、また次の「やってみたいこと」「行ってみたいところ」が見つかるはずです。


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