ホーム > ホームセキュリティ > 月水金フラッシュニュース > 月水金フラッシュニュース・バックナンバー > 特殊詐欺にも応用できる泥棒対策の手法とは?
・防犯環境設計という考え方
周りの環境をコントロールすることで、犯罪に立ち向かう防犯手法の一つに「防犯環境設計」があります。防犯環境設計の考え方は、本コラムでも「家に入る泥棒への対策」としてしばしば触れています。今回は、この防犯環境設計の手法を、今世の中で問題になっている「特殊詐欺」に応用することを考えてみます。
防犯環境設計は、(1)自然監視性の確保、(2)領域性の確保、(3)接近の制御、(4)対象物の強化、の4つの要素からなっています。もともとは、泥棒などの犯罪を対象にした防犯理論ですが、昨今問題になっている特殊詐欺などの知能犯に対して応用することも可能です。
特殊詐欺を考えた場合、「自然監視性の確保」や「領域性の強化」を適用するのは難しいため、主に「対象物の強化」と「接近の制御」で対抗していくことになります。
・特殊詐欺の場合の「対象物の強化」とは?
特殊詐欺への「対象物の強化」に相当する対策は、人々の意識を高め、だまされにくいメンタリティを涵養する啓発活動です。具体的には、詐欺の手口紹介や、注意喚起などの取り組みなどです。
一方、人々への啓発と注意喚起が盛んに行われているにもかかわらず、詐欺被害が頻発している昨今の状況を考えると、「対象物の強化」だけで詐欺被害の対策を行うことには、残念ながら限界があると言っていいでしょう。
・「接近の制御」の手法も有効
今回は、特殊詐欺への対策として、「対象物の強化」にあたる啓発活動に加えて、「接近の制御」にあたる手法を提案したいと思います。
泥棒に対する「接近の制御」は、対象に近づく際の足場を取り除いたり、動線に障壁を置いたりすることで、犯罪を行いにくくすることで実現します。この対策を「特殊詐欺」に適用するとどうなるでしょうか? 特殊詐欺とは、何らかの通信手段を用い、対象者と直接対面せずに遠隔で行う詐欺の総称です。現在、この通信手段には「電話」が使われるのが一般的です。この電話というアプローチ手段に「接近の制御」を仕掛け、詐欺師を対象者に近づきにくくすると、詐欺という犯罪に対する対策となります。
・「接近の制御」を実現する具体的な方法とは?
「電話というアプローチ手段に仕掛ける『接近の制御』」を具体的に言うと、対象者の自宅の電話に「留守電」を設置するということです。留守電が録音モードに移行するタイミングを短く設定すればなおのこと効果的です。留守電が、被害者へのアプローチ手段に置く「障害物」になるということです。
一般に犯罪者は「証拠」を残すことを嫌います。そのため、詐欺師は、留守電に自分の声を残したがりません。通常の場合、留守電には、名前や折り返しの連絡番号、用件を録音しますが、詐欺師の場合は、留守電につながった段階で電話を切ることが多くなるということです。
留守電では、受話器を取らずとも相手が録音を行っている声を、スピーカーで聞くこともできるため、普通にかかってきた電話の場合は、相手が留守電に録音を行っている間に、受話器を取って普通に会話をすることが可能です。
・「留守電」は防犯機器?
詐欺師の多くは、「誰でも良いから簡単にだませる人間からお金を詐取しよう」という魂胆で電話をかけてきます。そのため、何かしらの「面倒なこと」があると、矛先を、その相手からは外すことが多くなります。留守電は、この「面倒なこと」に相当します。
携帯電話やスマートフォンなど電話サービスの多様化に伴い、家電量販店などでは、以前に比べて一般電話で使う留守電を見ることは少なくなりました。一方、今回紹介したように、留守電は、特殊詐欺に対しては「接近の制御」という防犯手段になり得ます。私たちは、留守電を「防犯機器」としてもう一度見直してみても良いのかも知れません。
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