ホーム > ホームセキュリティ > 月水金フラッシュニュース > 月水金フラッシュニュース・バックナンバー > 現金は不思議な力を持っている
・「軽くなった財布」で無駄遣いを反省?
日々の買い物の後で、財布の中の現金の減りようを見て、少し買いすぎたかなと反省することがあります。日本においても、現在は、スーパーの支払いでクレジットカードを使う人を見かけるようにはなっていますが、依然、個人の日々の買い物においては、現金による支払いがごく普通に行われています。
先のコラムでは、過去、事業所に運び込む途上にあった賃金が盗まれた現金盗難事件が、日本において給与振り込みという形で、賃金支払いの際のキャッシュレス化が進展するきっかけの一つになったことについて紹介しました。今回はその続編として、現金に対する人の感じ方について触れ、キャッシュレス化が犯罪者の心理に与える影響について考えてみたいと思います。
・現金が持つ一種の「力」
現金には、一種の「力」があります。昔、現金で賃金が支払われていた頃、働く人はそれを受け取る際には、あたかも賞状を受け取るかのように両手でそれを受けとり一礼するなどの、なかば習慣となった儀式的行為をするのが普通でした。また、家庭に持ち帰られた、その「稼ぎ」は、そこでも一種の敬意をもって扱われていました。賃金が現金で支払われていた頃、月に一度の給料日は、日々働き、その対価で生活を支えている家族に感謝し、働くことの価値を繰り返し確認する日だったと言えるでしょう。
労働の対価である賃金の支払いが現金から口座振込になったことが、日本社会における家族と家庭の在り方を変える要因のひとつになったと言われています。「実物としての現金」が、勤労に関する「汗の結晶」としての意味を持っていたからです。
・キャッシュレスは無駄遣いしやすい?
キャッシュレス社会の進展によって、モノから情報にその形態が変わった「お金」は、それに触れる人間の、動物的な感覚をマヒさせるという側面があります。物を買うことで減った財布の中の現金を見て、「買いすぎたかな」と反省するのは、人が本能的に持つ動物的感覚によるところが大きいのです。
キャッシュレス決済では、物を買いすぎた場合でも、口座残高という数字が少なくなるだけです。財布の中にある現金が直接減る場合と比較して、動物的感覚でそれをヤバイと感じることが少なくなるのは間違いありません。これは、「お金の減り具合」を、「頭で理解するのか」、それとも「腹で感じるのか」の違いであり、多くの人が同意するところではないかと思います。
・だからこそネット泥棒には気をつけて
「一万円紙幣」が登場したのは、昔、東京タワーができた頃でした。そのお札には聖徳太子が描かれ、当時の大卒者の初任給に近い価値がある紙幣にふさわしいように、他のお札よりも大きく、堂々たるデザインをしていました。
この「万札」が登場したことで、まとまった金額の支払いを行う際にも、持ち運ぶ紙幣の枚数は大幅に少なくなり、利便性が向上したとのことですが、一方で、給料袋が突然うすくなったことに対して愕然とした人が少なくなかったとも聞いています。しかし、その時の給料袋には、それでもなお、まだ「現金」は入っていました。さらに時が流れ、賃金が現金払いから口座振り込みに変わった時、明細書しか入っていない給料袋を手にした人々は、間違い無く「ある種のショックのような不思議な喪失感」を覚えたに違いありません。
このように、現金には、不思議な力があります。最近急激に増えてきた不正送金などのネットを介したサイバー犯罪は、直接現金を盗らないたぐいの泥棒であり、それゆえ現金の持つ「不思議な力」を直接感じずに、半ばゲーム感覚でできる窃盗犯罪です。泥棒は、どんな大金を盗ろうとも、現実感がなく、良心の呵責をあまり感じないということです。
それだからこそ、私たちは現実世界の現金を盗らない、しかし間違いなく「お金」を盗っていく最近のサイバー泥棒には注意しなければなりません。現金か、キャッシュレスかを問わず、実際の生活で使っている口座から「お金」が無くなっては私たちの生活は成り立ちません。現実世界にしてもサイバー世界にしても、防犯対策には心して取り組む必要があることがご理解いただけるのではないでしょうか。
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