在宅介護で大切にしたい「起きる」「座る」「立つ」

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在宅介護で大切にしたい「起きる」「座る」「立つ」

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

動かない時間が増えるほど、身体の機能は衰えます。無理なく活動できるような工夫を取り入れましょう。寒い日が続くと、「布団から出たくないな」「動くのがおっくうだな」なんて思うことがありますよね。
年齢を重ねて身体の機能が衰えてくると、動くのがよりつらくなるものです。

要介護者の方ならなおのこと。
座ったり、立ったりといった日常動作でもかなりのエネルギーを要します。
身体も緊張しますし、力も使うので、「できれば動きたくない」と思っても無理もありません。

また、介護する方がなんでも助けてしまうと、「動こう」「自分でやろう」という意欲を失ってしまうことも考えられます。

動かない時間が増えるほど、身体の機能は衰えます。
できるだけ活動を促すことが大切です。

身体を起こす、少しでも動くなどを心がけていると、そこからさまざまな可能性が広がります。
今回は、在宅介護で動くことの重要性や、日常動作の基本である「起きる」「座る」「立つ」を無理なく取り入れる方法などをまとめます。

● 動かない生活がまねく「廃用症候群」とは?
「身体は動かさないと衰える」とは知っていても、麻痺がある方や、寝たきり状態の方の介護ですと、あまり動かない生活スタイルが定着してしまっている方もいるのではないでしょうか。
「危ないから」「時間がかかるから」という理由で、つい手助けをしてしまうこともあるかもしれません。

安静に過ごす生活は、転倒や事故のリスクがない代わりに、身体機能の低下をまねきます。
人間の身体は動くことで機能を維持しているので、動きが停滞すると連鎖してどんどん働きが悪くなってしまうのです。
運動能力が衰えてしまうだけではなく、心身に深刻な不調や病気をもたらす「廃用症候群(はいようしょうこうぐん)」が進行してしまうことが考えられます。

廃用症候群の症状はさまざまです。

・筋力の低下や関節の拘縮(こうしゅく)
筋肉や関節は、使わずにいるとどんどん弱く、固くなっていきますので、動かなければ歩行が困難になりますし、寝ている時間が長くなれば座った姿勢を維持することも難しくなってきます。体幹の筋力が弱くなれば、バランスをとる力がおちますので転倒のリスクも高まります。

・心臓や呼吸器、消化器などの機能低下
心臓が血液を送る機能が低下して、「起立性低血圧(立ち上がった際に頭まで血流が行き届かず、立ちくらみや失神を起こすこと)」になることがあります。
また、肺の機能が弱って肺炎を引き起こすこともありますし、肺が広がらず十分に空気を取り込めなくなることもあります。
動かなければ、腸や膀胱(ぼうこう)の活動も低下しますし、便秘がひどくなったり、膀胱炎を引き起こしたりすることも考えられます。

・床ずれ
床ずれは、動かないために体重がかかる箇所が圧迫され、血流が悪くなったことが原因で引き起こされます。

・脳の機能の低下
自ら動くことが減ると、気力や意欲もどんどん減退します。
頭の働きや感情の動きが鈍くなり、認知力の低下や認知症の発症につながる場合もあります。


介護する方は、こうしたリスクを知った上で、要介護者の方の生活スタイルを見直してみてください。
もちろん無理をさせるのは禁物ですが、少しだけご本人にしてもらうことを増やしたり、ベッドで横になっている時間を減らしたりすることは、できるのではないでしょうか。
寝たきりの方でもあきらめず、残された身体の機能を使ってできることを継続していきましょう。


● 介護生活に「起きる」「座る」「立つ」を意識して取り入れる
「起きる」「座る」「立つ」は人間の基本動作といえます。
麻痺(まひ)や筋力の低下で困難になってしまった場合も、できる範囲で生活に取り入れていくことが大切です。

起きることができなければ「寝たきり」になってしまい、廃用症候群(はいようしょうこうぐん)がどんどん進んでしまいます。
しかし、工夫しだいで寝たきりを防ぐことはできますし、少しずつできることを増やしていくことも可能です。

「起きる」動作で取り入れやすいのは、介護ベッドのリクライニング(ギャッチ)機能を使うこと。
寝たきりの方の場合、背上げだけではずり落ちてしまいます。そのため、先に膝上げをしてお尻の位置を安定させてから背上げを行うのがコツです。ずり落ちを防ぐことは床ずれの予防にもつながります。
また、急に角度を上げると、血流が追いつかずにめまいを起こしてしまいます。
最初は緩やかな角度で5分くらい様子見をして、調子が安定しているならまた少し角度を上げて様子見をする...という具合に、3段階ほどにわけてギャッチアップ(上半身を起こした状態)するようにしてください。
毎日少しずつ時間を延ばしていけるといいですね。心臓も筋力もきっと追いついてくるはずです。天井を見て過ごすより、ぐっと世界が広がります。

ご自分で座ることができるなら、両足をしっかり床について背中を離してベッドのはしに座る「端座位(たんざい)」を意識して取り入れましょう。
端座位ができると、ベッドから背中が離れるため胸部が広がって空気が多く取り込めます。
いろいろな器官の活動が活発になりますし、座って家族とテレビを観る、食卓で食事をする、着替えがスムーズに行えるなど活動の幅も広がります。

端座位になったら足首の関節と膝は90度になるようにして、足裏にしっかり体重をかけることがポイント。これだけで関節や筋肉の訓練になりますし、体幹も鍛えられます。
安定しない場合は、クッションなどで身体を支えるが通常ですが、どちらかの手に握る力があれば、ベッドの柵などを持って倒れないようご自身の体勢を保ってもらいましょう。

少しの時間でも良いので、毎日「自分で保つ」ことを取り入れていくのがおすすめです。
転倒しないよう、背中を支えるなどのフォローができる状態で見守ってあげてください。

2本足で「立つ」ことは、端座位よりもしっかりと足首に体重がかかり、バランスを保つためにさまざまな筋肉が使えます。
歩くのが難しい方でも、ご自身の足で立つことを意識して取り入れることを心がけると、廃用症候群(はいようしょうこうぐん)の予防になります。なにより、立つことができるということは、車いすやポータブルトイレに移動する時、排泄後しっかりとお尻をふき下着を上げる時など、介護の負担がぐっと楽になります。
歩行困難なら、立っている時間をちょっと長くする、歩けるなら、立ち上がったときは必ずちょっと歩く...というようにより多く動くことを意識するのがおすすめです。

立ち上がりの動作は転倒のリスクもありますので、介助する方は理学療法士さんに聞いて無理なく安全に立ち上がりをサポートする方法を覚えておくと良いでしょう。


● 「動きたくない」という方をサポートするコツ
「動きましょう」と言うのは簡単ですが、ご本人にその気がなければどうにもなりません。
身体が衰えてくると動くのがつらいと感じてしまうものなのです。

日常の中に動くことを取り入れていくのがおすすめ。
たとえば、着替えのときは寝たままではなく身体を起こす、歯磨きをするときは端座位の姿勢になるなど、あまり難しくない程度に、日常的なケアの中で「起きる」「座る」「立つ」を意識的に組み込んでいくのです。

用事が終わったらすぐに横になるのではなく、そのままの姿勢でちょっとだけがんばってもらってください。
不安定な方でも、背中を支えたり、適切な場所につかまったりすれば、少し長めに同じ姿勢を保てるはずです。

毎日ちょっとだけ「がんばる」ことを繰り返しているうちに、安定して自分ひとりでもできるようになったり、両手を放しても姿勢を保てるようになったりした方もいます。

「起きる」「座る」「立つ」を日常の楽しみの中に取り入れていくのも良いですね。
好きなテレビ番組はリビングに行って座って見るなど、モチベーションや意欲につながる楽しみを増やしていけば、活動の幅が広がり、動く機会も増えるはずです。

また、伝え方にもコツがあります。
動くのがおっくうに感じている方に、「お風呂に入りましょう」「食卓に行きましょう」と言っても、なかなかその気になってくれません。
そういう場合は、いきなり最終行動を伝えるのではなく、ちょっとずつ小出しにして伝えてみてください。

「おっくうだからやりたくない」と言われたとき私は、「ちょっと座ってみて」「座ったからついでに着替えちゃいましょう」「ちょっとだけ歩きましょうか」「せっかくだからトイレに行きましょう」「動いたからお腹が空いたでしょ。食卓に座って」といったふうに、少しずつ誘導していました。
この方法は、認知症の方に行動を促す際にも効果的です。

「動きたくない」という方も、動き出してしまえば身体にスイッチが入り、なんとかなることが多いのです。
動きたくない気持ちを尊重することも大事ですが、よほどの理由がない限り、多少無理をして動いていただくほうが良い結果をもたらすことが多いようです。

「起きる」「座る」「立つ」ができると、目線が変わって視界も広がります。
見えるものが変われば気分も変わりますし、やってみたいことが新たに見つかるかもしれません。
上手に取り入れてみてくださいね。

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