ホーム > ホームセキュリティ > 月水金フラッシュニュース > 月水金フラッシュニュース・バックナンバー > 平均のマジック たくさんの平均と時間による平均の違い
昨年1年間で、日本の住宅は、800世帯に1件の割合で泥棒に入られています。ここから「1世帯では800年に1回しか入られないのではないか」と思われる人もいらっしゃるかと思います。確かに1年間で800世帯に1件の割合で泥棒に入られる状況は、機械的に1世帯あたりに換算すると、1年間に泥棒に入られる割合は1/800、すなわち1世帯では800年の間に1回しか泥棒に入られないということになります。
しかし、1年で800世帯に1件というのと、1世帯で800年に1回というのでは、まったく意味が違うので注意が必要です。単純な換算はできないということです。
個々の平均と時間的な平均
12人いるクラスで、毎月1回合計12回のテストをしたとします。この場合、ある回のテストの12人のクラス平均点と、ある一人だけの1回目から12回目までのテストの平均点は異なるのが普通です。
一方、12個のサイコロを同時に1回振った場合の各サイコロの目の平均と、1個のサイコロを12回振った場合の平均を比較する実験を行う場合、正確に作られたサイコロを使って、何回も実験を行えば、実験回数が増える従ってその平均値は等しくなることでしょう。これは、12個のサイコロの性質が同じで、かつ各サイコロについて、時間経過に伴う性質の変化がないということが仮定できるからです。
ある特定の時点の、個々の対象の平均を「集合平均」(「アンサンブル平均」とも言います)、ある特定の対象について時間を追った平均を「時間平均」と言います。すなわち、集合平均とは、多くの対象について時間を特定して観測した場合の平均、時間平均とは、ある対象について、ある期間、観測を行った場合の平均のことであると言えます。同じ「平均」であっても、両者は意味合いが異なります。
一般に、個体によらず、時間によらず、均質な特性を持つ個体が集まっている場合には、集合平均と時間平均は同じになります。(これを学術的には「エルゴード性がある」と言います)物事の性質は、物理学の分野では均質である場合も多いのですが、社会的な分野の場合、均質とは言えない場合も少なくありません。
平均値を見て油断していると泣きを見る場合も
先の泥棒に入られる割合ですが、昨年1年間に、全国にある、別々の対象で発生した泥棒被害から算出したものです。すなわち、この割合は集合平均となります。これと、ある対象を何年にも渡って観測した値である時間平均とを、単純に比べることには無理があります。個人宅は、一世帯ごとに異なり、またある一世帯を考える場合でも、時間によって状況が変化するのが普通であるため、個体的にも時間的にも均質であるとは言えないからです。
すなわち、1年間で800世帯に1件の割合で泥棒に入られるからと言って、ある1世帯を考えた場合、800年間に1回の割合で泥棒に入られると理解できる訳ではないということです。もしかすると、ある特定の家では頻繁に泥棒に入られ、別の家ではほとんど入られないという事態が起こっているのかもしれません。
「1年間で800世帯に1件の割合」を、「800年間に1回の割合」と勘違いして、防犯対策を怠っていると、あなたの家が「頻繁に入られる家」になってしまう可能性も否定できません。警察などから発表される犯罪のデータを見る場合には注意していただければと思います。
(参考)
・データから読む「2011年の住宅侵入盗の割合は、800世帯に1件」(2012/2/22)
セコムIS研究所
セキュリティコンサルティンググループ
甘利康文
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