着衣着火は身近な事故

▼日常に潜む「着衣着火」のリアル
着衣着火とは、文字通り、着ている衣服に火が燃え移ってしまうことです。
消防庁によると令和6年中の火災による死者数は1228人で、うち着衣着火によるものは92人(7.5%)となっています。
家庭内での着衣着火事故は決して他人事ではありません。
特に、台所(キッチン)で発生するケースが多く報告されています。
・調理中、ガステーブルの奥にある調味料を取ろうとして袖に引火した
・鍋からはみ出したコンロの火が、服に引火した
・コンロ上部の棚から物を取ろうとして、エプロンや服の裾に引火した
・調理中に後ろを向いたとき、服に火が移った
このようなケースが報告されており、死亡事故や重度のやけどにつながる場合もあります。
キッチン以外でも着衣着火事故は発生しています。
たとえば仏壇の前です。ろうそくに火を灯し、その奥にあるお線香に手を伸ばした際、上着の袖などに燃え移る事故が報告されています。
▼なぜ着衣着火は命に関わるのか?
衣服は素材によって燃え方が異なるものです。
綿や麻、レーヨンなど、素材や生地の状態によっては、短時間で広範囲に燃え広がることもあります。
また、ポリエステルやナイロンなどの化学繊維は熱で溶ける性質があり、溶けた繊維が皮膚に付着するとやけが重症化する恐れがあります。
もし衣服に火が付いてしまったら、慌てて動き回ったり、走ったりするのは禁物。
空気を送り込むことで火の勢いが強くなってしまいます。
覚えておきたいのが「STOP・DROP・ROLL」です。
・STOP(止まる)...走らず、その場で動きを止める
・DROP(倒れる)...地面に倒れこみ、火が顔や頭へ燃え広がるのを防ぐ
・ROLL(転がる)...左右に転がって地面で火を押しつぶし、酸素を遮断する
火を消した後は、可能であれば流水などで十分に冷やします。近くに水がある場合は、安全を確保したうえで消火・冷却を行いましょう。
衣服を無理なく脱げる場合は脱ぎますが、化学繊維が溶けて皮膚に付着している状態なら無理にはがさず、速やかに医療機関を受診してください。
▼火を扱うときは服装にも注意を
着衣着火事故は、火を扱う際の工夫で防ぐことができます。
調理の際は次のような点を意識しましょう。
・袖や裾が広がった服、マフラーやストールの着用は避ける
・コンロ周辺にはなるべくものを置かず、調理中に無理に手を伸ばさない
・コンロの炎は鍋底からはみ出さないよう調節する
屋外でバーベキューや花火を楽しむ際も油断は禁物です。
風によって火の向きは変わります。
燃えやすい服装で火の近くに立ったり、浴衣姿でろうそくをまたいだりするのは危険です。
火元との距離を十分に保ち、必要に応じて防炎性能のあるエプロンやアームカバーなどを活用するのも有効でしょう。
家庭で火を使う場面は毎日のようにあります。
火元と衣服の距離を意識することが、着衣着火事故を防ぐ第一歩です。
* * * * * * * * *
<監修>
濱田宏彰
セコム株式会社IS研究所リスクインテリジェンスグループ 上級研究員
シニアリスクコンサルタント/防犯設備士/防災士/日本市民安全学会常任理事


侵入窃盗を中心にあらゆる犯罪情勢の調査研究を継続。各方面に対しセキュリティコンサルティングを実施。犯罪傾向・統計情報を基にリスクマネジメントの観点から、「安全・安心」な暮らしのためのセキュリティについて研究する日々。
地域の自主防災会では常任委員を務め、日々の防災活動にも注力。
また書籍『セコムが教える防犯プロのアドバイス』『タイプ別にみる働く女性の防犯対策 ライフスタイルWoman360°』などの執筆・監修に携わる。
- 関連するカテゴリーを見る
- 火災




