ホーム > ホームセキュリティ > 月水金フラッシュニュース > 月水金フラッシュニュース・バックナンバー > 失敗は「安全、安心」の元
残暑お見舞い申し上げます。お盆の時期に入り、夏休みシーズン真っ盛りとなりました。この時期、旅行や帰省などで、鉄道や飛行機などの公共交通機関を使われる方も多いことと思います。日本の公共交通機関は、事故が少ないことで知られていますが、一方、世界に目を向けると、この夏は公共交通機関の事故が多いように感じられます。
・人は失敗の方に目が行きやすい
一般に、飛行機の事故など、多くの命が失われる大きな事故が発生した場合、さまざまな調査がなされ、事故の原因を特定します。事故が発生した後に、徹底的にその原因を特定して、それを解決の方向に導く対策は、「人の感じ方の傾向」によく合う対策であると言えるかと思います。
日々、元気に生活している人は、元気な状態が「当たり前」であるため、その理由を意識することはあまりありません。一方、元気に活動できなくなった人は、「当たり前」から外れた状況にあるため、その状況を意識し、原因について考えが及びやすくなります。一般的に言って、私たちは、成功している時よりも失敗した時の方が、その理由に考えが及びやすいという傾向を持っていると言えるでしょう。
これは、試験に合格した人に「うまくいった理由とは?」と聞くよりも、試験に不合格だった人に「その理由」を聞いた方が、より具体的で的を射た答えが返ってくることが多いことからも分かるかと思います。
・その延長上に「セキュリティ対策の宿命」がある
この「人の感じ方の傾向」の延長に、セキュリティ対策全般が持つ、失敗事例しか見えないという宿命が存在します。セキュリティ対策は、それが有効に機能している場合には、そもそもの事故が起こらないのです。そのため、セキュリティ対策を正当に評価することはやさしいことではありません。セキュリティ対策がうまく機能して事故が起こらなかったのか、それともそもそも事故が起こらなかったのかの判断が難しいからです。
ここまでで、セキュリティ対策を有効に行うためには、失敗事例からその原因を特定し、それを避けるという方策をとらざるを得ないことがお分かりいただけるかと思います。防犯対策に関しても、セキュリティ対策の一つとして同様のことが言えます。そのため、防犯対策を考える場合には、それに失敗し犯罪被害にあった事例をベースに、「何をしなかったからその結果になったのか」という理由を特定し、それを解決していくアプローチをとるのが通常です。
・失敗から目を背けてはいけない
毎年、警察は、泥棒の侵入手口を調査・公表しています。このデータを見ると、約8割の泥棒の泥棒は「施錠していない箇所から」、もしくは「開口部のガラスを破って」侵入していることが分かります。一般家庭に侵入する泥棒の手口の傾向が短期間ではそんなには大きくは変わらないことを考えると、「施錠の励行」と、1ドア2ロックや防犯ガラスの採用など、「ガラス周りの強化」を行うことで泥棒の約8割が防げると言えるでしょう。
この、犯罪手口の傾向をベースに防犯対策を行うことは、「何をしなかったからその結果になったのか」という理由を特定し、それを解決していくアプローチそのものです。先のコラムで、いわゆる「三億円事件」が、賃金支払いの口座振込が一般的になるきっかけとなったことについて紹介しましたが、このケースも、失敗の理由を特定し、それを避ける対策としてスタートしたという理解が可能です。
失敗事例から目を背けたくなるのは、人の性(さが)と言っても良いかも知れませんが、「安全、安心」に関する人類の叡智は、これまでの失敗事例を研究することで進歩するという側面があるということを覚えておいていただければと思います。
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