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未成年者を上回った高齢者の万引き

 先日、警察政策学会のフォーラムに参加してきました。今回のテーマは、高齢者犯罪でした。近年、高齢者による犯罪が増えています。強盗などの凶悪犯罪もあるようですが、特に窃盗犯が多く、そのほとんどが万引きとなっています。このような現状を踏まえて、その実態と対策について議論がなされました。今回は、その中から万引きについて書いてみたいと思います。

10年前と比べて増加が激しい高齢者万引き
 高齢者犯罪は、1998年あたりから増えだしたとのことです。ただし、ここ数年は高い位置で横ばいが続いているようです。凶悪犯罪もあるようですが、特に万引きが多くなっています。万引きというと、以前は未成年者の犯罪というイメージでしたが、対策が進んだためか、この年齢層の犯行は減少が続いています。一方で、高齢者の犯行が増加しており、昨年2012年には高齢者検挙人数が未成年のそれを上回ってしまいました。
 右の図は、2012年と2002年の万引き検挙人数の変化を示しています。年齢別に、単位人口当たりの検挙人数の差を示しました。一番上の未成年者の値はマイナスとなっており、この10年で大きく減少したことがわかります。一方で、高齢者については、特に70歳以上の人数増加が目立っています。

お金があるのに万引きしてしまう高齢者
 日本は高齢化が世界一進んでいる国でもあり、高齢者犯罪が増加するのは当然といえば当然です。しかし、その影響を差し引いたとしても、増加傾向は否定できない状況です。右の図でも人口の影響を取り除いていますが、それでも70歳以上の年齢層の棒グラフの長さは目立っています。今回のフォーラムでは、高齢者犯罪の増加の社会的背景についても議論がなされました。高齢者万引きの特徴として、近隣のスーパーでの食料品の万引きが多いとのことです。しかも、少額の商品が多いとのことです。所持金もあり、支払い能力があるにも拘らず、万引きをしてしまうのが、未成年者の万引きとは異なる点のようです。

社会からの孤立をさせないために
 万引きをしてしまう高齢者は、社会との接点が少ない場合が多いようです。友人・知人もなく、生き甲斐が見つけられずに犯罪に走ってしまうケースがあるとのことです。少年犯罪や成年犯罪に対する司法処罰の形だけでは、高齢者犯罪に対応できない状況になってきており、福祉の力が必要になってくるという議論がありました。
 高齢化社会が進んで高齢社会になり、さらに超高齢社会に突入したといわれる日本ですが、それに伴って高齢者犯罪はますます増えていくと考えられます。振り込め詐欺では被害者になるケースの多い高齢者ですが、一方で、犯罪者になってしまうケースもあります。どちらについても、社会からの孤立がキーになっているような気がします。知り合いの中で高齢の方がいらっしゃる方は、できるだけ連絡を取るようにしてみてください。

セコムIS研究所
リスクマネジメントグループ
濱田宏彰

人口10万人当たりの万引き検挙人数の変化(2012年と2002年との差を算出)(警察庁の統計から作成)

人口10万人当たりの万引き検挙人数の変化
(2012年と2002年との差を算出)
(警察庁の統計から作成)

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