ホーム > ホームセキュリティ > 月水金フラッシュニュース > 月水金フラッシュニュース・バックナンバー > スマート家電普及がもたらす新たなセキュリティ上のリスク
前回のコラムでは、インターネットにつながったスマート家電の利用者が情報サーバーへの加害者になってしまうリスクについて紹介しました。今回は、また別の観点から、スマート家電のセキュリティについて考えてみたいと思います。
スマートエアコンに「待った」が
先日、大手家電メーカーが開発した、スマートフォン(スマホ)によって遠隔でコントロールができる「スマートエアコン」の発売に対し、国から「待った」がかかりました。マスコミやネットで話題となったため記憶に残っている方も多いかと思います。この「待った」は、最終的に、電源を遠隔で入れる機能を外すことで落ち着きました。スマホを使って遠隔から電源を入れられるエアコンは、家電製品の安全基準について定めている「電気用品安全法技術基準」に合わず、火災などのリスクがあるというのが理由のようです。
「スマート家電+スマホ」による新しいリスク
実は、スマホによる遠隔地からのエアコンのコントロールには、火災発生リスク以外の懸案事項があります。スマホの情報セキュリティのリスクが、実世界における防犯上のリスクになる可能性があるという懸案です。
エアコンの普及により、今や複数の部屋にエアコンがついている家は珍しくなくなりました。一方で、夏の一番暑い時期に、家のすべてのエアコンをフルパワーで運転した場合、その使用電力が契約電力量を超えてしまうご家庭は珍しくありません。エアコンのスイッチをオンにすることで、使用電力量が契約電力量を超えてしまい、家全体のブレーカーが落ちる経験をした方も多いのではないかと思います。
ここで、ある家のすべてのエアコンが、スマホによって遠隔コントロールが可能であったとします。もし、夏の暑い時期、悪意の人間がスマホの情報セキュリティ上の欠陥を突いて、遠隔で家にある全てのエアコンをフルパワーでオンにしたら・・・。ブレーカーが落ち、家全体の電源が途絶えてしまうかもしれないのです。そして世の中には、電源断や、それによる通信途絶によって機能しなくなる防犯装置やセキュリティ機器は少なくありません。
ホームセキュリティを選ぶ際の視点
世の中にあるセキュリティ機器や、それらからの情報をセキュリティ会社に送る通信機器は、家庭用の電源で動いていることが多いです。そのため、セキュリティ機器が付いている家やオフィスなどに侵入しようとする泥棒は、なんとかして電源を供給する電力線を切り、セキュリティ機器の電源を落とそうとします。もし、電力線の切断という物理的な手間をかけずに、セキュリティ機器や通信機器の電源を落とすことができるとしたら・・・、私たちが考えなければならない、新たな防犯上のリスクです。電源断や、ネットなどの通信回線の途絶というリスクにどれだけ真剣に取り組み、対応しているか、ホームセキュリティなどのセキュリティシステムを選ぶ際の重要な視点かと思います。
スマート家電の普及が生む、セキュリティ上の新しい課題
また、前回触れたボットを組み合わせて使うと、社会に数多くあるエアコンにフルパワー運転を行わせることも理論上可能となります。電力供給が逼迫(ひっぱく)している状況でこれをやられたら、大規模なブラックアウト(大規模停電)が起こらないとも限りません。社会インフラを狙った立派なテロと言えます。「便利さと危なさは表裏一体」、情報セキュリティ分野で良く言われる言葉ですが、スマート家電についてもこれが言えることを、私たちは忘れてはいけません。
スマート家電の出現は、前回触れたその機器自体の情報セキュリティ対策に限らず、遠隔コントローラーであるスマホの情報セキュリティ対策、情報セキュリティに対する人々の意識、そして社会のセキュリティなど、セキュリティに関する新しい多くの課題を私たちに突きつけています。
(参考)
・安心豆知識「ネット家電のセキュリティ対策」
・データから読む「スマートフォンのウイルス対策もお忘れなく」
・セコムならセキュリティ用の通信回線にも安心をプラス(「停電」対応の説明も有り)
セコムIS研究所
セキュリティコンサルティンググループ
甘利康文
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