ホーム > ホームセキュリティ > 月水金フラッシュニュース > 月水金フラッシュニュース・バックナンバー > 屋外コンサートで起きた大事故からリスクを考える
・隣の国で発生した大事故
隣の国で行われた屋外の音楽コンサートで、地下駐車場の換気口に設置された金属製の格子状のフタが、そこに乗っていた人々の重みで崩落し、多くの人が命を落とすに至った転落事故が発生しました。
換気口の上に乗らないようにとの注意の会場アナウンスはあったものの、その注意は、少しでもステージが見やすいようにと、かさ上げされた換気口の上に乗った人々の耳には入らなかったと報道されています。
・多くの人々が集まっているというリスク
過去のコラムで紹介しましたが、多くの人々が、一つのところに集まっている状況というのは、相当大きなリスクをはらんだ状態であるということを、今一度確認していただければと思います。
「群集」もしくは「雑踏」と呼ばれる、不特定の多くの人々が一つところに集まっている状況には、(1)「付和雷同」性、(2)「自己本位」性、(3)「興奮」性、の3つの特性があるとされています。今回の、屋外のオープン空間で行われた音楽コンサートでは、残念ながら、この3つがすべて成り立ち、事故につながったのではないかと考えられます。
・今回の事故では・・・
まずは、オープン空間における音楽コンサートを聞こうと集まった不特定多数の人々の意識です。管理されているという感覚が乏しいオープン空間という環境が、そこに集まった人々に指示に従うという意識を希薄にした可能性は十分に考えられます。
それが、少しでもステージが見やすい、かさ上げされた場所に立つという誰かが行った行為に対し、深く考えずに同調する「付和雷同」を誘発した大きな要因になったことは否定できません。
また、ある共通の目的を達成しようとする人々が集まった不特定多数の集団では、一人ひとりに「われ先に」という感情がめばえ、それが「自己本位」の行動につながります。今回のケースでは、「とにかく(自分は)ステージが見やすい場所に移動する」という行為がそれにあたりました。
これに加え、ある共通の目的で、多くの人々が集まっているという特殊な状況は、一人ひとりに、ある種の「興奮」状態をもたらします。今回のような音楽のコンサートでは、音楽それ自身が興奮性をもたらすものでもあることから、特にその傾向が顕著に見られて、注意のアナウンスが、人々の耳に入らなかったのではないかと思います。
・それは日本でも同じ
日本でも、これと同じ状況は容易に発生します。少し前では、サッカーワールドカップの予選を日本が突破した夜の渋谷スクランブル交差点、最近では、地元プロ野球チームがリーグ戦を制した夜の道頓堀川の橋の上などがそうでした。そこには、サポートチームの勝利に高揚した人々が集まり、興奮のるつぼ、躁(そう)状態に入った人々は、誰彼となく大声を発し、ハイタッチや胴上げ、飛び込みなどの行動を繰り返して、ひとつ間違えば、大きな事故につながる可能性もありました。
また、毎年日本各地で行われる「お祭り」でも、集まった人々の極度の興奮状態によって、事故が起こることは少なくありません。
・自らを守るために
このような群集の特性は、群集の中に居る一人ひとりの人間が、一種の催眠状態になることから起こるものです。群集の中に身を置いたとき、自分がいるその集団には、先にあげた3つの習性があることを、心のどこかで思い出すようにしていただければと思います。
多くの人々が集った状態というのは、相当大きなリスクをはらんだ状態であるということを、常に意識するようにしてください。見知らぬ不特定多数の人々が集まった「群集」の中に身を置いたとき、最終的に、自分の身を守るのは、皆さんご自身にしかできないことなのです。
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