認定調査の前に知っておきたい!「要介護認定」の仕組み

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認定調査の前に知っておきたい!「要介護認定」の仕組み

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

ありのままの状況を伝えるのがポイントです。介護にかかる労力や金銭的負担をサポートしてくれる介護保険制度。
介護保険給付を受けて介護サービスを利用するには、要介護認定を受けていなくてはなりません。

要介護認定の申請をすると、まずおこなわれるのが「認定調査」です。
すでに在宅介護をしている方なら、このあたりの流れはよくご存じかもしれません。
しかし、「認定調査の後、どのように要介護度が決められているのかは知らない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

利用できる介護サービスは、要介護度によって変わってくるので、認定調査はとても重要です。
また、認定調査は一度受けたら終わりではなく、更新や区分変更などの際にもおこなわれます。
認定調査の仕組みを知っておくと、これからも続く在宅介護生活のなかできっと役に立つでしょう。

そこで今回から3回にわたって、「認定調査」についてじっくり解説していきます。
初回の今回は、認定調査がどのようにおこなわれ、どのように要介護認定が決まっていくのかをまとめます。

●要介護度を左右する認定調査のキホンとなる「3つの書類」とは
認定調査は、要介護認定の申請を受けた市区町村が主体となって実施します。
以下の3つの書類をもとに、コンピューター分析による一次判定、介護認定審査会による二次判定を経て、要介護度が決定されます。

(1)認定調査票
(2)特記事項
(3)主治医の意見書

それぞれどのような内容が書かれているのか、説明していきましょう。


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(1)認定調査票
認定調査員(市区町村の職員、もしくは自治体から委託されたケアマネジャー)が対象者を訪問し、聞き取り調査をおこないながら書き込む書類です。
「概況調査」の欄には、現在受けている介護サービスのほか、家族や住居、既往歴など、対象者の現在の状況が、「基本調査」の欄には、身体機能や生活動作、認知機能、生活自立度などの項目がチェック形式で記載されます。
要介護認定の一次判定は、この認定調査票に基づくコンピューター分析により決定します。

(2)特記事項
認定調査票の「基本調査」の項目だけでは推し量れない特別な事情や、介護にあたるご家族の状況など、要介護度の決定に関係する情報を認定調査員が自由記載します。

(3)主治医の意見書
対象者の心身状態や生活機能について、医師が医学的な観点から記述するものです。
今後の見通しや起こりうる症状、日常生活における留意事項、必要と考えられる介護サービスなど、介護に関わる項目を幅広く記載します。


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二次判定の場である介護認定審査会は、有識者による協議です。
一次判定の結果をもとに、(2)の特記事項と(3)の主治医の意見書を参考にしながら話し合い、要介護度が決まります。

機械的な処理だけで要介護度が決められているわけではありません。
認定調査員が調査した調査票を、保健・医療・福祉の専門家らが集まり「人の目」から見た意見も取り入れながら、話し合って総合的に判断し、最終決定しているのです。

認定結果の不公平を減らすため、過去には介護認定方法の見直しもおこなわれてきました。
認定調査員のスキルや判断にばらつきが生じないための取り組みもおこなわれており、実態とかけはなれた認定結果が出るケースはそれほど多くないはずです。

私も仕事柄、多くの要介護者の方と関わってきましたが、「適正だな」と思う要介護度になっていることがほとんどでした。


●認定調査員は「認定調査」でどこを見ているの?
介護認定の入口となるのが、認定調査員による訪問聞き取り調査です。
いったいどんなところを見ているのか、どうやってチェック項目を選んでいるのかなど、気になっている介護家族の方が多いのではないでしょうか。

認定調査員による聞き取りでは、「現在の身体の状態」に関すること、「生活動作」や「認知機能」に関することなど、いろいろなことを質問されます。
実際に体を動かしていただき、できるかどうかを確認することもあります。

ところがご年配の方は、「人に迷惑をかけてはいけない」「できないと思われたくない」と言う気持ちから、普段はできないことを「自分でできる」と言い張ったり、良いところを見せようとがんばってしまったりすることも、珍しいことではありません。

「要介護度を軽くされてしまうかもしれない」とやきもきした経験がある介護家族もいらっしゃるかもしれませんね。

認定調査員は、「本人がどれだけできるか」よりも、「日常生活にどれだけサポートが必要か」という点に注目しています。
ですから、介護家族がどんな点で苦労しているかも、貴重な情報です。

たとえば、「食事はひとりでできますか?」という質問に対して、「自分で食べられます」と伝えれば、認定調査票には「介助されていない」という項目にチェックされます。
しかし、介護家族が「自分で食べられますが、うまく口に運べないので、こぼしたり汚したりして後片づけに時間がかかります」と伝えれば、特記事項に記載してもらえる場合もあります。

介護している方が手をかけている部分については、ありのまま状況を伝えてください。
後始末のような間接的なことでも、介護の一端です。
要介護認定に影響することもありますから、些細なことであっても伝えましょう。

認定調査票は全国共通で、厚生労働省がインターネット上でも公開していますので、認定調査の前に「何を聞かれるか」を知ることもできます。
どの質問で何を伝えるか、介護者視点で事前に考えておくと良いかもしれません。


● どの先生に「主治医の意見書」を書いてもらえば良いか?
はじめて介護認定を受ける際に、「主治医の意見書」を誰に書いてもらうかで迷う方は少なくありません。

病気やケガで入院し、介護が必要な状態になった場合は、入院先の主治医に依頼することが多いようです。
ただ、必ずしも入院先の医師が適任というわけではありません。

総合病院や専門病院に所属する医師は、目の前の患者さんを治療するのが仕事。
リハビリや介護療養を請け負っていない病院ですと、要介護認定の意見書を書きなれていない先生もいます。
複数の診療科を抱える大きな病院では、意見書を書いてもらう手続きだけでも時間がかかってしまうことも少なくありません。

かかりつけ医の先生がいるなら、そちらに頼んだ方が、適切な意見書がもらえるのではないでしょうか。
意見書には、入院の原因になった病気やケガのこと以外にも、認知症や身体機能の低下などさまざまな項目を記載するので、日ごろのご本人の状態をよく理解していないと正確に記載するのが難しいのです。

ですから、できれば介護が必要になる前からかかりつけ医を持っておくのが理想。
健康上の気になることを何でも相談でき、ご家族の介護状況も把握し親身になってくれるかかりつけ医は、介護生活がはじまってからも頼りになる存在です。

かかりつけ医がおらず、「誰に意見書を書いてもらえば良いかわからない」という場合は、地域包括支援センターで、介護のことにも明るい地域の総合診療医を紹介してもらっても良いでしょう。

認定調査を受けても、「主治医の意見書」がそろわないと、介護認定の審査対象にはなりません。介護認定を急ぐなら、なるべく早く意見書を書いてもらえるよう、医師に相談してみてくださいね。

次回は、「納得できる認定結果を得るためのコツ」について詳しくご紹介していきます。
ぜひお読みください。

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