在宅療養での住環境の整え方とは?
こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。在宅での介護を考えたとき、気になることはいろいろあると思いますが、そのうちのひとつが「住環境」なのではないでしょうか。
今回は、在宅介護を考えるうえで知っておきたい、住環境の整え方についてお話しします。
「この家で、十分な介護ができるかしら」
「介護サービスを受けるには、スペースが足りないんじゃないかしら」
そんなふうに考える方も多いと思います。
けれど、介護を優先して住み慣れた住環境をガラリと変えてしまうと、思いもよらぬ不具合が生じることもあります。
家は長い時間を過ごす、「なじみの場所」。
ご本人やご家族にとって快適で、心休まる空間であることがとても大事です。
● 介護生活の住環境は、「動作」と「動線」から考える
私たちは、介護を受ける方の「動作」と「動線」の確認が大切だと思っています。
家の中で1日をどうやって過ごしていたのか、部屋を移動するときはどのようにしていたのかなど、日常の"動き"と"経路"を確かめるのです。
訪問介護でいろいろなお宅にうかがってきましたが、家具や壁をうまく使って伝い歩きする利用者様がかなりいらっしゃいました。
いつも手をつくタンスの角、いつもつかまる柱、いつも触れる壁。
部屋を移動して歩くとき、無意識に安全確保しているのです。
動線にある「つかまるところ」は、とても大切です。
移動の途中に手をついたり、ちょっと立ち止まったりできる場所が動線上にたくさんあるほうが、安心できます。
狭くて片付いていない家は在宅介護に向いていないというイメージはありませんか?
一見、雑然としているように感じるかもしれませんが、そうとも限りません。
長年の習慣で手をついたり体を支えたりしていた場所が減ってしまうと、かえって転倒しやすくなる恐れもでてきますし、事故につながることも考えられます。
自分でトイレに行ける、欲しいものが取りに行けるということは、ご本人にとってもご家族にとっても、とても価値があることです。
介護を受ける方が安全に、一人で動ける環境を見つけていただければいいな、と思います。
まずはご本人が慣れた方法を活かすことを優先してみてください。
家具の配置替えやリフォームは、ご本人の意向をよく聞き、専門家の話も聞いてから慎重に進めましょう。
● 家の中で排除すべきものとは?
もちろん慣れた家の中にも、危険の芽はひそんでいます。
日常動作は、意識せずにやっていることが多いもの。
客観的な目で見ると、「今の体の状態だと、ドアを開けるときにバランスを崩しそうだな」とか「あっちへ移動するときに食卓に手をついて支えているから、食卓の上が散らかったり、水で濡れたりしていたら危ないな」とわかります。
在宅介護において、避けたいのが「転倒」です。
転倒は、骨折など大きなけがになりがちで、それをきっかけに寝たきりになったり、要介護度が重くなったりすることは珍しくありません。高齢になると転倒しやすくなるだけでなく、転び方も上手ではなくなります。
身をかわす、手が前に出るなどの、身体を守る動作がとっさにできなくなり、大きなけがを負うことになるのです。
転倒を防ぐために注意しておきたいのが「足元」。
年を重ねると、自分が思っている以上に足が上がらなくなっていますし、特につま先が引っかかりやすくなります。
夏場に敷くゴザやすべり止めがないラグマットなど、軽くて持ち上がりやすい敷物は、つまずいたり滑ったりして転倒しやすいので、ある程度、重みがあって床にしっかり密着するものを選ぶか、使用しないほうが安心です。
長年暮らしてきた住環境の中では、いつの間にか介護を受ける方にとって危険になっているものもあります。介護する方が実際に目で見て、今の住環境と体の状態がマッチしているか確かめてみましょう。
「ちょっと危ないかな」と思うことがあれば、それは変えるべきポイント。
けがにつながるリスクがあれば、意識的に排除したり、改善したりすることをおすすめします。
● その「片付け」は本当に必要?
在宅介護では「片付けすぎ」がトラブルになる場合があります。
介護をする側は、できるだけ清潔で、整理整頓された環境に身を置くことが幸せだと考えてしまいがち。でも、介護される方ご本人にとっては、そうとは限りません。
まず、どこに何があるかわからなくなると、とても困ります。
何かを取ろうとしたり探したりしていて、転倒や転落する事故は、よくあることです。
慣れない環境に置かれて、動線の変化についていけず、かえって危険なこともあります。
また、「片付けすぎ」ることで、精神的に不安定になる方もいますし、認知症を進行させることもあるのです。
高齢になればなるほど、「なじみの環境」であることが大事なのです。
在宅介護では、きれいに掃除して整理整頓することよりも、介護を受けている方が過ごしやすいこと、「なじみの環境」であることを意識するのがポイント。
また、モノに対する思い入れも人それぞれです。
勝手に模様替えをしたり、捨てたり、片づけてしまい込んだりするのは、避けましょう。
住環境の掃除や片付けにあたるときは、何よりもまずご本人が築き上げてきたこと、慣れ親しんだ暮らし方を尊重してあげてほしいと思います。