ホーム > ホームセキュリティ > 月水金フラッシュニュース > 月水金フラッシュニュース・バックナンバー > たまにしか起こらない出来事を相手にするということ
・遠い昔の5月25日の夜空に出現
本日は5月25日。遠い遠い昔、5月25日の夜空に、当時の人々が恐れていた「ある存在」が現れた記録が残っています。
秦の政王が中国を統一し、始皇帝を名乗るすこし前の紀元前240年5月25日、夜空に大きなほうき星(彗星)が観測されました。中国の歴史書「史記」に残された記録です。これが、現在言うところのハレー彗星が、正式に特定できる形で、歴史に記された最古の記録なのだそうです。
・17世紀にその正体を予言
17世紀半ばに生を受けた、エドモンド・ハレーは、1682年の夜空に現れた彗星に並々ならぬ関心を示しました。彼は、万有引力の法則を発見したニュートンと同時代を生きた人で、ニュートンの理論をこの彗星に適用して計算することで、当時としては画期的な、ある仮説を導き出したのです。
当時、彗星は、この世ならざるモノと考えられており、洋の東西を問わず、戦争や飢饉、疫病など、悪い出来事の前兆(凶兆)として恐れられていました。夜空に忽然と現れ、消えて行くことから、夜空にいつもある他の天体、恒星や惑星、月などとは異なる神秘的な存在だったのです。
彼の仮説は、彗星と呼ばれる天体も、他の惑星と同様に「太陽の周りを楕円を描きながら公転している存在」であるというものでした。そのうえで、1682年に出現した彗星が、1531年と1607年に観測された彗星と同じモノであり、約76年の周期で太陽に近づき、人々の前に、繰り返し出現している存在であると主張したのです。そのうえで、次にこの彗星が出現するのは1758年であると予言しました。
・予言の彗星が確認
ハレーは、この年を待たずして世を去ってしまいましたが、しかし彼の予言した1758年、件(くだん)の彗星は夜空に現れ、彼の仮説が正しいことを示したのです。この功績から、この天体には彼の名が付けられ、今では誰もが知っている一番有名な彗星となっています。
紀元前240年5月25日、はじめて人類の歴史に記録をとどめたハレー彗星ですが、1682年にその正体が予言され、1758年にそれが確認されるまでの約2000年の永い間、彗星の出現は、人々の恐れの対象でした。
ハレーは、夜空に忽然と現れるように見える彗星も、ニュートンやケプラーの発見した自然法則に則って動いている「物理的な存在」であることを示し、その出現が決して神秘的なものではないことを証明したのです。
古(いにしえ)の人々にとって、夜空に忽然と現れる彗星は、正体の分からない恐ろしい存在でした。幽霊の正体見たり枯れ尾花。ハレーは冷徹な目でこの恐れの対象を観察し、当時の人々の観念を打ち破ったと言えるでしょう。
・頻繁には起こらない出来事を相手にするのは難しい
彗星の出現のように、頻繁には起こらない出来事の何たるかを明らかにするためには、永い時間の観察が必要です。ハレーが、彗星の正体が明らかにできたのも、彼の前の時代に生きた先人達が、夜空に現れた彗星の詳細な記録を残していたからこそです。
まれにしか発生しない事象を科学するのは、宿命的に永い時間の観測が必要であり、決して簡単なことではないのです。直近でハレー彗星が現れたのが1986年。次は2061年、さらにその次は2134年です。実際、この彗星のさらなる調査は、私たちの世代では難しく、次の世代に期待するしかありません。
ここまで、ハレー彗星が人類の歴史に現れた日にちなみ、まれにしか発生しない事象を扱う際の難しさについて考えましたが、セキュリティでは、そんなには頻繁に発生しない事故を対象にしなければならないことが一般的です。
そのため、セキュリティを科学するためには、長い期間の息の長い観測が必要となってきます。セキュリティの研究には時間がかかるということです。セコムのセキュリティに関する知見、ノウハウは、50年以上前の創業以来、長い時間をかけて見出され、蓄積されてきたものなのです。また、この営みは現在進行形でもあり、これを続けることは、私たちの次の世代、また次の世代、まだ見ぬ未来の人々が安心して日々を過ごすために、今のセコムに課せられた責務なのではとも思います。
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