開催レポート
シンポジウムイベント
「Co-Creation"共想"フォーラム」

2017年11月16日、「Co-Creation “共想”フォーラム〜あんしんプラットフォーム構築に向けて〜」と題してシンポジウムイベントを開催しました。キーワードは“共想”によるオープンイノベーション。すなわち、パートナーとの共感から生まれる新しい価値の創出です。本フォーラムでは、“未来をつくる共想・協働”をテーマにした基調講演、多様な視座の有識者と未来のまちづくりを議論するパネルディスカッションのほかに、セコムオープンラボで議論された好評共感アイデアを紹介して、来場者全員の大投票会を実施。会場で最も多くの共感が得られたアイデアを最優秀共感アイデアとして表彰しました。

多様な皆さまとの協働をさらに進めるべく、日頃議論している産学界のほか、日本経済新聞社との共同開催により、広く社会から参加いただいて議論を展開いたしました。多くの皆さまにご参加いただき、共感から生まれる新しい価値と社会に必要なサービスを議論する機会として盛会に開催することができました。

日経新聞2017.12.13朝刊掲載の採録記事はこちら

開催概要

シンポジウムイベント「Co-Creation"共想"フォーラム」

主催:セコム株式会社、日本経済新聞社クロスメディア営業局

協力:国立研究開発法人 科学技術振興機構(サイエンスアゴラ)

開催日時:2017年11月16日(木) 13:30~ 17:10

会場:イイノホール(東京都千代田区)

定員:500名

登壇者

基調講演「変わりゆく社会に、変わらぬ安心を ~未来への挑戦~」

  • セコム(株) 代表取締役社長
    中山 泰男

    1952年生まれ。76年東京大学法学部第2類卒業、同年日本銀行に入行。93年企画局政策広報課長、96年営業局金融課長、98年金融市場局金融市場課長、98年大分支店長、2001年政策委員会室審議役、03年名古屋支店長、05年政策委員会室長、07年総務人事局を経て、同年4月セコム株式会社に入社 顧問。
    常務取締役総務本部長を経て、16年5月代表取締役社長就任、現在に至る。

プレゼンテーション「セコムオープンラボで進む“共想”」

  • セコムオープンラボ総合ファシリテーター/東京理科大学 総合研究院 客員准教授
    沙魚川 久史

    1976年生まれ。東京理科大学大学院 総合科学技術経営研究科修了、同院イノベーション研究科修了。東京大学イノベーションマネジメントスクール修了。セコムの研究開発部門を経てセコム科学技術振興財団事業部長として研究助成プログラムを推進した後、セコム本社企画部主任にてセコムのオープンイノベーションを推進。専門領域は技術経営で、大学や国立研究開発法人、産学官コンソーシアムなどでも活動しながらサービス創造の視座より産学官の連携も推進している。東京理科大学イノベーション研究センターフェロー、国研 科学技術振興機構 専門委員、ものこと双発学会・協議会 事務局長。

パネルディスカッション「時間や空間に捉われないサービスを生み出す『まちづくり』」

  • 渋谷区長
    長谷部 健氏

    1972年生まれ。専修大学商学部卒業後、96年株式会社博報堂入社。2002年NPO法人green birdを設立し、まちをきれいにする活動を展開。原宿・表参道から始まり全国80ヵ所以上でゴミのポイ捨てに関するプロモーション活動を実施。03年より15年まで渋谷区議会議員。15年4月渋谷区長に就任、現在に至る。

  • 内閣府参与 兼 経済産業省参与
    齋藤ウィリアム浩幸氏

    1971年ロサンゼルス生まれ日系2世の起業家。ベンチャー支援コンサルタント、暗号・生体認証技術の専門家。指紋認証などの生体認証暗号システムを開発し、160社以上の企業とライセンス契約を締結。2004年に会社をマイクロソフトに売却後、05年に拠点を東京に移して、07年に株式会社インテカーを設立。13年内閣府本府参与に就任。15年からバロアルトネットワークス株式会社副会長。16年紺綬褒章を叙勲。

  • 総合科学技術・イノベーション会議 常勤議員
    原山 優子氏

    1996年にジュネーブ大学教育学博士課程修了、教育学博士取得。97年には同大学経済学博士課程修了、経済学博士取得。98年からジュネーブ大学経済学部助教授、2001年から経済産業研究所研究員を経て、02年より東北大学大学院工学研究科教授に就任。06年~08年に総合科学技術会議非常勤議員、09年~10年に科学技術振興機構特任フェロー、10年~12年は経済協力開発機構(OECD)の科学技術産業局次長を務め、13年に総合科学技術・イノベーション会議常勤議員に就任。東北大学名誉教授。

  • セコム(株) 執行役員 ALL SECOM 担当 兼 Tokyo 2020推進本部長
    杉本 陽一

    1960年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、ボストン大学経営大学院卒業。85年セコム株式会社入社。98年総務庁出向、2000年セコム医療システム株式会社運営監理部長。03年株式会社パスコ代表取締役社長、12年セコム株式会社執行役員に就任。
    15年11月よりセコム株式会社執行役員 ALL SECOM 担当 兼 Tokyo 2020推進本部長、現在に至る。

  • 日本経済新聞社 編集委員
    コーディネーター:関口 和一氏

    1982年一橋大学法学部卒、日本経済新聞社入社。88-89年フルブライト研究員として米ハーバード大学留学。89-90年英文日経キャップ。90-94年ワシントン支局特派員。産業部電機担当キャップを経て96年より編集委員。2000年から15年間、論説委員として情報通信分野の社説を執筆。06年より法政大学大学院客員教授、08年より国際大学グローコム客員教授、15年より東京大学大学院客員教授。09-12年NHK国際放送ニュースコメンテーター。12-13年BSジャパン『NIKKEI×BS Live 7PM』メインキャスター。早稲田大学、明治大学の非常勤講師なども兼務する。著書に『パソコン革命の旗手たち』(日本経済新聞社)、『情報探索術』(同)、共著に『未来を創る情報通信政策』(NTT出版)、『日本の未来について話そう』(小学館)など。

1.基調講演
「変わりゆく社会に、変わらぬ安心を ~未来への挑戦」
セコム(株) 代表取締役社長 中山 泰男

なぜセコムがCo-Creationか。現代のイノベーションのなかで、協働は重要な要素だ。イノベーションという言葉を作った経済学者のヨーゼフ・シュンペーターは、技術革新をイノベーションと呼んだわけではない。生産手段や資源、労働力などをそれまでとは異なる仕方で「新結合」すること、つまり既知物と別の既知物との新しい組み合わせから、新しいアイデアや知を生み出す変革そのものがイノベーションには含まれている。
セコムが変革というとき、それは社会の課題解決を起点としている。生活者視点で潜在ニーズを掘り起こし、新しい価値を創造していく。これを、より早く、より多く実現していくために、オープンイノベーションを推進している。その際、企業や業界の枠を超えたダイバーシティーによる多様な視点での「共創」と、インクルージョン(包括性)による一体感、つまり「共想」が重要で、その柱となるのが、「セコムグループ2030年ビジョン」である。
セコムは、「あらゆる不安のない社会の実現」に向け、セキュリティ、防災、メディカル、保険、地理情報サービス、情報通信、不動産の7事業を展開している。社会に届けたい「安全・安心」を実現するために、各事業の強みを掛け合わせ、社会システムとして展開する「社会システム産業」の構築を目指す中、より明確な羅針盤として、同ビジョンを本年5月に策定した。共想パートナーとともに、安心を提供する社会インフラ「あんしんプラットフォーム」を通じて、「① いつでも、どこでも、あんしん」「② 誰にとっても、あんしん」「③ 切れ目なく、ずっと、あんしん」という3つの特徴あるサービスを創出することで、想定外の事態の発生を想定内にしていき、社会の流れ、生活の流れを止めないようにすることで、社会の生産性とレジリエンスを高めていく。
現代は「VUCA」の時代といわれる。変動(Volatility)、不確実(Uncertainty)、複雑(Complexity)、曖昧(Ambiguity)のイニシャルで、先行きが不透明な時代を意味する。しかし、私はこれを構想(Vision)、理解(Understanding)、明快(Clarity)、加速(Acceleration)と読み替えたい。将来像を共有したうえで、変化の特徴を理解しながら、混沌の中でも筋を通し、課題解決に向かうスピードある変革を実践していきたいからだ。

セコムの歴史は、まさに変革の連続だ。1962年、水と安全はただといわれていた時代に、日本初の警備会社として当社は誕生した。そのわずか8年後、急速に契約が増え続ける中、売り上げの8割を占めていた人による巡回警備から機械警備にシフトすることを創業者は決断した。

現在、セコムは国内227万件のご契約先に機械警備によるセキュリティサービスを提供しているが、これを仮にすべて人的警備で行った場合、1000万人以上の警備員が必要になる。セコムは限られた人の力を機械警備によって増幅することで、増大する警備ニーズを先取りしてきた。
2000年に米クアルコム社が全地球測位システム(GPS)と携帯電話の電波を使った位置情報特定技術を開発したとき、セコムは真っ先に技術契約を結び、独自技術を加えて01年に「ココセコム」という、子どもや高齢者を事件や事故から防ぐための端末を世に送り出した。屋外という新しい警備ニーズを実現するための「共想」といえるだろう。ココセコムで被保護者を無事に保護できた第1号案件の一報を受けたとき、開発を担当した研究員は「やり遂げたときに涙を流せるような仕事をしたいとずっと思っていた。実際に世の中に役立つことができて、思わず目頭が熱くなった」と話している。これはまさに、セコムグループ全社の「想い」を代弁している。また、本年7月には、リストバンド型の「セコム・マイドクターウォッチ」によるサービスを開始した。屋内でも屋外でも、もしものときの救急通報を実現する見守りサービスだが、日立製作所との「共想」によりAI(人工知能)技術を活用して日常的な健康管理機能を融合させ、日々の健康管理と万一の救急対応を切れ目なくつなぐ新しい価値創造を進めてきた。
「変わりゆく社会に、変わらぬ安心を。変わり続けるセコム」。これからも社会の変化の中で生じてくる新たなリスクに対し、それらを捉えて、あるいは先んじて、新たな安全を実現することにより、日常の変わらぬ安心を守り、よりよい未来につなげていく。
最後に、「未来を予測する最良の方法は、未来を自らつくることだ」(ピーター・ドラッカー)という言葉を、皆さまと共有していきたい。

2.プレゼンテーション
「セコムオープンラボで進む“共想” ~ 一周年特別回アイデアプレゼンテーション」 セコムオープンラボ 総合ファシリテーター、東京理科大学 総合研究院 客員准教授
沙魚川 久史

セコムが「セコムグループ2030年ビジョン」に掲げる「あんしんプラットフォーム」の構築にむけては、セコムグループの総力を結集した「ALL SECOM」戦略が一つの要。もう1つの要は、本フォーラムのテーマである「共想」戦略だ。この2つを車輪の両輪として機能させながら、セコムでは連携に力点をおいたサービスイノベーションを推進している。
サービス学では、「Co-Creation」は企業と顧客が相互作用しながら新しい価値をつくる「共創」と訳され、ビジネス界でも企業と顧客、ないし企業間の協働による価値創造を共創と呼び始めている。こうした協働の視点を「サービス事業」のような継続ビジネスに当てはめた場合、長期の事業期間にわたるパートナーシップがより一層求められるため、協働にあたり、未来に向けた共通する「想い」が重要になってくる。このため私たちは、対話によるオープンイノベーションを重視し、これに「共想」の字を当てて、社会との協働を推進している。つまり、本日のイベントタイトル「Co-Creation“共想”フォーラム」は、「共創×共想」をテーマとしたもの。
多様な人々と未来の社会を対話し、共感を生むことで我々のオープンイノベーションは動き始める。この入り口となる役割を担うのが「セコムオープンラボ」だ。
セコムオープンラボの活動は、欧州で進むオープンイノベーション2.0のムーブメントに近い。1.0の場合は企業と企業や団体が1対1でニーズとシーズを掛け合わせる伝統的手法を取るが、2.0では企業や団体に属する個人と個人が集合し、議論の交差点で新しい何かを生み出していく。セコムオープンラボはそうした一人ひとりがそれぞれの視座による専門家として集う「対話と創造の場」として機能している。私たちのプロセスでは、セコムオープンラボの議論で見つかった課題や生まれたアイデアを企業や団体に持ち帰って検討し、また必要に応じてセコムオープンラボに持ち寄って議論をする。この1.0と2.0の往復運動を繰り返すモデルが、私たちの考えているサービスビジネスにおけるオープンイノベーションだ。
過去8回実施したセコムオープンラボには述べ257社、386人が参加し、参加者が仕事でかかわっていない近未来のテーマを設定することで、ビジネスを超えた個人の課題感や想いをぶつけあってきた。参加者を入れ替え新陳代謝を繰り返しながら、多様な視座、多様な専門性、多様な世代で、テーマの中の課題を議論することでリアルな本質に迫ることができる。
重要なのは解決方法でなく、真の課題を議論すること。課題が正しければ解決方法は自ずと正しくなる。したがって、発想やアイデアの優劣ではなく、共感と新たな気づきを得て、参加者の想いが高まることを狙いとしている。共感により協働が生まれ、気づきから新しい社会実装が進む、という具合だ。
世代を超えた初見の人同士が集まって“想い”レベルの議論を始めるには仕掛けが必要。毎回テーマに合わせた異なる工夫で、一人ひとりの“想い”が可視化できるカジュアルな場つくりを行っている。たとえば、学生と企業人でデジタルネイティブの議論をすると、女子学生からは「恋人はバーチャルでいい」という意見が出て、国の研究者からは「若い人だけでなく多くの人が<自分の行動を全部見張って適切に管理してほしい>という価値観を持っていて驚いた。自分の行動原理を他人にゆだねることに積極的な価値を持っている、社会に対する見方を変えないといけない。」と刺激的なフィードバックがある。こうした一つ一つがセコムオープンラボで生まれる“気づき”だ。
議論の成果それ自体以外に、そこに至った議論の流れ/過程に注目すれば、一人ひとりが言語化し可視化する幾つもの想いが気づきの源泉となり、セレンディピティを引き起こして新しい文脈を紡ぐことができる。
さて、こうした共感を基礎とした協働は、既に幾つも実装の段階に入っている。
例えば直近では、カディンチェと、セコムの警備員の研修にVR(仮想現実)を使う取り組みを開始する。NECとは、羽田空港の国際線ターミナルの店舗向けに、AI解析に基づく店舗運営や接客支援情報の提供を始める予定だ。また、フレクトおよびセールスフォース・ドットコムとは厨房内の温度管理に関するIoTの実証実験を開始し、NTTデータとはコミュニケーションロボットを使った価値検証を予定している。この他、多くの共想で、新しい価値創造が随時進行している。

3.来場者全員によるセコムオープンラボ共感アイデア投票会 ~ 最優秀共感表彰式

沙魚川のプレゼンテーションでは、最後に、9月19日に開催した「セコムオープンラボ第8回」において12グループのアイデアから選ばれた4アイデアの紹介がありました。この回のテーマは「未来都市のくらしとまだ見ぬANSHIN」です。4つのアイデアを順にご紹介します。

① 四次元歩行者天国

都市部の土地における「道路の占める面積」は非常に多い(渋谷区は土地の18%が道路)こと、人の過密が進むのに「人の集まる場や遊び場がない」ことを課題として、未来都市の表通りの道路を対象に、道路も歩道も、店舗やビルの軒先もフラットに接続し、時間帯に合わせて道路の機能をどんどん変え、プロジェクションマッピングにより場の雰囲気も変化させていくことを提案。道路の利用に1日24時間のなかで4つのバリエーションを持たせることで、価値も4倍になり、人とのつながり醸成やスペース有効利用を促し、街として活性していくというコンセプト。

② ふるさと2.0を創る街

都市に集う人々それぞれが個別のふるさとを持つ中で、「都市自体への愛着が希薄」になること、また、都市生活が便利になり過ぎて、家でなんでもできるようになると結果的に「交流が減りかねない」こと、が課題。そこで、都市の中心に皆が使える農業・酪農スペースを作り、いつでも気軽に集まって体験できるようにすることを提案。リモートでの作物センシングなどを通じて、種まきから収穫まで体験しながら季節感や時間軸を感じ、人間的な成長の実感につなげていくことで、都市に集まる多様な人たちにとって「共通のふるさと」体験を創造することがコンセプト。

③ TOKYOルネッサンス!

様々なステークホルダーがそれぞれ個別に社会実装を進めるなかで「無秩序に都市機能のインストールが進んでいる」ように見え、これが人々に最適でないと考えた。人流、物流、情報流が混在する未来の都市部で、人/物/情報という都市の機能レイヤー毎に異なるコンソーシアムを設置して、これらがレイヤー毎の機能実装を個別に管理制御しながら都市が稼働していく仕組みを作り、全体最適を図る。人には人に最適な時間の流れを取り戻し、人間中心の都市生活を再考したいというコンセプト。

④ ギルド型まちづくり

未来の都市がどこも似通っていくなかでの「まちとしての独自性」と職住分離が進むなかでの「特定のカルチャーに特化した住環境」を課題として、同じ趣味性や価値観の人が集まって住むことで悩みや生きがいを共有し、専門店が集まることで消費も進むまちづくりを提案。一つ一つのまちの独自性と、特化型のまちが日本中に増えることによる全体としての多様性とを両立させるというコンセプト。

これら4つのアイデアについて、本フォーラムの中で来場者全員による投票が行われ、集計の結果「ギルド型まちづくり」が最優秀共感アイデアに選ばれました。フォーラムの最後には最優秀共感アイデアの表彰が行われ、セコム社長の中山より、これを生み出したグループの参加者それぞれに「セコム・スーパーレスキュープラス」を贈呈しました。

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