ホーム > ホームセキュリティ > 月水金フラッシュニュース > 月水金フラッシュニュース・バックナンバー > 本能につけ込む犯罪・・・人は言うことを聞くようにできている
・春の風物詩と火の扱い
早いもので今年も3月、奈良の大仏がある東大寺の二月堂では、古く奈良時代から続く春の風物詩「お水取り」が行われるころです。お水取りは、大きな松明(たいまつ)の火明かりに、夜の寺院が幻想的に浮かび上がる光景が印象的で、全国的にも有名な行事となっています。
この行事は、江戸時代には火が建物に燃え移って火災を引き起こしたこともあるそうで、今では厳重な管理のもとに行われています。どのような火であれ、裸火は、燃え移るリスクが大きいため、消火法が進歩した今でも扱いに十分な注意が必要なのは変わりありません。
・「火の扱い」を教わった時のこと
火災にもつながる「火」ですが、これを使いこなすことは人類の進化や文明に絶大な影響を及ぼしました。火は、遠い過去から現在に至るまで熱源の主役であり続けています。火を扱える動物の種が「ヒト」と呼ばれるようになったとも言えるくらい、「火の扱い」は、ヒトと他の動物を大きく分ける一番大きな違いであるとも言えるでしょう。
さて、皆さん、子どものころ、はじめて火を扱った時のことを思い出してみて下さい。おそらくは、親などの大人の監視の下、おっかなびっくりだったことでしょう。もし、その時の皆さんが、火を使ってふざけようとしたら、そばにいる大人は、強い口調でそれを戒めたに違いありません。それでも、その行為を止めなかったとしたら、その大人は、より声を荒げて、それを「すぐに止めるように」急かしたであろうことは想像に難くありません。
・言われたことには従うべし
その際、子どもであった皆さんは、権威のある大人からの強い口調や、急かす口調から「危険」を感じ取り、その「言いつけ」に従って危険を回避していたはずです。
人はこのようにして、「危険」に関する知識や知恵を周りにいる人間から学び、それを回避するすべを身につけながら成長します。皆さんが、無事大人になっているということは、その成長過程において、親や先生など周りにいる人間の言うことを聞き、さまざまな知識や知恵を身につけて、危険を避けながら世の中に順応してきたということを意味しています。
ヒトという種は、他のどんな動物にも増して、先人が蓄えた経験、知識や知恵に依存して生きています。そして、それらがあるからこそ、ヒトは地球上で最強の生き物として存在し続けることができているのです。皆さんが先人から受け継いだその「経験、知識や知恵」などの情報は、ヒトという種を守るために、子どもたちに伝える必要があります。特に、状況が一刻を争う危ない状態であったら、皆さんも、その子を守るために、先人から受け継いだその情報を、より強い口調で、より急かす形で伝えることでしょう。
危険に関する情報は、このようにして、時に強い口調で、時に急かす形で子ども達に伝えられ、そしてそれに従ってきたからこそ、人類は、多くの動物が絶滅するなかで今まで生き残ってきたのです。
・種としての本能を悪用した犯罪
私たち、現存人類は「他者が言うことは信じて従え。年長の人間、自分より詳しい人間には従え。特に強い口調で、急がされたときには、なおのこと」という言い付けを守ってきた種の末裔(まつえい)だとも言えます。この教えは、今までヒトという種を守ってきました。そしてそれはこれからも変わらないでしょう。
最近、ヒトが種として持つこの本能的傾向を悪用し、他者の財物をだまし取る犯罪の手口が生まれました。それが「振り込め詐欺」に代表される特殊詐欺です。特殊詐欺では、時に警察官や弁護士などの「権威をかたり」、また時に時間がないと「急かす形」で、金銭などの振り込みや手交を要求してきます。そして、「他者に従う」ことで種を維持してきた人類の末裔である私たちは、このような手口に対して非常に弱く、簡単にその口車に乗せられてしまうのです。
詐欺被害では、「自分だけはダマされない自信がある」、「ダマされるのはダマされる方が悪い」という言葉を聞くことがありますが、私たち人類は、その本能として「人の言うことに従う」傾向を持っていることをぜひ頭に留めておいていただければと思います。
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