ホーム > ホームセキュリティ > 月水金フラッシュニュース > 月水金フラッシュニュース・バックナンバー > 模倣と数学 〜 例題をいかに多くこなしているか 〜
・古くから日本人はまねの天才
前回のコラムでは、世界で通用するジョークにもなっている「周りと同じか?」という、日本人が持ちがちな行動基準を紹介しました。古(いにしえ)の時代から、日本人は、周りに合わせ、模倣することで自らのものとする達人でした。政治の制度(律令制)しかり、都(みやこ)の物理的な形状(条坊制)しかりです。
日本の歴史を大きく動かした火縄銃も、1543年に伝来するやいなや、それを模倣した銃が全国で生産されるようになりました。その結果、戦国時代末期には、それが日本に入ってから50年も経っていないにもかかわらず、全国で50万丁を超える銃があったと言われています。これは当時、国内にある銃の数としては、世界最大の数だったそうです。
ひらがな、カタカナなどの私たちが使っている文字も、中国の文字である漢字を、私たちの先人が、日本語の表記のために改変したものであることは周知の通りです。
・模倣し、さらにそれを超えることで人類は発展
「鵜の真似をするカラス」、「猿まね」などの、他人の行動を、よく考えずにまねすることをいさめる言い回しもありますが、あくまでも「よく考えずに」、「単に機械的に」まねすることへの注意であり、まねすること自体を戒めているわけではありません。
一般に世の中では、まずは模倣、まねをして基本を身につけ、それを応用する形で「新しい何ものか」を生み出すことが求められます。
「万学の祖」とも呼ばれるギリシア哲学の偉人、アリストテレスは、模倣は人間の自然の本性であり、人間は猿まねを超えた模倣の能力を発揮することで他の動物を超える存在となったと言い、「人間はこの世界で最も模倣能力のある生き物である」と結論づけています。人類の文明は、他者の行為を模倣し、さらにそれを超えることで発展してきたと言っても良いでしょう。
・高校までの「数学」で求められる能力とは?
高校までの学校で教えられている数学の教科書を見ると、基本概念、公式などの説明の後に、問題の解き方が示された例題があり、次にその例題に準じた方法で解ける練習問題、最後に例題の解き方を組み合わせるなどしてはじめて解ける応用問題が、この順番で並んでいます。
少なくとも高校までの学習内容では、数学ができる人というのは「例示で示された問題の解き方をたくみに模倣し、その解き方をみかけ上、新しい問題に適用して解くことができる人」と言っても過言ではありません。その模倣の能力が世で役立つからこそ、古今東西を問わず、数学は必修科目であり、入試においてもその能力が問われ続けているのでしょう。
学校を卒業すると、「数学は使わない、役に立たない」と言われたりもしますが、学校を出た後で、万人に必要とされる一般的な数学の能力とは、前例を模倣し、それを新しい課題に応用して解く能力と言えるのではないかと思います。
・数学解法的アプローチは、セキュリティの分野でも
防犯の分野では、しばしば新しい犯罪手口が現れたと話題になることがあります。しかし、その手口が本当に新しいことはあまりなく、大体は、どこか別の場所で過去に行われた手口の模倣や派生的手口であることがほとんどです。
そのため、セキュリティ対策で、この新しい手口に対応するためには、過去の手口をいかに知っているか、また、その手口に対して行われた過去の対策を、うまく模倣できるか、さらにそれをいかに応用することができるかがキーとなります。
定評のある「数学の参考書」は、例外なく、多くのパターンの例題とその解き方が、網羅する形で例示されています。そうでないと、それを組み合わせて作られた、みかけ上の新しい問題に対応できないからです。セキュリティの分野では、この「多くのパターンの例題の解き方」を知っているかは、どれだけの多くの事例を経験しているかに左右されます。そして、この「多くの事例の経験」こそが、セコムの最大の強みなのです。
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