ホーム > ホームセキュリティ > 月水金フラッシュニュース > 月水金フラッシュニュース・バックナンバー > 人が意図して起こす火災にはどう対応するか
9月に入り、火災をテーマに色々考えていますが、今週半ばには、例年、放火が増えはじめる10月に入ります。今回は、火を使った犯罪である「放火」について考えてみます。
・放火による火災の特異性
火とは、「モノが、熱と光の発生を伴いながら酸素と結合し続ける状態」のことであり、そのためには「燃えるモノ」、「酸素の供給」、「熱源(点火源)」の3つが必要であることについては、先週のコラムで紹介した通りです。
一般的な環境では、周りの空気から酸素が供給されることを断つのは難しいため、通常の場合、火災の抑制には、燃えるモノ」と「熱源」をコントロールすることで対応します。火災予防で良く言われる「火の用心」は、熱源である「火の元」に注意することで火災を起こさないようにする対策です。
最近も、建築中の家屋に対する連続放火がニュースになっていますが、火災の発生要因で圧倒的に多いのが「放火」及び「その疑い」です。「放火」は、火の不始末と異なり「人の意図的な火付け」であるため、火の元そのものに対しては、注意しようがありません。
・物理的にできる対策
では、放火による火災を防ぐためにはどうすれば良いのでしょうか。放火では、「酸素の供給」と「熱源」である火の元そのものに対する働きかけが難しいため、一般に「燃えるモノ」をコントロールする対策を行います。
「入りやすく見えにくい場所に燃えるモノを置かない」という対策がそれです。現在の住宅は、木造といえども、木がむき出しになっていることは少なく、火を点けようと思っても、そう簡単に火が点くものではありません。そのため、家の裏などの「入りやすく見えにくい場所」に、燃えやすいモノ、例えば古新聞や段ボールなどを置かない対策が効いてきます。
家の周りや近所をチェックし、入りやすく見えにくい場所に置いてある、火が点きやすいこれらのモノを取り除くことで、放火リスクを下げることが可能となるということです。
・その意図に働きかける対策
言うまでもないことですが、放火による火災は、人の意図をベースとした犯罪です。そのため、一般の火災とは異なる対策が可能となります。
「火つけ行為」は、誰が見ても一目瞭然で分かる犯罪行為であるため、人目のない場所や時間帯を選んで行われます。そのため、「周囲の目」を強化する対策が、広い意味での「熱源(点火源)」を無くする対策になるのです。地域が連携して行うパトロールや防犯カメラの導入、声掛けなどが、泥棒だけでなく、「熱源(点火源)」を持ち込ませないという意味で放火予防にもつながるということです。
放火においては「熱源(点火源)」そのものに対する注意は難しい一方で、その熱源を持ち込み、火災を発生させようとする人間に対する働きかけが、一定の効果を持つことがお分かりいただけるかと思います。
火災が多発し、それで人々の命が失われることが多かった江戸時代、放火は最大級の罪と見なされていました。そのため、それを行った犯人に対する刑罰は、衆人の前で「火あぶり」による死刑という極刑でした。そこから時間を経た現在でも、放火は、犯罪種別上、殺人と同じ範疇に属する「凶悪犯」とされ、刑罰もそれと同等になっています。社会に対して、この事実を伝える広報的な対策も、潜在的な放火犯人が持つ犯罪を行おうとする企図を翻意させることにつながります。
・泥棒対策と重なるところがある
通常の火災が、人の意図しないところで発生する「事故」であるのに対して、放火による火災は、人の犯意をベースにして行われる「犯罪」です。そのため、放火のリスクを減らすためには、他の犯罪対策と同様、「入りやすく見えにくい場所」に注意する対策が効いてきます。特に、そこに火が存在するための要素である「燃えるモノ」がある場合には、それを撤去するようにしてください。放火による火災対策は、泥棒対策と重なる部分がかなりあるということを覚えておいていただければと思います。
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