深刻化する内水氾濫のリスクと対策
▼ 河川がない市街地でも洪水は起きる
大量の雨や台風などが原因となる水害は、「外水氾濫」と「内水氾濫」の2種類に大別されます。
外水氾濫は、河川が急激に増水し、堤防から水があふれたり、堤防が決壊したりするときに発生する水害。
内水氾濫は、市街地などに降った雨が排水設備の処理能力を超え、マンホールなどから水があふれたときに発生するものです。
内水氾濫は、河川が近くにない市街地、ビルが立ち並ぶ都市部でも起こり得ます。
下水道の排水処理能力は、1時間あたりの降水量50mmが一般的。
近年は豪雨の頻度が増加傾向にあり、降水量100mmを超えるような猛烈な雨が各地で発生しています。
梅雨時は、活発な梅雨前線によって大雨がもたらされることも多く、水害への警戒が必要です。
近隣に河川がなくても、内水氾濫の危険性があります。
市街地でも、水害の備えを怠らないようにしてください。
▼ 内水氾濫のリスクをハザードマップで確認
自宅周辺の内水氾濫リスクや、避難時のルートとして避けるべきエリアは、「内水氾濫ハザードマップ」で確認できます。
各自治体が作成しているもので、地震や洪水のハザードマップとは別につくられていることが多いようです。
自治体のホームページで確認するか、国土地理院のハザードマップポータルサイトから探すと良いでしょう。
●ハザードマップポータルサイト
自治体によっては、「内水氾濫ハザードマップ」の用意がないところもあります。
「内水氾濫ハザードマップ」がない場合、直接自治体に問い合わせるのもひとつの方法。
マップがなくても、自治体では過去に浸水被害があった箇所を把握しているはずです。
ほかにも自身で内水氾濫のリスクを知る方法もあります。
それは、土地の高低差を読み取ることです。
水は高いところから低いほうに流れるもの。
川の洪水による外水氾濫と同じで、内水氾濫も土地の高低差で被害の度合いが変わってきます。
周辺よりも低いところに自宅が位置する場合、内水氾濫の影響を受ける可能性が高いでしょう。
道には意識していないと見過ごしてしまうような傾斜が多いものです。
意識的に高低差を確認しましょう。
▼ 水害の避難所は地震の避難所と異なる場合も
内水氾濫発生時の市街地を避難するのはとても困難です。
排水しきれずにあふれ出した水でマンホールのふたが外れ、落下してけがをしたり、命を落としてしまったりしたケースも過去にはありました。
道が濁った水で覆われてしまうと、水面下の路面を目視できなくなります。
目視で状況がわからないため非常に危険です。
避難は被害が発生する前に開始するのが鉄則。
内水氾濫の場合、排水処理設備の状況である程度はリスク予測が可能です。
防災警報で浸水の危険性が告げられたときは、早めに避難を開始してください。
地域によっては、水害時の避難所が地震の避難所とは別に設けられている場合があります。
低い土地にある避難所は浸水する可能性が高いためです。
自身が認識している避難所が、水害時にも対応しているかどうかを確認しておきましょう。
内水氾濫や水害のハザードマップで避難所の場所をチェックしておいてください。
現地に災害別の対応状況を示した看板が設置されている場合もあります。
浸水がはじまって避難できないときは、自宅の高い場所に「垂直避難」も考えてください。
内水氾濫は比較的早く水が引くことが多いですが、数日間は自宅で過ごせる備蓄品の準備は必要です。
水害発生時には、浸水による電気設備の故障や排水管の故障も考えられます。
ライフラインが使えなくなる可能性を考慮し、水や食料だけではなく、カセットコンロや非常用トイレなどの準備も忘れないようにしましょう。
特にコンクリートで覆われた土地では、どこでも内水氾濫が起こり得ます。
誰に対しても他人事ではないということです。
地震と同様に身近な災害のひとつとして対策しましょう。
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<監修>
濱田宏彰
セコム株式会社IS研究所リスクマネジメントグループ
シニアリスクコンサルタント/防犯設備士/防災士/日本市民安全学会常任理事
侵入窃盗を中心にあらゆる犯罪情勢の調査研究を継続。各方面に対しセキュリティコンサルティングを実施。犯罪傾向・統計情報を基にリスクマネジメントの観点から、「安全・安心」な暮らしのためのセキュリティについて研究する日々。
地域の自主防災会では常任委員を務め、日々の防災活動にも注力。
また書籍『セコムが教える防犯プロのアドバイス』『タイプ別にみる働く女性の防犯対策 ライフスタイルWoman360°』などの執筆・監修に携わる。
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