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沖縄をはじめ全国で「麻疹」(はしか) の患者発生が相次いで報告されており、行政機関が注意を呼び掛けています。麻疹は、決して侮ってはいけない感染力が極めて強い感染症の一つで、歴史的にも定期的に大流行を繰り返しています。リスクマネジメントについては、過去何回か触れていますが、今回は、麻疹などの病気への対応を具体例として、改めて考えてみたいと思います。
・リスクマネジメントとは
「リスク」とは、「危険」や「損失発生の可能性」を意味する言葉です。また、「マネジメント」は「管理」や「処理」「経営」という意味が一般的でしょう。直訳すると「危険の管理」といった意味になる「リスクマネジメント」(以下、RM)について、もう少し詳しく述べてみます。
日常生活には、常にさまざまなリスクがあります。しかし、単にリスクがある段階では損失が発生している状態ではないため、何の問題もありません。どういうことかと言うと、人には、例外なく「感染症にかかるリスク」がありますが、通常は発病しておらず、感染もしていません。リスクがあっても、何の問題も発生していないわけです。
一方、普段は潜在的に存在しているリスクは何らかの要因によって、事故やトラブルなどの形で姿をあらわし、社会や、組織、そして個人の生活に悪影響を与えます。感染症では、病原体に感染、発病するということです。この「リスクの具現化」は、自身の健康だけでなく、関わっている人々や仕事などに影響を与えることで、様々な形の「損失」として姿を現してきます。そのため、発生するかもしれない損失を最小に留めるように、リスクに関わる必要が出てきます。この「損失を最小に留めるようにリスクに関わるためのテクニック」がRMです。
・リスクマネジメントの3つの観点
リスクマネジメントには、以下の3つの観点があります。
@リスクコントロール
麻疹は、予防接種によって「感染、発病する可能性を小さくすること」ができます。この「損失を発生させる事故発生の可能性を小さくする対策」が、リスクコントロール(RC)です。感染症では「予防接種を受ける」、「感染源を遠ざける」など、生活習慣病では「食事に気をつける」、「適度な運動を心がける」などが、病気の発生可能性を小さくする対策、すなわちRCになります。
Aクライシスマネジメント
RCによって事故の発生を抑え込み、リスクをリスクのまま留め置くのがベストのRMなのですが、事故の抑え込みに失敗する、もしくはその手段がないなどの理由により、残念ながら事故が発生してしまうことがあります。この不幸にして「事故が発生してしまった際に、それによる損失を出来るだけ小さく抑え込む対策」が、クライシスマネジメント(CM)です。
例えば「治療」は、病気に罹患した場合の代表的なCMです。インフルエンザは、予防接種(RC)をしていたとしても感染し発病してしまうことがあります。その際、現在では、抗インフルエンザ薬の投与によって、比較的短期の治癒が可能となりました。一方、麻疹の場合、残念ながら抜本的な治療法が開発されておらず、対症療法をしながら治癒を待つといった消極的な対応しかできません。そのため、麻疹では、予防接種を受けることで「そもそもの感染を防ぐ」こと(RC)が重要になります。
また、生活習慣病では、症状の出ていない「病気の芽」を早期に見つけ、早期に治療を行うこと、発病による損失を小さく抑え込むことができます。その意味で、定期的に健康診断を受診し、その結果を元に健康管理を行うことはRCであり、CMでもある、有効なRMの一つになります。
Bリスクファイナンス
RMは、損失を発生させる事故の発生可能性を小さくする対策である「RC」、発生してしまった事故による損失を出来るだけ小さく抑え込む対策である「CM」に、「発生した損失を金銭的に担保する対策」であるリスクファイナンス(RF)を合わせて3つの方向性から成り立っています。
病気の場合は、例えば「健康保険」がRFにあたります。健康保険は、日本では社会制度となっているため、「治療費が払えない」ことが社会問題として取り上げられることはあまり多くありません。一方で、今後、人々の高齢化がますます進む日本においては、医療費が高額に及ぶ場合に備えて、民間の医療保険等への加入なども検討する必要が増してきているのではとも思います。
・「リスクの具現化を防ぐ」ことを第一に
今回は、「麻疹」の発生を契機に、病気への対応を具体例としてRMの3つの要素について考えました。病気に限らず、どのような種類のリスクであっても、RCによって「リスクの具現化を防ぐ」のがRMのベストであることは変わりません。感染力が非常に強い麻疹の場合、人が取れる唯一ともいえる対策が「リスクの具現化を防ぐ(RC)」ための予防接種です。一般に、子どものころの予防接種の接種履歴は「母子手帳」に残されています。この機会に、ご自身の予防接種の記録を確認し、各種感染症に対する自身の免疫の"棚卸し"をされてみてはどうでしょうか。
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