在宅介護の訪問サービスで「やってもらえること」「やってもらえないこと」

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在宅介護の訪問サービスで「やってもらえること」「やってもらえないこと」

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

自立支援の手伝いをすることが訪問ヘルパーの役割です。在宅介護の訪問介護サービスは、利用者の自宅にヘルパーが訪問し、身体介助や生活援助などをおこなうものです。

「短い時間で必要最小限の対応しかしてくれない」ヘルパーに、もの足りなさを感じたことはありませんか?
ヘルパーにちょっとした頼みごとをして断られ、「これくらい、やってくれても...」「なぜやってくれないの?」と気分を害した経験がある方もいらっしゃるかもしれませんね。

介護保険における訪問介護では、ヘルパーが「対応できること」「対応できないこと」が明確に決められています。
ヘルパーには対応可否の決まりがあるのです。

とはいえ、ご本人や介護家族からすれば、あいまいでわかりにくい部分があるのも事実。
今回は、ヘルパーに「やってもらえること」「やってもらえないこと」を詳しくまとめます。

【あわせて読みたい!「なぜやってくれないの?」】
ホームヘルパーに「できること」「できないこと」

● 介護保険における訪問介護とは?
在宅介護の訪問介護は、介護保険制度の枠組みで提供されているサービスのひとつです。

介護保険は社会保険方式で運用されおり、40歳以上の被保険者が納める保険料を財源としています。訪問介護にかかる費用も、7~9割は介護保険から支払われているということは、ご存じだと思います(利用者負担は1~3割)。

介護保険の目的は、高齢者の自立した暮らしを支援すること。
介護が必要な状態になっても、尊厳をもって、身体機能に応じて自立した生活を継続できるよう、医療サービスや介護サービスにかかる費用を給付しているのです。

訪問介護で提供するサービスも、自分の力で暮らしを維持するために必要なサポートであって、身の回りのお世話とは異なります。

ヘルパーは「要介護者の自立支援の手伝い」をするための資格を持った専門家。
家事代行サービスではありません。

ヘルパーに「やってもらえること」なのか、「やってもらえないこと」なのか、「要介護者の自立支援の手伝い」という大前提にそっているかどうか考えてみましょう。


● 訪問ヘルパーが対応できる「生活援助」とは?
では、ヘルパーにやってもらえるのは、具体的にどのようなことなのでしょうか。
訪問介護で提供するサービスは、大きくわけて「身体介助」と「生活援助」のふたつ。

身体介助とは、排泄(せつ)や入浴、食事や着替えなど、ご利用者の身体に直接触れておこなう介助のこと。
生活援助とは、料理や洗濯、掃除など日常生活のサポートです。

このうち生活援助は、「日常生活に支障があるひとり暮らしの要介護者や、同居する家族が病気で家事ができないなど、やむを得ない事情がある場合」に提供されるものです。
生活能力があるご家族が同居しているケースではほとんど適用されません。

ご本人やご家族が相談して断られるのは、この「生活援助」の対象か否かの判断によることが多いようです。

いくつか例をあげながらご説明します。

(1)書斎の本を片付けたいが、重いものを持てないから対応してほしい
ご本人の生活維持に直接関係がないため、生活援助の対象にならない可能性が高いです。
たとえば、ご本人が過ごしているお部屋の掃除や片付けは、衛生面や転倒リスクを排除するために必要ですが、庭の草むしりやガラス磨き、普段使っていない部屋などの掃除は、日常の家事の範囲を超えており、「必要ではない」と判断されます。

(2)日中は家族が仕事で不在なので、お昼ご飯をつくってほしい
同居家族がいる場合、原則的には生活援助の対象外です。
日中、ひとりになってしまうケースでは、家族があらかじめ用意しておいた食事を昼食時間に提供して食事介助します。
家族が事前に食事を用意できないやむを得ない事情があれば、生活援助サービスで対応する場合もありますが、「ヘルパーによる食事づくり」が本当に必要かどうかは、代替手段(お弁当、市販のお惣菜を予めご家族が準備するなど)の有無や自立支援の趣旨にかなうかどうかなどを含めた検討が必要です。

(3)家事に不慣れなので、一連の家事を代わりにやってほしい
家事ができない理由が、「やったことがないから」では生活援助の対象になりにくいと考えられます。
残された身体機能を生かせばできることや、これからできるようになる可能性がある家事行為を、ヘルパーが代行すれば、「自立」の妨げになってしまいかねません。
本人が主体でおこなう家事を、ヘルパーが手伝ったり声かけをしたりすることは可能です。

(4)家族の食事をつくりたいので、食材を買ってきてほしい
家族の分の食材を購入することは、生活支援には該当しません。
対応できるのは、本人の日常生活で最低限必要な買い物だけです。
また、本人のためのものでも、酒やたばこなどの嗜好(しこう)品の購入や、遠方の店への買い物などにも対応できません。
ただし、本人が買い物に行く際にヘルパーが同行して見守りやサポートをおこなう行為は、身体介護の位置づけで対応することがあります。

訪問介護の「生活援助」で対応できる範囲はかなり限定されているのです。


● 訪問介護の内容はケアプランによって決められる
ヘルパーがおこなえる訪問介護サービスの内容は、ケアマネジャーが計画した「ケアプラン」に基づいています。
ケアプランは、ご本人らしい生活を送るための目標設定をおこなったうえで、必要な介護サービスを組み合わせてつくられています。

ですから、ケアプランにないことをヘルパーに頼んでも、その場で対応することはできません。
事前にケアマネジャーに相談して、ケアプランを変更してもらう必要があります。

ケアプランに生活援助を入れる際には、「家族が対応できないやむを得ない事情があるか」や「ケアプランに設定した目標に対して必要かどうか」を慎重に検討します。
また、必要な家事行為に対して、ご本人はどこまでできるのか、できない部分があるなら何をサポートすればできるようになるのかなどもアセスメントし、「この部分の援助は必要」と判断されたことだけがケアプランに取り入れられるのです。

もし困りごとがあるなら、ケアマネジャーや市区町村の介護保険課に相談してみてください。
生活援助に該当せず、ケアプランの変更ができない場合も、実費(自費)で利用できるサービスを紹介するなど、何かしらの対応をしてくれると思います。

介護保険は、「公助」「互助」の仕組みですが、利用する側には「自助」の意識も必要です。
このような考え方を理解すれば、介護サービスへの不満も軽減するかもしれません。

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