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子どもが被害者となる略取誘拐事件は増加傾向

 前回に引き続き、先日発表になった「平成28年の犯罪情勢」から、未成年者の略取誘拐・人身売買について見てみます。
 略取誘拐等は、殺人、強盗、放火、強姦、強制わいせつと一緒に、重要犯罪に分類されています。かつては、身代金目的も少なくなかった略取誘拐ですが、近年はその傾向はかなり息をひそめ、この10年では多くても年間3件にとどまっています。ちなみに、これらは全て検挙されています。その一方で、いたずら目的やわいせつ目的といったもので、誰でも被害者になりうる状況になってきています。

 略取誘拐等の統計を見ると、この4〜5年、やや増加傾向となっています。昨年2016年は、2007年以来、9年ぶりに認知件数が200件を超えています。
 図は、年齢層別の略取誘拐等の人口100万人当たりの被害者の推移を示したものです。いずれも、傾向を把握しやすくするために、3年移動平均で示しています。例えば、2016年は、2014年から2016年までの合計を3で割ったものです。これを見て、まずわかることは、その他に含まれる大学生以上の大人の被害が1件以下であるのに対し、高校生以下の未成年者の被害が、一桁大きいということです。

 また、未就学児童についてはほぼ横ばい傾向となっている一方で、小学生、中学生、高校生の被害は増加傾向となっています。図は、移動平均で示しましたので、滑らかに変化しており、それぞれのラインが離れて示されています。しかし、移動平均の数値ではなく、実際の件数では増減があり、昨年の2016年は、100万人当たりの件数で、小学生10.3件、中学生10.3件、高校生10.6件とほぼ同数となっています。
 先に示しましたが、被害件数はほぼ10年ぶりの高い水準となっています。また、女性の割合が高く、82.5%が女性の被害となっています。よく「あやしい人に気を付けて」と言いますが、見た目はあやしくない"面識のある人"による被害が多くなっています。その場所での雰囲気から危険を察知する危険回避能力を、大人たちは子どもたちに教える必要があります。

セコムIS研究所
リスクマネジメントグループ
濱田宏彰


年齢層別の略取誘拐・人身売買の被害件数(3年移動平均)(100万人当たりの件数、警察庁の資料をもとに作成)

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