ホーム > ホームセキュリティ > 月水金フラッシュニュース > 月水金フラッシュニュース・バックナンバー > 不審者はなぜ不審なのか
師走も下旬に入り、町内会などのコミュニティでは、不審者を用心する自主防犯パトロールなどの防犯活動が盛んに行われるようになっています。私たちがやっている「子どもの防犯ブログ」では、過去、「親御さんがどのようなことを不安に思うか」について、アンケート調査を行ったことがあります。
その結果、お子さんの防犯に関して不安に感じていることとして、39%の方が「不審者に声を掛けられたこと」と回答しています。また、警察などが行っている犯罪情報メールサービスでは、「不審者情報」というコーナーがあり、地域に不審者が出たことをアナウンスしています。
さて、それでは、どのような人物を「不審者」と呼ぶのでしょうか。色々な考え方があると思いますが、ここでは「その場所にいる人が、おかしいと感じ、そのおかしい感じ(不審感)のために、なんらかのアクションをとりたくなる恰好や挙動をしている人物」として考えます。
たとえば、本来、無人のはずの閉店後の売り場に人がいた場合、それを発見した店の人は、その人物が「なぜそこに居るのか」を確認したくなります。このような人物は「不審者」です。また、目出し帽を被って街を歩いている人間がいたら、この人物からは、遠ざかりたくなります。この人物も「不審者」ということになります。
さて、それでは周りにいる人は、なぜその人物を「不審者」だと判断したのでしょうか。意識しているかどうかは別として、人は、「その人物がいる場所の統計的性質」を把握して、その統計的性質から逸脱した性質の人物を「不審者」としているのです。「その場所にいることが」おかしい、不思議である、不自然だ、という判断のためには、普段にその場所にいる人々の性質をよく知っている必要があります。
売り場に人が居たとしても、それが開店時間であれば、人が居るのは当たり前で、その人物は「不審者」になりません。また、そこにいるすべての人が、念入りな防寒対策をしている厳寒のスキー場では、同じ目出し帽を被っている人物でも決して不審者とは呼べません。目出し帽を被っているのが不自然ではないからです。
すなわち、たとえどのようなベテランのセキュリティスタッフであろうとも、まったくの条件なしでは、ある人物を、いきなり不審者かどうかを判断することはできないと言えます。
不審者の判断には、ある場所にいる人々について、平時における「集団としての性質」「時系列的な性質」を把握しておくことが欠かせません。これをきちんと把握していないと、ある人物が、「周りと違う」と「いつもと違う」という判断はできないのです。
セキュリティという職種に、経験が必要な理由がここにあります。異常かどうかを判断するためには、そこの場所の、その業態の「常なる時」の性質を熟知している必要があります。そうでないと「異常」、すなわち「常なる時から異なる状況」を判断できません。
ホームセキュリティなどのセキュリティサービスを提供する場合、歴史や対応件数などの経験によって、人や組織に蓄積されたノウハウが重要になってくることがお分かりいただけるかと思います。
(参考)
・「子供の防犯に関するアンケート」不安なのはやはり不審者対策(セコム「子供の防犯ブログ」 2010/8/19)
・安心豆知識「泥棒の服装と不審の判断基準」(2009/11/02)
・安心豆知識「名人が名人である理由 勘を養うには何が必要か」(2010/9/27)
セコムIS研究所
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甘利康文
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