認知症の方の「お買い物」をサポートする方法

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認知症の方の「お買い物」をサポートする方法

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

できることは任せて、できないことをサポートしましょう。認知症の方を在宅で介護するご家庭は少なくありません。
コミュニケーションがうまく取れない、困った行動に対処しきれないといった悩みと直面している方も多いと思います。

認知症の方の介護では、トラブルや後始末を避けたい一心から、介護する方がなんでもやってあげてしまう、ご本人がしようとしていることをやめさせる...といったことをしがちです。
しかし、それでは認知機能がどんどん低下してしまい、症状が悪化する可能性もあります。

ご本人ができること、やりたいと思っていることは、できるだけ奪わないことが大切。
介護者には、ご本人の自信につながるようなサポートが求められます。
心配なこと、困ってしまうことはいろいろ思い浮かぶと思いますが、大事なポイントを押さえてサポートすれば大丈夫。

今回のテーマは、認知症の方にぜひ継続していただきたいことのひとつ「お買い物」です。
認知症の方のお買い物をサポートするコツをまとめます。

● 「お買い物」でココロとカラダがいきいきする
認知症の方にお買い物をしてもらうことは、認知機能や運動機能などで効能があり、作業療法と呼ばれるリハビリにも取り入れられることがあります。

<「お買い物」で期待できる効能>
・五感が刺激され脳が活性化
色とりどり、さまざまな種類の商品が並ぶスーパーは、足を踏み入れるだけで気分が高揚するものです。
「おいしそう、あれが食べたいな」「これをつくろうかな」など、ワクワクするようなイメージが膨らみますね。
これは作業記憶や創造性、思考力や判断力などをつかさどる前頭葉が活発に活動している状態。旬の食材を見て季節を感じたり、香りに食欲を喚起されたりと、五感から得る情報も脳の活動を活性化します。

・さまざまな動作を自然に促せる
「お買い物」は日常生活の一部ですが、商品を選ぶ、手に取ってカゴに入れる、レジで会計する、買った商品を袋に詰めるなど、さまざまな動作が含まれています。
家から出るために着替えたり、目的のお店まで歩いて移動したりすることも、お買い物の一部です。
元気だったときからなじみのある行動なので、動きや意欲が自然に引き出されやすいと言えます。

お買い物に行くと、残された体の機能や脳の機能をフル活用して対応することになります。
これらが刺激になって、認知機能の維持や改善に役立つだけではなく、気持ちも晴ればれ。
家族の役に立つ喜びも、意欲や自信を取り戻すきっかけになることもあります。


● 認知症の方の「お買い物」をサポートするコツ
認知症の方のお買い物をしてもらう際には、心配なこともたくさんあると思います。
途中で転んでけがをしないか、道に迷わないか。
お店で迷惑をかけないか、会計がきちんとできるかなど。
しかし、介護家族が先回りして手出し口出しすることは、認知症の症状に対しては、良い効果を生みません。

基本的にはご本人の意思と判断に任せ、できないところをさりげなくサポートするのがコツです。
たとえば、お店までの道のりは一緒に同行して安全を優先し、お店に入ったら見守りを優先する...といった具合です。
よほどのことがない限り、あまり口出ししないように意識してみてください。

もちろん見ていてハラハラするところは、手助けも必要です。
その際も誤った判断を叱責するのではなく、ご本人を尊重した言い方を心がけてみてください。
「こんなもの要らないでしょ!?」ときつく言われると、誰でも嫌な気持ちがするもので、自分の判断に自信がなくなってしまいます。
でも、「これは家にもまだあったから、こっちかこっちのどちらかにしない?」といった言い方をしたら、どうでしょうか。
ご本人が選択できる余地を少しでも残し、「自分にもまだできる」と思うことが肝心です。

また、認知症の方は、レジでの支払いやお釣りの計算など、金銭を管理する能力が損なわれることが珍しくありません。
お札でばかりで支払いをしてお財布が小銭だらけになってしまう、レジでトラブルを起こすなどの理由で、お買い物をさせたがらない介護家族も多いものです。
また、ご本人も失敗するのが不安で、お買い物に行く意欲を失ってしまうことがあります。

できないことは、できないこととして、別の方法を取り入れれば良いのです。
おすすめはプリペイドカード。
カードを差し出すだけで良いので、レジでのトラブルを未然に防ぐことができ、支払いがうまくできないかもしれない不安も解消することができるでしょう。
先に現金をチャージしておく方式ですから、使い過ぎ対策にもなります。


●「お買い物の目的」をはっきりさせればイライラしない
認知症の方にお買い物をしていただくことは、さまざまな効能がありますが、いつも百点満点で買い物ができるとは限りません。
認知症の方の買い物が難しいという現実ももちろんあります。
介護家族がイライラを募らせることもあるでしょう。

「何のための買い物なのか」を明確にすると良いと思います。

必要なものを買ってきてもらうのも、もちろん目的のひとつでしょう。
しかし、買い物の目的はそれだけでしょうか。

閉じこもりがちであれば、家から出て、たくさん並んだ品物を見てワクワクする気持ちを味わってもらうだけでも意義があります。

できないことが増えてきて自信を失っている方なら、何を買っても良いから、「自分にもまだできる」という自信を取り戻してもらうことも大事です。

生きがいや喜びを感じてもらうために、「孫へのプレゼントを買いに行こう」と一緒に出かけ、いくつかの品物のなかから選んでもらうだけの買い物も有意義です。
それは「買い物」というより、「リハビリ」と考えるとよいかもしれません。


お買い物の目的はさまざまです。「百点満点の買い物ができなくても、少しでも目的がかなえられればそれで良い」とおおらかに見守ってください。
この心得は、認知症の方の介護において非常に役立ちます。
介護する方がラクになるためにも、「できなくなったこと」に固執しないことが大切。
少しだけ視点と発想を変えれば、お買い物を一緒に楽しむこともできるかもしれません。

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