同居か別居か?在宅介護の親と良い関係性を保つための距離感

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同居か別居か?在宅介護の親と良い関係性を保つための距離感

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

同居が良いのか、別居が良いのか、介護は十人十色です。自分たちに最適な介護を見つけましょう。在宅介護の親御さんと別々に暮らすケースは少なくありません。
介護が必要となる以前の親とは違う弱った姿や不自由な暮らしぶりを見ると、「同居して介護したほうが良いかな」と考えることもあるのではないでしょうか。

「危なっかしくて心配」
「ひとりでいる様子がさみしそうで、心が痛む」
「高齢の親を放っておくと世間体が悪い」

在宅介護の親との同居を考える理由は人それぞれです。
在宅介護は、介護する人が同居することでうまくいく場合と、そうではない場合があります。
同居することが最良の方法なのではなく、同居していても、別居していても、一定の「距離感」が大切なのです。
今回は、同居をはじめる前に知っておくべきこと、検討しておきたいことをまとめます。

● 親は昔のままではない
介護が必要な親御さんとの同居では、「こんなはずではなかった」という思いを抱える方が少なくありません。
かつてひとつ屋根の下に暮らした経験から「あのころのようにやっていけるだろう」と無意識のうちに考えがち。しかし年齢を重ねて介護が必要になった親御さんは、もう昔のままではありません。
その現実を受け止めないと同居して在宅介護をするのは難しいと言えます。

高齢になれば、誰でも身体の無理がききません。
ちょっとしたことでも重労働に感じるようになります。
テキパキした受け答えができなくなったり、寛容さが減って怒りっぽくなったり、わがままになったりします。
ましてや要介護状態だったらなおのこと。
衰えていく自分の身体と折り合いがつけられず、不安定な精神状態になる方も少なくありません。

昔は毅然としていた父が排泄(はいせつ)に失敗したり、きれい好きだった母が入浴を嫌がったりする日常を見ていたら、悲しい気持ちになるかもしれません。
うまくできないことにいら立ちの感情が湧いてくることもあると思います。

かつての父親像、母親像と比較して悲しく感じたり、いら立ったりしては、同居はうまくいきません。
今の状態をありのまま受け止める。
それが、要介護の親と同居するための心得だと言えます。


● 同居で親子の関係性も変わる
親子が年齢を重ねていけば、支える側と支えられる側が入れ替わるのは、必然のこと。
身体の衰えだけではなく、親子の関係性が変化するのもまた必然なのですが、そのことに気づかず、あるいは受け入れられず、同居がうまくいかなくなるケースも少なくありません。

介護がはじまってからの同居では、子は「親の面倒を見る」という前提です。
子にとっては、日常生活の舵取りは自分だ、という自負があるでしょう。

かたや親は親です。
「面倒を見てもらう」「子に従う」という心持ちに、なかなかなれるものではありません。
相変わらず、あなたの「親」としてふるまうでしょう。
互いに折れなければ、衝突が起きるのは必然に思えます。
長く暮らしていくうちにちょっとした出来事がストレスになり、いつしか埋めようのない溝ができてしまう...そんな介護家族をたくさん見てきました。

そうならないためには、親をひとりの人間として尊重する気持ちを持つことが大切。
「時間がかかるから」とご本人に代わって何でもやってしまったり、「これで良いでしょ!」と一方的に物ごとを決めてしまったりすることは、親の自負を傷つけ、気持ちを頑なにしてしまいます。
小さなことでも、「どっちが良い?」「どうしたい?」と確認してから進めることを意識してみてください。

介護がはじまれば、親子の関係性は変わります。
かつてはお父さん、お母さんがあなたのペースに合わせてくれていたことを思い出してください。

子から親にお返しするような気持ちで、おおらかに接する。
それができれば、自分もネガティブな感情から解放され、同居介護が少し好転するかもしれません。


● 同居介護でも別居介護でも大切な「距離感」
かつては家族として一緒に暮らしていた親子でも、家を出れば生活様式や価値観に違いが出て当然。
就寝時間や食事のメニュー、掃除の仕方や入浴のタイミングなど、たとえ親子といえども、すり合わせていくのはなかなか大変です。

高齢になるほど住環境や、生活のリズム、日常の習慣を変えるのは難しくなります。
認知症の方ですと、症状が悪化して暴力や暴言、妄想、徘徊(はいかい)、失禁などの周辺症状(BPSD)がひどくなることもあります。

良かれと思ってしたことが、実は親の負担になって心身の不調につながることもあるのです。
同居して介護をするのであれば、冷静に状況を見極めて、慎重に進めていく必要があります。

要介護状態の親と別居していることに罪悪感を持つ方が少なくありませんが、罪悪感を感じる必要は無いのではないでしょうか。
今の親の暮らしを尊重して、別居を選択する方もたくさんいます。

良い状態で在宅介護を続けるためには、一定の「距離感」が必要です。
優しい気持ちでいるためには、時間的、空間的な距離を保つことが欠かせません。

別居して必要な「距離感」を保つことも、正しい選択です。
もちろん、同居だって間違った選択と言うわけではありません。
うまく同居介護を続けているご家庭もたくさんあります。

同居がうまくいっている方たちに共通しているのは、自分なりに意識して介護との「距離感」をつくっていることです。
たとえば、介護から離れて自分のためだけに使う時間を持つ、また無理に思い通りにしようとせず「まあいいか」と割り切る。
ストレスをためすぎず、何があっても再び介護に向き合える「距離感」を知っているのです。

介護の方法は十人十色。
「同居」が親にとって、子にとっての最良の選択なのか、よく考えてみましょう。
そして、それが悩んだ末に決めたことならば、どんな選択をしたとしても「正解」なのです。

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