ホーム > ホームセキュリティ > 月水金フラッシュニュース > 月水金フラッシュニュース・バックナンバー > 枯れた技術、いぶし銀の技術の有用性
11月も半ばに入り、ずいぶん肌寒くなってきました。北国からは雪のたよりが届き、太平洋側では「木枯らし」が吹くころかと思います。
枯れた技術とは
この時期の北風、「木枯らし」は、木の葉を落とし、木の生気を失わせることからこのように呼ばれていますが、日本語の「枯れる」という動詞は、「植物が生気を失う」という意味だけを持つわけではありません。手持ちの辞書で「枯れる」を引くと、「草木が死ぬ」という説明の他に「人格や芸などに深い味わいが出る」といった別の説明も出ています。
技術の世界で「枯れた」技術と言うと、「すでにトラブルが出尽くしており、かつそれが解決され尽くしている」といった意味で使われることが多いのです。技術者が「この技術は枯れている」というのは悪い意味ではなく、むしろ良い意味で使われることのほうが多いと言えます。
IT業界で進化に取り残されないためには
つい先日、パソコンをタブレット端末のように扱えるようにする基本ソフトの最新版が市場に出ました。コンピューター、そしてネットワークの世界は、日進月歩ならぬ「秒進分歩」とも言われるように、ものすごい勢いで進化してきました。
一方、この世界では、技術が十分に検証されないまま実用化されることも多く、それが予期せぬトラブルにつながることも多く、コンピューターの基本ソフトなどは、トラブル改修のためのプログラムが、トラブルが見つかるたびに開発され、ネットワークを介して提供されています。
「まず、走らせてみて、トラブルが発生したら走りながら直していこう」というのが、コンピューターやネットワークの世界の流儀になっているようです。この、「とにかく使ってみて問題があったら使いながら修正していこう」というITの考え方ですが、電子機器がネットワークにつながるスマート化が進むにつれ、一般の家電製品にも浸透してきています。
社会インフラを支える技術の要件とは?
一方、世の中には「走らせてみて、トラブルが発生したら走りながら直していこう」という流儀が通用しない分野も存在します。24時間稼働している社会インフラを構成する機器などがその分野の代表です。セキュリティを維持している機器もこの範疇です。このような分野においては「枯れた技術」を積極的に採用することが欠かせないのです。
枯れた技術は、そうとう昔の技術であることも多く、そこには「新鮮さ」、「派手さ」はありません。しかし、「すでにトラブルが出尽くしており、かつそれが解決され尽くしている」ため、常に安心して使うことができます。セキュリティをはじめ、24時間稼働し、世の中を支えている機器に求められるのは、トラブルが出尽くし、解決され尽くしている「枯れた技術」です。日本語には、名人の域に達した芸などを「派手さはないものの価値がある」という意味で、「いぶし銀」と呼びそれを讃える表現があります。
技術における「いぶし銀」の必要性
かつて日本のパソコン業界では、1980年代半ばから10年以上に渡って一世を風靡したパソコンのシリーズがありました。今のオフィスや個人宅では、これを見ることはほとんどなくなりましたが、工場などの製造現場では、現在においても、このパソコンが使われている例は少なくないのです。実際、このパソコンの工場向けバージョンに対しては、現時点でも保守サービスが提供され続けています。
世の中の変化の象徴としてITに人々の関心が向き、日進月歩、秒進分歩は当たり前、新しい技術ほど良いと考える向きもあります。しかしながら、セキュリティをはじめとして、世の中のインフラを支える分野では、最先端技術が常に良いとは言えません。世の中には「枯れた、いぶし銀の技術」が求められている分野が存在するというということも記憶に留めておいていただければと思います。
(参考)
・安心豆知識「ネット家電のセキュリティ対策」
・安心豆知識「スマート家電普及がもたらす新たなセキュリティ上のリスク」
・安心豆知識「遠隔操作されるというリスク」
セコムIS研究所
セキュリティコンサルティンググループ
甘利康文
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