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レジ袋削減の具体的方法
先日のコラムで、小売業界が、レジ袋削減の方向に舵を切っていることについて触れました。このレジ袋削減の具体的方法ですが、ある店では、レジ袋を断った人に対し、買い物ポイントや値引きといった形で、レジ袋配布のコストを還元する施策を展開したり、また別の店では、レジ袋の無料配布を止め、必要な人には数円程度の価格で購入してもらうというように、店舗によってその手法が異なっています。
これらの具体的施策は、前者が「レジ袋を受け取った人がゼロで、それを断った人がプラスを得る」というのに対し、後者は「レジ袋を断った人がゼロで、それを受け取った人がマイナスを被る」という形に整理できます。さて、どちらの施策が、よりレジ袋を断る人々を増やすことに貢献したでしょうか。皆さんは、仮にレジ袋を5円として、レジ袋を断ることで5円値引きされる方が良いでしょうか、それともレジ袋を受け取る(購入する)ことで5円払う方がいいでしょうか?
どっちのレジ袋削減施策が効果的か?
実は、どちらの施策がレジ袋削減により効果的かという問いに対しては、既に答えが出ています。レジ袋を断った人に値引きやポイントのような形でプラスを与えるよりも、レジ袋を受け取った人にそのコストを負担してもらうという形のマイナスを与えたほうが、圧倒的に「レジ袋を断る」という行為を行う人が増えるのです。
人は、たとえ同じ金額であったとしても、それを得るときに感じる「お得感」と、それを失ったときに感じる「喪失感」では、喪失感の方がより大きく感じると言われています。実際、どのような地域でも、どの店で行っても、人々の行動は同じ傾向を示すというで、社会的な研究として多くの報告がなされています。皆さんも、レジ袋を断ることで5円分のポイントや値引きが得られる時よりも、レジ袋を5円で購入しなければならない時の方が、レジ袋を断るという選択肢を選ぶのではないでしょうか。人は、プラスを得るよりもマイナスを避ける行動を取りがちなのです。この「メリットよりもコストに敏感」という人の傾向は、行動経済学という学問体系の中で「プロスペクト理論」として説明されています。
泥棒もコストを嫌う
さて、ここで「泥棒の行動」について考えてみます。泥棒といえども人であることには変わりはないため、その行動は「コストに敏感」という傾向とは無関係ではいられません。前のコラムでも触れていますが、個人宅への泥棒の侵入手口の1位は「無施錠」。カギがかかっていない所から侵入するという手口です。この「無施錠」ですが、泥棒にとっては、扉や窓を破る手間という「コストがかからない」手口であると言えます。無施錠であれば、泥棒は「扉や窓を破る手間」というコストをかけずに、簡単に侵入することが可能です。
多くの防犯対策は、それなりの時間と手間をかけた場合、破ることは不可能ではありません。しかし、防犯対策をすることによって「侵入にそれなりの時間と手間をかけさせること」は、泥棒が感じる負担感、すなわちコストを増やすことにつながります。何もしなくても入れる家と、防犯対策を手間暇かけて破らなければ入れない家が並んである場合、侵入手口に長けたプロの泥棒といえども、どちらを選ぶかは自明なのです。ちょっとした用心や防犯対策が効果を発揮する理由の一つです。
(参考)
・安心豆知識「レジ袋考 目に見える形で現れたセキュリティの価値」
セコムIS研究所
リスクマネジメントグループ
甘利康文
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