認知症の方の「徘徊(はいかい)」を考える

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認知症の方の「徘徊(はいかい)」を考える

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

どんな気持ちで徘徊(はいかい)しているのか理解できれば接し方がわかるようになります。認知症の方の介護で大変なことのひとつに、「徘徊(はいかい)」があります。
目を離すといなくなってしまう、昼夜を問わず歩きまわるといった行動を頻繁に繰り返す症状です。

警察や他人を巻き込むトラブルになることもあり、心配はつきません。
過去には、電車にはねられた認知症の方のご家族が監督責任を問われ、裁判になったこともありました。

ずっと目を離さずにいることは不可能ですし、徘徊(はいかい)に対応するために十分寝られなかったり、いつも気が休まらなかったりすれば、介護するご家族のほうが疲弊してしまいます。

私も多くの認知症の方の介護に携わりましたが、徘徊(はいかい)にどう対応すべきなのかは、難しい悩みです。

一人ひとりがそれぞれ異なる問題を抱えており、正解は簡単に見つかりません。
ただ、認知症の特性やご本人の心の内を知ることで、「どう接すれば良いのか?」がなんとなく見えてくることもあるのです。

今回は、認知症の方の「徘徊(はいかい)」について理解し、どのように向き合えばいいのかをまとめます。

● 「どうしても行かなくてはならない」衝動を理解する
ひと言で「徘徊(はいかい)」といっても、きっかけや原因は人それぞれで、行動パターンも違っています。
自宅にいるのに「うちに帰る」と出て行ってしまったり、何かを探して歩きまわったり。
目を離すと一日に何度も同じ店に行き、閉まっていると店の前で大声を出すような方もいます。

何度言ってもわかってもらえず、徘徊(はいかい)を繰り返されると、イライラしてしまうこともあるかもしれません。

しかし、認知症の方は時間や場所を把握する見当識(けんとうしき)が失われたり、最近の記憶がなくなったりするため、なぜ自分がここにいるのかが理解できず、考えてもわからない不安や居心地の悪さに、いつもさいなまされています。

落ち着きなく歩きまわったり、どこかへ行こうとしたりするのは、「どうしても行かなくてはならない」という強い思いに駆られてのこと。
今すぐトイレに行きたいのと同じくらい切羽詰まった衝動で、ご本人にもどうすることもできないことを、理解していただきたいと思います。


● 徘徊(はいかい)の原因にアプローチするケアを
健康な人ならば、常識的に考えて「がまんする」「状況を理解して行動する」といった選択肢を取ることができますが、それができないのが認知症というものです。

「ここが自分の家でしょ」「今は夜だから出かけられないよ」などと説得しても意味がありません。
行動を止めようとすることで、かえって落ち着きがなくなったり、興奮して大声で叫ぶなど激しい抵抗を示したりすることもあります。
介護するご家族の疲労やいら立ちが募るばかりです。

では、どうすればいいのでしょうか。
徘徊(はいかい)は、認知症の「周辺症状」のひとつで、ご本人の性格や生活環境などが影響しています。
そのため、周囲の理解や対応のしかたで、症状が軽減されることがあります。

まずは、なぜ徘徊(はいかい)するのか、原因を知ることが重要です。
「用事を済ませに行く」という目的があるのかもしれませんし、「家に帰る」のかもしれません。

記憶が混乱しているために、「子どもが待っている」「お母さんに会いに行かなくては」などと思い込み、いてもたってもいられなくなる方もいます。
また、今の環境に不安やストレスを感じていて、「ここは私の居場所ではない」と判断してしまう場合もあるようです。

何かしらの目的や理由があるので、理屈で説得しようとするのではなく、「どうして帰りたいの?」「なぜ行かなくてはならないの?」と聞いてみましょう。
言い聞かせるのではなく、心の内側にあることに耳を傾ける、とにかく「聴く」こと、そして「ありのまま受け止める」ことがポイントです。

明確な答えが返ってくるとは限りませんが、その時々の訴えに耳を傾けて、一緒に歩いたり、安心させてあげる言葉をかけたり、気分転換を図ったり、様子を見ながら臨機応変に対応しましょう。
ご本人が何を求めているのかが理解できると、かけるべき言葉や対応のしかたがなんとなくわかるようになってくると思います。

以前もお話ししましたが、認知症の方とのコミュニケーションは、とびきり難しい謎解きのようなものです。
徘徊(はいかい)の目的や理由も今、目の前で起きていることや、表面的な言葉だけで理解しようとしても、答えは見つからないかもしれません。
記憶が混乱している認知症の方の場合、ご本人の生い立ちや昔の出来事などにヒントが隠されていることも多いからです。

過去の悲しみや満たされない思いなどに気づくと、コミュニケーションも取りやすくなり、周辺症状が改善されることも少なくありません。

どんな気持ちで徘徊(はいかい)しているのか、想像を巡らせることが大切です。
目的や理由がわかれば、気持ちに寄り添ったケアが可能になり、結果的に徘徊(はいかい)の症状を軽減することにつながるのではないでしょうか。


● 徘徊(はいかい)中に考えられるリスクを軽減するには?
徘徊(はいかい)の症状がある場合は、目を離したすきに出て行ってしまい、人に迷惑をかけたり、事故にあったりすることを心配されている方も多いでしょう。

リスクを減らすためには、ご本人が立ち寄る場所や行動範囲は、できるだけ把握しておきたいところです。

「ご本人の気が済むまで徘徊(はいかい)に付きあいましょう」と言われることがありますが、何をしようとしているのか、どこに行こうとしているのかを探る意味では、有効な対応のひとつ。
イライラしながら付きあうのではなく、おおらかな気持ちで一緒に歩いてみてください。

行動パターンがわかったら、よく行く先や、通り道のお店などの方に事情を話し、「何かあったら連絡をください」と電話番号を渡しておくことをおすすめします。
認知症の方の介護をするご家族は、「恥ずかしい」「人に知られたくない」と考えてしまいがちですが、認知症の方のお世話は本当に大変で、家族だけでは抱えきれるものではありません。
助けてくれる人を一人でも多く増やすことが必要です。

徘徊(はいかい)の症状がある場合は特に、ご近所や近隣のお店の方などの協力がご本人の安全性を高めることになります。
気にかけてもらえるよう、日ごろからよくコミュニケーションを取られてはいかがでしょうか。

恥じるよりも、「仕方がないこと」と割り切って、開き直る強さも大切です。
隠すよりも、どうして欲しいかを伝えたほうが建設的です。高齢化が進む今後は、認知症の方がどこにいても不思議ではなく、街なかで徘徊(はいかい)している人に出会うことが珍しいことではなくなるでしょう。
一般の人に認知症の方への理解を深めてもらうことは、これからの日本に欠かせないことです。

認知症についての理解が広がり、ご本人と介護するご家族が、地域のなかで少しでも暮らしやすくなることを願っています。

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