介護ベッドはどこに置く? 介護生活の空間レイアウト
こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。
介護でよく使われる福祉用具のひとつに、介護ベッドがあります。
「ベッドをどこに置くか?」で迷う方は多いのではないでしょうか。
寝室?
それとも、介護がしやすい別の部屋?
介護ベッドの配置に、「こうしなくてはならない」という決まりやルールはありません。
住居の間取りやご家庭の事情、介護を受ける方の気持ちなどを加味して、最適な配置を考えられることと思いますが、どこに介護ベッドを置くかで、介護生活そのものが変わることもあります。
慎重に考えたいですね。
今回は、介護ベッドを置く場所を検討するときのポイントや、メリハリのある介護環境のつくり方などをお話ししたいと思います。
● 介護ベッドを置く場所を決めるときのポイント
介護ベッドの置く場所を考えることは「1日をどんなふうに過ごしたいか?」を決めるということです。
たとえば、孤立や孤独を防ぐことの優先順位が高いなら、家族がくつろぐリビングや、その様子が見渡せる隣の部屋など、家族が見える場所に介護ベッドを置くのがおすすめです。
「トイレには自分で行きたい」という思いが強ければ、近くて移動しやすい場所を選んで、介護ベッドを置くのも良い方法だと思います。
もちろん「寝室のほうが落ち着いて過ごせる」といった方や「ベッドは寝室に」という考え方もあるでしょう。また「この部屋にいたい」という要望が出ることもあると思います。
「奥様との思い出がつまった寝室」や、「絵画に囲まれた部屋」を選択されたケースもありました。
介護する側の視点に立つのも重要なこと。
様子が見やすい、移動距離が短いなど、負担を減らしておきましょう。
介護を受ける方ご本人とご家族にとって実現したい介護に近づくよう、話し合ってみることが大切です。
● 介護生活にメリハリを
介護ベッドをどこの部屋に置いても注意したいことがひとつあります。
それは生活のメリハリ。
刺激が少ない環境に居続けることは、身体機能や認知機能の低下につながることがあります。
座りやすい座椅子で別の部屋に移動したり、仮眠を取れる簡易ベッドなどを置いたりするなど、体の状態に合わせて生活にメリハリをつけることを意識してみてください。
どこでどのように過ごしたら、ご本人が元気なときの暮らしに近づけられるか。
それを意識して、ベッドの置き場所やお部屋のレイアウトを考えることがメリハリにつながります。
ガンを患った40代の女性のお宅に訪問看護に伺ったことがあります。
こちらのお宅では、介護ベッドをリビングに置いています。
お子さんが帰ってくると、今日の出来事をベッドサイドで話していました。
お子さんが習ってきた曲をリビングのピアノで弾いて聞かせることもあるようです。
リビングに居場所があることで、彼女は家族とコミュニケーションを取ることができ、いつでも話の輪の中心になっていました。
ものの配置を工夫することで、介護が必要な状態になっても、家族の一員としての役割を果たすことができるようになるということを実感しました。
● 寝たきりを防ぐために「自分で座る」が大事
いすやベッドの端に腰かけて両足を地面につける座り方を「端座位(たんざい)」と言いますが、端座位ができれば、座っている状態を維持することが可能です。
ベッドから起き上がり、座った状態なら肺に新鮮な空気をたくさん取り込めるので、肺炎予防になります。また端座位での食事なら、むせるのを防ぐことにも役立ちます。
ベッドで過ごす時間が多くなっても、端座位ができるうちはできるだけ家族と食卓につきましょう。
「寝食分離」は、介護において非常に大切にされていることです。
ベッドからの移動が難しい方も、ベッド脇にテーブルを用意すれば端座位で食事ができます。
起き上がりに不安がある方も、体を起こしている時間を増やす工夫は必要です。
介護ベッドやクッションなどをうまく利用するのがおすすめです。
体を起こして快適に安全に過ごす環境づくりについて、地域包括支援センターや、ケアマネジャーさん、理学療法士さんなどに相談してみましょう。