認知症の方とのコミュニケーションで困ったら

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認知症の方とのコミュニケーションで困ったら

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

「危ない」「できない」と決めつけるのではなく、寄り添い、思いやることが重要です。もうすぐデイサービスのお迎えが来るのに、着替えてくれない。
汗をたくさんかいたのに、お風呂に入るのを嫌がる。
せっかく好物を用意したのに、食べてくれない。

認知症の方の介護をしていると、このような状況に困ることがあります。
いくら説明しても、まるで子どものような嫌がりようで、取り付く島もない。
こんなことが何度もあれば、思わず苛立ったり、声を荒げたりしてしまうこともありますよね。

在宅介護は、介護する方と介護される方が一緒に過ごす時間が長いので、些細なことが積み重なり、大きなストレスになりがちです。できるだけスムーズにやりとりができるといいですね。(心が通じ合う関係を築き、保っていくことが大切です。)

そこで今回は、認知症の方とのコミュニケーションについてまとめます。

● 認知症の方に「こうしてほしい」という前提で接していませんか?
在宅介護では、ご家族が対応しなくてはならないことがたくさんあります。
しかし、「規則正しく生活をしてほしい」「身ぎれいにしていてほしい」「いまこれをしてくれないと困る」「早く片付けないとこのあとの予定に差し障る」など、現実的かつ計画的な考えで、ケアを進めていませんか?

判断力や見当識の低下が見られる認知症の方の場合、そのような事情に理解が及びません。
認知症の方の介護では、こうした介護者と被介護者の認識のギャップが落とし穴になります。

介護する方は、その日の「やるべきこと」を取りこぼさないよう、ついつい結果や成果に向かって突き進んでしまいがちですが、認知症の方の介護はそれではうまくいきません。

「なぜ嫌がっているんだろう?」「なにか理由があるのかな?」

このようにご本人の気持ちを想像するところから、認知症の方とのコミュニケーションがはじまります。


● 認知症の方の「自尊心」を傷つけていませんか?
「やるべきこと」を優先して認知症の方に接していると、気付かないうちに傷つけてしまうことがあります。

たとえば、認知症の方が自ら何かをしようとしているとき、「やらないで」と止めてしまうことはありませんか?

ご家族からすれば、「時間がかかるから」「危ないから」など、この先に起こりうる状況を見越したうえでの理由があるでしょう。自分がやれば、トラブルがなく、時間も短縮できる。
何かと忙しいときは、このような合理的な考え方になるものです。

しかし、止められた認知症の方は、「できないと思われている」「迷惑をかけてしまう」と感じて、自信や意欲が損なわれてしまうことが少なくありません。

認知症の方にも自尊心はあります。
自分より年若い家族の前では、父であり母であり、しっかりしていたい。
大切な家族に迷惑をかけるばかりではなく、役に立ちたい。

このような思いを、認知症の方もしっかりと持っています。
記憶や言語、思考などの機能が少しずつ失われていくなかで、何度も傷つけられ、それでも最後まで守り続けるものが自尊心なのかもしれません。

認知症の方の言動は、否定したり止めたりするのではなく、寄り添う気持ちを持つことが大切。
たとえうまくできなくても、「大丈夫だよ」「やってもらえると助かるわ」などと声をかけるだけで、安心感や自信につながり、自己肯定感が高まります。
相手を思いやっての言葉は、介護する方の気持ちも穏やかにしてくれるはずです。


● 「親子だから」とコミュニケーションを雑にしていませんか?
認知症で時間や場所・人などの判断がつかなくなる見当識障害が進むと、家族を家族と認識できなくなってしまうことがあります。
私が知っているケースでは、介護者である娘さんを、ある日突然、母親と思い込むようになったご婦人がいました。
娘さんが娘としての立場からものを言っても、話がうまくかみ合いません。
母親という立場で話しかけないと、「私には娘はいない」とケンカになってしまうのです。
また、息子や娘を赤の他人と思い込み、警戒する認知症の方もいました。

長い年月を一緒に過ごした家族としては、とても悲しいことです。
しかし、そこにとどまり続けていたら、コミュニケーションが成り立たないことがあることも、知っておいていただきたいと思います。

自分は親だと思って接しているけれど、本人はそうではないかもしれない。
そう考えると、接し方、コミュニケーションの取り方もおのずと変わってくるのではないでしょうか。
例えば人と人との距離。他人との距離、友人との距離、恋人との距離、親子の距離・・・それぞれ適切な距離があります。

もちろん調子が良い日なら、自分の子どもだとわかるかもしれません。
しかし、もしそうではない場合、いきなり至近距離で話しかけたり、身体に触れたりされたら、ご本人は恐怖や驚きを感じるでしょう。

まずは、ご本人が怖がらないソーシャルディスタンス(2m)くらいの距離から声をかけ、目が合ってこちらを認識している様子なら、少しずつ反応を見ながら距離を詰めていく。
ケアのために触れるときも、いきなり触るのではなく、「これから薬を塗るから、腕に触るけれど良い?」などと声をかけるだけでも、不安が軽減します。

面倒に感じるかもしれませんが、決して特別なことではないのです。
たとえ親子でも、失礼な接し方や雑なもの言いを控えたほうが良いのは、在宅介護の家庭に限ったことではありません。
ひとりの人間として尊重し、丁寧にものごとを進める意識を持ってみましょう。

「コミュニケーションがとれない」「会話が成り立たない」と感じていても、あきらめないでください。
ほんの少しだけ、介護する方が意識を変えれば、相手の反応も違ってくるものです。

慌てず、ゆっくりと。
うまくいかない日があっても、「まあいいか」とイライラを手放してみる。

そこから介護する方・される方の新しい関係性がはじまるかもしれません。

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