開催レポート
第18回:「TADAIMA! Fireside Chat 『20年代のサービス展望』」

2020年6月17日、コロナ禍を受け2月27日に延期となったFireside Chat 『20年代のサービス展望』を、タダイマ!として無料オンライン配信にて開催しました。
YouTube LIVEで、“Fireside Chat=暖炉端の会話”として登壇者らのカジュアルな座談をお届けしながら、これをセコムのオープンイノベーションチームが視聴者の声とともにバーチャルホワイトボードへ可視化していく、という他に類を見ない初の試みです。
単純なWebセミナーではなく、バーチャルホワイトボードを使いワークショップ形式も取り入れたことで、多くのご関心をいただきました。

2000年代に拡がったネットとモバイル化の波は、2010年代に「パーソナライズ化」、「オープン化」、「ソーシャル化」、「スマート化」という大きな変化を生みました。
モノからコト、すなわち物質的価値から体験的価値への変化が強まったのも、この時代の特徴。これから始まる2020年代、社会が大きく変わるその先のキーワードは何か?これからのサービス創造・展開で解消すべき課題、どうなって欲しいかを可視化。新たな課題ではじまった新しい10年期を迎えるにあたり、ますます加速するであろう「サービス」の潮流について、セコムオープンラボにゆかりの深い各サービス分野のキーパーソンが登壇してカジュアルに座談・展望する場として、盛会に開催することができました。

登壇者

  • Slack Japan株式会社 エグゼクティブパートナー
    関 孝則氏

    80年代からエンタープライズのコラボレーション分野を追いかける。現在は、Slackにてエグゼクティブ・プログラム担当。
    東京理科大学ビジネススクールで教員(MOT教授)をし、デジタルやサービスのビジネス関連の講義を担当。クラウド屋としては、セールスフォース・ドットコムでプリセールスチームを担当(常務執行役員)。古くは日本アイ・ビー・エムで、グループウェアや、クラウドの前身とも言えるグリッド・コンピューティングの新規事業をプリセールス・エンジニアとして担当(技術理事)。米国IBMで開発および技術戦略スタッフなども経験。
    Twitter: @t_seki

  • 株式会社セブン銀行 専務執行役員
    松橋 正明氏

    サービス/システムをデザインするIT&ビジネスアーキテクト。新たなビジネスモデル構築とIT技術を駆使したデジタルトランスフォーメーションで、コンビニATM事業を確立。
    現在はセブン・ラボを率い、スタートアップ企業とのオープンイノベーションやAI・データ活用の全社推進を行う。

  • カディンチェ株式会社 代表取締役社長CEO
    青木 崇行氏

    2003年に慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了後、ソニー株式会社入社。CorporateR&D A3研究所にて画像信号処理アルゴリズムの研究開発に従事。2006年に退職後、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科博士課程に進学し、2008年にカディンチェ株式会社を共同設立、同社代表取締役。翌年、同大学より博士(政策・メディア)取得。
    2018年に松竹株式会社と株式会社侍とともに合弁会社であるミエクル株式会社を設立、同社取締役副社長に。またネパールでの農村開発に取り組む特定非営利活動法人パックス・アースを2008年に設立し、現在にいたるまで理事長として活動中。専門分野はバーチャルリアリティ、センサーネットワーク、画像信号処理、国際協力活動。

  • セコム株式会社 オープンイノベーション推進担当 リーダー / 東京理科大学 フェロー
    沙魚川 久史

    1976年生まれ。セコムでは、IS研究所・開発センター・セコム科学技術振興財団 事業部長を経て、現在はオープンイノベーションチームを率い、新価値提案から協働商品開発まで担う。イノベーション推進に向け「セコムオープンラボ」を主宰、挑戦的ブランド「SECOM DESIGN FACTORY」を立ち上げ。本社企画部担当課長を兼任。
    社外では、東京理科大学客員准教授を経てフェロー、科学技術振興機構専門委員などを兼任。ものこと双発学会を共同創設。専門領域はサービスサイエンス・技術経営・知財マネジメントで、大学や国立研究開発法人、産学官コンソーシアムなどでも活動しながら、公私にわたりサービス創造の視座より共創協働を推進。

モデレーター

  • ビジネスタレント協会 事務局長 / カウンティア株式会社 COO
    田原 彩香氏

    ビジネス特化型のタレントである「ビジネスタレント」として、ピッチコンテストやアクセラレーターなどのイベントの司会進行を担当。
    「ビジネスタレント」としての活動をしながら、カウンティア株式会社の最高執行責任者を務める。投資家コミュニティメディアであるBAND of VENTURESを運営し、インタビューやライブ配信企画を行う。
    2つの仕事で相乗効果を生む働き方、「パラレルキャリア・クロスワーク」を自ら実践中。

配信方法

登壇者それぞれがリモートからオンライン形式で対談し、これをYouTube Liveで生配信しながら、その裏側でセコムのオープンイノベーションチームが議論を可視化。
登壇者らの対話とYouTube Live視聴者からのコメントをWeb上のバーチャルホワイトボードに付箋や手書きで整理して、配信後半には、このバーチャルホワイトボードを配信画面に映しながら登壇者らが論点を振り返りつつ議論を深めました。

1.イントロダクション

はじめに、イントロダクションとして、セコムのオープンイノベーションやセコムオープンラボ、またそこから始まる新価値創造による事業企画について沙魚川よりお話しました。ここではその中でも今回のセコムオープンラボについてのエッセンスをご紹介します。

沙魚川今回のセコムオープンラボは、2月にリアル開催で20年代のサービスについて話し合う予定で準備も進めていた中で、コロナ禍により延期となったものを、タダイマ!としてオンライン生配信にて実施したもの。

延期の中でテーマについても再検討したが、コロナ禍を経て「新しい日常」となっても、登壇者勢の視座はおもしろく、

  • Slack関さん:コミュニケーションツールとして必要性が高まっている
  • セブン銀行松橋さん:現金を使う機会が少なくなり、議論がある
  • カディンチェ青木さん:AR/VRにはリモートで新しい体験という注目が高まっている
  • 田原さん:イベントやコンテンツも、スタジオからリモートにシフトしている
  • セコム:人的サービスの動向

ということから、やはりこのメンバーで当初通りのテーマで座談をしようと開催に至った。Webセミナーだけでは面白くないので、セコムのオープンイノベーションチームでのワークショップも取り入れ、今回の開催形式とした。

2.話題提供

つぎに、登壇者の方々より、多様な視座からポジショントークをしていただきました。

Slack Japan 関さん ―― クラウド・米国スタートアップ視座

関さんIBMでノーツなどの開発に携わり、セールスフォースでクラウドの夜明けをみた。その後東京理科大学でMoT教授を経て現在はSlackのエグゼクティブパートナーを担当。
サービスは、人×モノ → 人×モノ×IT → IT と、クラウド化(SaaS)することで質とスケールを飛躍的に高めてきた。2023年にはアプリ市場の約半分がSaaSになる見込みとなっている。

スタートアップ資金調達でのSaaSの割合は、日本で20%、米国は40%である。
業種を超えて同じ業務を担う横串のHorizontal SaaSの次に、産業ごとに特定のビジネスがそのままサービス化される、異なる機能レイヤーの縦串となるVertical SaaSが今後急成長していく。ただ巨大なSaaSベンダーが出来て総取りするかというと、そうではない。
一社が全ての機能を担うのではなく、今はお互いの強みを組み合わせて連携する時代。

セブン銀行 松橋さん ―― キャッシュ、Fintech、オープンイノベーション視座

松橋さん新規事業と既存事業を担当しているが、同じ人格では無理なので自分自身をスイッチしながら対応している。
銀行は、銀行でお金をおろす→コンビニでお金をおろすといった産業改革が起こったが、これで終わりではなく、あらゆる産業は構成され続ける。自ら変わり続けることが大事。

セブン銀行はこれまで、スマホATM、新アプリeKYC等、一見真逆に思われるものを異質な形で出し続けていて、銀行業で培ったセキュリティを子会社で事業化したりもしている。
新しく変わっていくものを見込んで、サービスを創っていく。変化をキャッチできる人材・カルチャーの変革には終わりがなく、この2つを両輪として改革を進める。

カディンチェ 青木さん ―― VR/AR、国内スタートアップ視座

青木さんSONYで画像処理研究を担当していた。カディンチェはその研究所の同期と2人で起業した研究開発ベンチャー。今は20名規模。ソフトウェア開発が主な仕事で、VR、MR、ARがメイン。
最近の事例では、仮想空間を作ってそこでバーチャルアイドルコンサートを行ったり、お化け屋敷のVR化や、VRで星空観賞などのサービスも提供した。
また、セコムとは「VR研修プログラムシステム」を一緒に作り、パート1では、警備員の研修を360°VR化し、機会の限られる研修をどこでも可能にした。パート2では、ゲーミフィケーション要素を追加して、研修のモチベーションをUPさせた。

ビジネスタレント協会 / カウンティア 田原さん ―― モデレーター

田原さんパラレルキャリア・クロスワークという、2つの仕事で相乗効果を生む働き方を実践している。一つはビジネスタレントとしてのピッチイベントの司会など、もう一つはスタートアップ専門の財務戦略(資金調達)の仕事を主に行っている。
この3カ月間は、リモートワークの時勢で仕事が減るかと思ったらむしろ増えて、自宅はオンライン配信などの対応に特化しスタジオ化した。

3.Fireside Chat 《20年代のサービス展望》

続けて、これから始まる2020年代、社会が大きく変わるその先のキーワードは何か?これからのサービス創造・展開で解消すべき課題、どうなって欲しいかについて登壇者で議論。新たな課題ではじまった新しい10年期を迎えるにあたり、ますます加速するであろう「サービス」の潮流について、セコムオープンラボにゆかりの深い、各サービス分野のキーパーソンが登壇してカジュアルに座談・展望しました。

―― Fireside Chat 《20年代のサービス展望》について

沙魚川今回は、オンラインのFireside Chat(暖炉端の会話)ということで、聴講者に向けて含蓄のある話をしようというものではなく、登壇者自身がいつものオフ会の場のようにお互い聞きたいことを聞くなかで、聴講者に気づきを感じて貰う場をイメージしています。
セコムオープンラボは、ニーズ、兆しを捉えるきっかけの場。そこから仮説を立て、検証し、その検証の中で、価値を確認して事業化に臨んでいく。重要なのは、新しい異質な価値を発見した時に、その異質なものを異質なままで商品化していくのはどうしたらいいかということ、そういったことも今回の議論の題材の一つになりますね。

―― 登壇者の近況について

沙魚川関さんは最近Slackに移られましたが、どうですか?

関さんSlackは急速に盛り上がっているが、80年代から“コラボレーション”を追いかけてきて日本のコラボの限界を感じるところもあるんですよね。
米国巨大企業を見るとコラボレーションを変えなかったらイノベーションは起こらない、新しい仕事のやり方が出来ない、とすごく真剣に考えている。日本の大企業は自分に制約があって、それを突破するのはコラボレーションと思っている。気づき始めた人は、この加速感にも気づき始めた。

松橋さんユニット経営とかテーマに応じて社内の有志が集まるとか、あるテーマでみんなで並行して話を進めていくのにSlackが欠かせないですね。データサイエンスのチームだと、会議中にpythonで分析してグラフを出したり、このスピード感は以前では考えられない。

関さんオープンイノベーションをするにも、メールで何度もやり取りをした後ようやくミーティング、そこからまた次回…と、外との距離が遠いですよね。海外でデジタルが進んでいるのは広告業界で、顧客とのやり取りには必ずSlackを使用している。Slackといわないまでも、外の人とスピード感を持った繋がりを得るにはホットラインが必要。

沙魚川日本の大企業では、インフォーマルなネットコミュニケーションはやりづらいとされていましたけど、コロナ禍で変化はありましたか?

関さん4月頃から、日本のエグゼクティブとのやり取りも、「初対面でZOOMはちょっと…」から「ZOOMだったらいいよ」に変わってきた。名刺を交換せずに話を始められる世界に、ようやく日本も踏み込んだと感じた。

沙魚川Webでのコミュニケーションが普及し、リアルで会う必要ないね、という価値観も広がってきている。ただ、会議など、“目的のあるコミュニケーション”はそれでも良いが、“目的外のコミュニケーション”、何気なく隣の人と話しているときに得られるセレンディピティはどうなるのか、課題ですよね。

関さんSlackでは、テーマを決めてそのテーマについて話す場所、雑談していい場所など雑談用のスペースもたくさん作られていますね。

田原さんSlackはスタートアップでもかなり使われていますよね。

青木さん3月下旬からフルリモートの対応をしていますが、やはり雑談・ちょっとした話が出来ないと感じる。テキストでの文脈ばかりとなりお互いの存在感がなくなるので、3Dメタバース空間で、メンバーと会うということを始めました。アバターとして、皆がとりあえずずっとログインしておいて、必要な時に話しかけるという、リアルとリモートの中間のような位置づけで。

沙魚川僕も毎回ただのテレカンファレンスではつまらないのでバーチャルYouTuberのようにキャラクターを作って会議参加してみたりしました。目的に囚われがちなテレカンファレンスの中でも“楽しさ”があるというのは大事。

青木さんそういったアバターからイノベーションが生まれたりすることもあるかも。

―― 既存事業と新規事業の両立について

沙魚川松橋さんは、新規事業と既存事業どちらも担当されてますが、両方を一緒にやると忖度しあったりということはないですか?

松橋さん忖度はないが、新しい事をやっていると現業に影響が出るのは気になるし、現業だけをやっていても新しい事が出来ないのは気になる。視点を変えて一つ一つこなしていき、お互いに共通理解出来る点というかストーリーを見つけて、両者に分かるように説明すると共感を得やすい。

沙魚川尖った価値も商品化の過程で「その会社らしく」丸くなってしまうことがありますよね。異質なものを異質なままで世の中に送り出すのは難しい。
またユーザー側からも「そのブランドっぽいもの」を期待されることがある。価値検証をしている段階で、その価値をお客様から企業イメージで決めつけられてしまうことも。

“ブランドの強さ“と”挑戦”を両立するために、僕たちは、従来のセコムブランドの連想の範囲に縛られない挑戦的ブランド として「SECOM DESIGN FACTORY」をローンチしました。セコムのブランド連想外のことでも、会社の中やお客様からの理解を得やすくなる。

関さんいろいろなブランドを使い分けるというのも大企業の戦略としてキーワードになる。

松橋さんセブン銀行では、銀行免許の範囲でしかできないことがある。スピード感をもってリリースするとなると通常は子会社を作る対応。子会社としてファミリーの色を出しながら、独自性も出していく形ですね。

―― 組織論とイノベーションについて

沙魚川セブン銀行の“終わりのない変革を続けること”というビジョンについて、組織が小さいときはアントレプレナーのそばにメンバーがいるから考え方が直接伝播するが、大規模になってくると一人一人の判断基準として、理念が大事になってくる。ただ理念を大事にすること(社内の価値観・判断基準の統一)と、“終わりのない変革を続けること”とはうまくやらないと両立しないですよね。

松橋さん経営陣が変わることですよね。経営陣が自ら変わり続けていればおのずと会社も変わっていく。言うだけでなく、トップが実際に行動することが重要ですよね。

沙魚川伝統があるほど、考え方を変えるのは難しいけれど、価値観や刺激を外から取り入れて原動力にすることも、上手くいきやすいのかもしれないですね。

関さんトップダウンで集められた事業は共感を得にくいが、俺も入れろーって集まってきたメンバーでの事業は推進力が強い。

沙魚川イノベーションは属人的なもので、自分で熱量がないと人を巻き込めない。ただし熱量さえあればいいわけでもない。チーム編成として、人口統計上の多様性よりもスキルタスク的な多様性が重要ということもありますね。

青木さん技術の変化も社会の変化も早く、とりあえずこの開発をやっていればいい、という時代は終わった。新しい変化に対応するときに、同じスペシャリストがたくさんいるより幅広いメンバーがいる方が良い。

松橋さん意見の同じメンバーを集めても、同じ路線にしか進まない。意見の合わないメンバーを集めたり、メンバーを国際化したりするのは必要。

田原さん異なる意見がぶつかり合うことでイノベーションが生まれるんですね。
今後は、コロナ禍を経てどのような顧客ニーズが発展していくんでしょうか。

青木さん“VRの世界”は大体の人が映画のような世界観を想像しますが、リモートワークの世界というのは、突き詰めていくと電脳世界で完結した活動のイメージがある。最近は、それって幸せなんだっけ?と思う。モノより思い出といった話が一時期あったが、オンラインが普及していく中で、モノの価値が見直されてリアルの価値が上がっていくのではという気がしている。

関さんリアルに何を残すか、が今まさに突き付けられている感じ。

沙魚川コミュニケーションのデジタル化により個人レベルの感性も急速に変化していると感じます。2019年秋に行ったセコムオープンラボCEATEC2019「2030年 共感マッピング」では、
Z世代 :コミュニケーションに(時間やお金や負担など)コストをかけたくない
大人世代:コミュニケーションの中の(視覚や言動など)コンプレックスを解消したい
という価値観に二分化した。

青木さんテキストや映像主体のコミュニケーションは、それだけで完結するようになってしまうと、それって楽しい?と思ってしまう。人間だから、土を触ったり水を触ったりもしたい。今回コロナ禍でエンタメがなくなったが、エンタメの重要性も同時に感じている。単純にすべてをオンラインに持ってくればよいというものでもなく、現場の“空気感“をオンライン上に持ってくるのがVR会社の使命と感じている。

CEATEC2019 「2030年 共感マッピング」の様子

―― サービスの価値は今後どうなるか

田原さんサービスの価値というのは、今後どうなっていくのでしょうか。

沙魚川ニーズが多様化・パーソナライズ化してどんどん変化する中で、顧客価値だけを追求すればいいという時代でもなくなってきた。サービスを提供する側が、サービスを提供することにどういった“意味”があるかを打ち出していかないといけない。顧客価値と、それに伴う運用の価値も出していく必要があるのではないかと考えている。急速に変化していく顧客価値のみを捉えた追及は不毛なのかも。

これが一例かは分からないが、セコムの「バーチャル警備システム」では、ビルのエントランスなど人間の警備員に頼っていた受付・案内などの立哨警備について、AIキャラクターを使用し自律化。コミュニケーションのデジタル化と人手不足の解消を行った。コロナ禍では、人と人が対面することがリスクになり得るという“新しい日常”の文脈も出てきたなかで、マスク未装着者や来訪者体温に応じた対応の価値検証を行うに至った。人の警備員での対面対応より、お客様・警備員どちらのリスクも減らせる。
また、「バーチャル警備システム」は、AIで対応しきれない部分を遠隔でセンターから対応するが、遠隔対応者の居場所はセンター(オフィス)に限らず、自宅などでも可能だし、身体が不自由でも対応できるかもしれない。働く場所や対応可能者が増えれば、コミュニケーションレベルで相対するお客様への価値だけでなく、運用することによる社会的な価値も拡がるのではないかと感じている。

関さん顧客価値には、「今顧客が求める価値」、「(今は気づいていないけど)明日求める顧客価値」、「こんな社会になったらいいねというビジョンを提示した中での顧客の価値」、の3つがある。

田原さん若い世代と大人世代でも求めているものが違いますし、若い世代に寄り添う必要性もありそうですね。

沙魚川若い人の価値観が、5年後、10年後の社会の価値観になっていく。それを理解せずに新しいサービスを創るのはもはや難しいですよね。
モノからコトへ、ではなく、モノとコトはデュアルエンジンで協働関係。実体のあるものは大切で、モノとそれに見合った最適なサービスがある。デバイス側のイノベーションをサービス側から引っ張っていくことも必要。

松橋さん今の社会は、課題が噴石して表面化している。これは色々な企業が積極的に解きに行かないといけない。そういった時、今までしていたことだけではなく“挑戦”が必要になってくる。新しい事をやろうとすると日頃絡む事の範囲を出た所に手を付けないといけなくなるが、どうやって取り組むのがいいのか。

沙魚川自分自身のアップデートが必要になってくるんでしょうね。

関さん日々、会社人として接していると変化を認識できずにいるものが、個人として接すると変化に気づけるようになる。感じ方のバランスを変えるだけで変化への感度が上がる。コロナはスイッチを切り替えるきっかけになるのかも。

沙魚川自分でも変われるし、周りの変化によっても変われるんですね。関さんもSlackに行かれて、大変おしゃれになりましたよね。

関さんSlackは、コラボレーションハブとして、コミュニケーション、外とのつながり、IoT/外部サービスなどをつなぐもの。Slackがあれば仕事が全部できるような、Slackがデジタルオフィスのような状態にしていきたい。Slackを通すと他のツールを自然に連携して使える、というのは一つのアプローチですね。

青木さん世界の労働人口の80%はデスクで仕事をしていない。つまりPCの画面だけのツールというのは20%にしか届かないので、そういった市場向けのツールがあってもいいのでは。

沙魚川テレカンファレンスも、今日はZOOM、明日は別のツール、とさまざま。ユーザーからすると、コミュニケーション相手によってさまざまなツールを使い分けるのは大変なので、入り口はアグリゲーションしてほしいのはありますよね。ユーザー視点。

関さんZOOMは今回急成長した。他サービスは(自前の連携へのしがらみを重視し)UXに投資できなかったが、ZOOMはこれを反面教師としてUXに投資した。ZOOMが急成長したことが、UX・CXがサービスにとっていかに重要かを物語っている。

4.Q&A抜粋

今回、YouTube LIVEでの配信中にコメント欄にいただいた、視聴者の方々からの質問に回答する時間も設けました。ここではいくつかの質問と登壇者のコメントを抜粋し、ご紹介します。

―― デジタルコミュニケーションに関して、日本は欧米より遅れているという文脈で語られることが多いが、日本だからこそ可能なデジタルコミュニケーションの可能性はあるか?

関さん絵文字がそう。Slackでも絵文字パックを出したりしている。海外でも絵文字は「emoji」と訳されているほど。テキストより感情表現が豊かになる。表現する機会が皆に与えられた。

青木さんSlackは、オリジナルの絵文字をアップロードできるのがいいですよね。社長の顔として自分の絵文字が登録されてみんな使っています。

―― 顧客満足のみならず、社会や人類の一員としても良いことをしているという満足感を感じられるサービスが求められるのでは?

沙魚川モノの世界では一昨年辺りにエシカル消費という言葉に注目が集まりましたよね。例えば、プラスチックストローではなく紙のストローを選ぶなど、倫理的に正しいことを選ぶ/発信することの満足感が背景にある。しかし、重要なのはそういう意識の高さやキレイなメッセージではなく、提供者として商品に込めた“意味”。商品を作る側として考えないといけない軸が増えているように思う。

イノベーションを創る人たちが、近視眼的な顧客満足だけを追うことがイノベーションだとは感じなくなってきているといえる。
2000年代:インターネットが普及し、eコマースが進んだ。
2010年代:スマートフォンを一人ひとりが持つようになり、手の中のコンピュータから消費者が直接取引をするC2Cに。
2020年代:2000→2010年代と人間に近づいてきている。客観的なものを超えた先の、感性・情緒に近いところに寄っていくのでは。

―― テレワークは、偶然会って話をするという機会が減るので、多様性に逆行するのでは。オンラインで偶然会って会話するということは解決手段になるのか?

沙魚川“目的外のコミュニケーション”から得られるインサイトをどう補うかについては、その必要性に気づいている人とそうでない人とで二極化が進むかもしれませんね。
セレンディピティの必要性に気づいている人は多様な価値観を得るために意識的に探しに行くし、必要性に気づいていない人は会議など“目的のあるコミュニケーション”のみとなってしまう。

関さん会議室をオープンにすると、すればするだけ、知らない人がコメントをくれるチャンスが増える。

青木さんリアルな会議とオンラインの会議の発言力は違っていて面白い。
リアルでは役職の高い人、声の大きい人の発言が強いが、オンラインではSNSやITに慣れている人の発言が強まるように思う。

5.今回のセコムオープンラボを経て得た気づき

最後に、今回のセコムオープンラボを経て、皆さまが得た気づきについて、一言ずついただいた内容と、議論をまとめたバーチャルホワイトボードをご紹介します。

関さん労働者の割合はデスクワークが20%という話について、今後考えていきたい。デスクワーク以外の80%のシェアを取っていくということではなく、つながりをどう持つかについて。新しい視点で自分たちのサービスを見直していく。広がった切り口が見えた。

松橋さん自分はオンラインのツールを使いこなせていると思っていたが、皆の話を聞いてまだまだだと感じた。Meet UPイベントなどの場で雰囲気/世界観をどう作り上げるか苦しんでいたが、ツールを使い続けることで自己進化/改革できそう。
社会課題を解決するサービスを出していくことが自分たちの存在意義だと再確認できた。新しいサービスをお楽しみに!

青木さん急に全てがリモート・オンラインになって、満員電車からの解放・スーツ着なくてよいなど楽になったこともあるが、それでもまだ完璧ではない。技術/サービスの進化が必要だと感じた。

田原さん今後に予定しているオンラインの女子会などでもコミュニケーションを色々試してみたい。

沙魚川今回初オンラインでセコムオープンラボらしいことを実験的にやってみた。登壇者の議論が盛り上がって時間がだいぶ押したが、視聴者からの質問もたくさん来ていたし、もう少しインタラクションを増やせばよかったかも。田原さんのパラレルキャリア・クロスワークな働き方も議論したい。

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