在宅介護の「お風呂」の効用と注意点

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在宅介護の「お風呂」の効用と注意点

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

お風呂はコミュニケーションの場でもあります。毎日のお風呂を楽しみにしている方は多いと思います。
要介護者の方にとってもそれは同じ。
私が訪問看護師をしていた時代、入院中の患者さんがよく「家に帰ったら、家のお風呂に入りたい」と口にしていたのを思い出します。

「ゆっくり湯船に浸かる」という行為がどれほど重要な意味を持っているかを実感しました。

しかし、要介護者の方にとって「入浴」は、ハードルが高い生活動作のひとつ。
リハビリにおいてはひとつの到達点としてもあげられています。
ご家族にとっても負担が大きいので、苦労している方も多いのではないでしょうか。

そこで、今回から4回にわたって、在宅介護における「お風呂」について考えてみたいと思います。
初回は、介護生活の入浴の役割や、安全に入浴するための注意点などを紹介しましょう。

● お風呂に入る目的は人それぞれ
お風呂に入るとは、日本人にとって文化であり、生活習慣であり、いろいろな効用があります。

真っ先に思い浮かぶのは、身体を清潔にすること。
また、心身がリラックスするのもお風呂の効用のひとつですね。
お風呂が大好きで、入浴の時間を楽しみにしている方もいます。
身体の機能維持のためにも、健康なときの嗜好や生活リズムを継続することは必要です。

また、入浴は血流の巡りをよくします。
在宅介護においては、腰痛など関節の痛みを軽減したり、床ずれを予防したりする役目も果たしています。
身体の状態によっては、入浴は必要なケアのひとつとも言えるのです。

お風呂に入る理由は人それぞれ違います。
お風呂がその方にとってどのような意味があるのかを明確にしておきましょう。
目的が違えば、入り方も、入浴介助の仕方も違ってくるからです。


● 入浴介助に「こうあるべき」はない
お風呂の介助は大変なものですが、「お風呂に入る目的」がはっきりしていれば、介助する方の負担を少し減らせる場合があります。

たとえば、お風呂に入る目的が「関節の痛みを緩和する」であれば、患部をよく温めることが大事。場合によっては、必ずしも毎回全身をよく洗って清潔にする必要はないかもしれません。

「床ずれ予防」が目的なら、床ずれになりやすい部分をよく観察して、清潔に保つことが必要です。
重点的に「見るべきところ」「洗うべきところ」がわかっていれば、入浴介助も少しラクになるのではないでしょうか。

また、「疲れを取る」のが目的なら、デイサービスやリハビリなどで身体を使った日に湯船に浸かれば良いでしょうし、「清潔にする」のが目的なら、シャワーで簡単に済ませてしまう...という方法もあるでしょう。

在宅介護では、「こうしなければならない」という固定観念にとらわれすぎないことが大切です。
「なぜお風呂に入るのか」がわかっていれば、目的達成のためにどのような入浴方法が良いかがわかります。
決まった入浴方法にとらわれる必要はありません。
そのときどきで柔軟に対応して、その方にあった入浴のペースや入り方を見つけましょう。

訪問介護サービスに入浴介助を頼む場合も、「目的」をしっかり伝えておくことをおすすめします。
介助する側もサポートしやすくなります。
介護サービスと連携して、充実したお風呂タイムをつくってあげてくださいね。


● 安全に入浴するための注意点
要介護者の方に安全に入浴してもらうためには、事前の準備がとても大事。
途中で足りないものに気づいても、目を離すことができないので、事前に万全に整えておかなくてはなりません。

入浴前の準備をまとめました。

□ 血圧や体温などを計り、ご本人の体調を確認する
□ 入浴前にトイレと水分補給を済ませておく□ 浴室と脱衣所は温めておく
□ 入浴中に使うもの(スポンジやボディタオル、石けんなど)を準備し、使いやすい位置に置く
□ 入浴後に使う塗り薬や保湿剤を準備しておく
□ 入浴後に使うタオルや着替えは、使う順に重ねて取りやすい場所に置く

温度差によるヒートショックは、これからの季節に気をつけたいことのひとつ。
浴室に暖房がなければ、浴槽のふたを開けておいたり、高温のシャワーをしばらく流しっぱなしにして温めておきましょう。シャワーは床や壁全面にかけまわすとさらに温まります。
浴室内の備品を事前にチェックしておくこともポイント。
シャンプーや石けんは不足していないか、使いやすい置き場所にあるかを確かめておきましょう。

全体の流れをイメージして必要な場所に必要なものを置いておかないと、スムーズに行かず、転倒事故など介護者の方に危険が及ぶこともあります。
事前の準備は毎回おろそかにしないようにしてくださいね。

それから、入浴のときは水分補給がとても大事。
汗で水分が失われますので、入浴前、入浴後は必ずしっかり水分補給をしてください。
ゆっくり湯船に浸かるのが好きな方は、入浴中もこまめに水分を補給しましょう。

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入浴介助をしていて何よりも嬉しいのは、介護される方の気持ちの良さそうな姿。
笑顔が見られると「頑張ったかいがあった」と思えますよね。

訪問看護をしていた経験から言えば、お風呂はコミュニケーションの場でもあると思います。
浴室では1対1になりますから心が近くなって、「実はね...」と普段は聞けない話を教えてくださることもよくありました。

お風呂には、心理的な壁を取り払う特別な何かがあるのかもしれません。
ご家族ならば、なおのこと。
お風呂の時間を通じて、心から語り合うひとときを持てると良いですね

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